市販の鼻づまりスプレーは使い続けると良くないの!?
花粉の季節や就寝前などに起こりがちな鼻づまり。市販されているスプレータイプの薬の中には、鼻の通りをかなり改善してくれるものがある。しかし、水島耳鼻咽喉科の水島先生は、「お勧めできないお薬」と断言する。それはなぜか。また、鼻づまりを改善したい場合はどうすればいいのか。詳しい話を伺った。
監修医師:
水島 豪太(水島耳鼻咽喉科 副院長)
日本大学医学部卒業、東京医科歯科大学耳鼻咽喉科入局。同大学付属病院や一般医院勤務後、カリフォルニア大学サンディエゴ校へ留学。2016年、AGAヘアクリニック開院とともに、水島耳鼻咽喉科の副院長に就任。最新の知見・技術と地域特性を組み合わせた医療に努めている。耳鼻咽喉科専門医。日本耳鼻咽喉科学会、日本めまい平衡医学会、日本遠隔医療学会、日本再生医療学会、国際毛髪抗加齢医学学会などの各会員。
常用すると、体に耐性ができて逆効果となる場合も
編集部
市販の鼻づまり用スプレーを使う際、注意点などはありますか?
水島先生
使い続けているうちに、スプレーを吹きつけてもすぐ鼻が詰まったり、やがてお薬が効かなったりすることでしょうか。このことを「耐性」といい、とくに市販されているスプレータイプの点鼻薬では、その傾向が強いようです。
編集部
えっ、薬が効かなくなるのですか?
水島先生
はい。「耐性」をわかりやすく言い換えるなら「慣れ」ですね。体の慣れにより、薬が効かなくなってくるのです。また、薬の成分が原因で鼻炎を起こすこともあります。ちなみに、鼻のスプレータイプのお薬のことを、我々は「点鼻薬」と呼んでいます。
編集部
鼻づまりを解消したいときはどうすれば?
水島先生
使用回数をなるべく控え、つらいときだけに限定してください。なお、耳鼻科の医院で処方するステロイド点鼻薬なら、この限りではありません。むしろ、長期間かつ定期的に使っていただくことが前提になっています。
編集部
どうしても市販品を使いたいときは?
水島先生
例えば1日1回をめどに、寝る前の苦しいときに限定して使う程度なら構いません。ただし1日1回でも、1年を通じて常用するようになると、耐性のリスクが避けられません。花粉のシーズンに限定するなど、体が“慣れない”ようにしてください。
見た目は同じでも、目的や中身が違う2種類の点鼻薬
編集部
先ほど、医院で処方する点鼻薬の話が出ていましたが?
水島先生
ステロイド点鼻薬のことですね。この点鼻薬の目的は、鼻づまりの根本原因を治すことです。抗炎症だけでなく抗アレルギー作用もありますので、決められた回数や用法を守って“使い続けて”ください。医師が使用を勧めている期間は鼻づまりが気にならないときも含めてです。
編集部
市販薬では「根本原因の治療」にならないと?
水島先生
はい。ほとんどの市販の点鼻薬は、血管収縮薬を含んでいます。血管の収縮によって鼻の粘膜の腫れが引き、鼻を通す仕組みです。しかし、あくまでその時限りの対症療法であって、本当の意味の治療とはいえません。
編集部
両方の点鼻薬を、外見から区別することはできるのですか?
水島先生
成分表などを見ればわかるかもしれませんが、一般の方が判断するのは危険です。市販されている薬は、すべて血管収縮薬タイプだと考えておいたほうがいいでしょう。耳鼻科の医師からすると、市販薬自体、あまりお勧めできません。
編集部
すでに市販薬への耐性が付いている場合、元に戻りますか?
水島先生
戻ります。そのためには、ステロイド点鼻薬に変えたり、飲み薬に変更するようにしましょう。何より、血管収縮薬タイプの点鼻薬から遠ざかることが大切です。
たかが鼻づまりと考えず、何が起きているのかを知る
編集部
そもそも鼻づまりはどうして起こるのでしょう?
水島先生
先天的な鼻の形や、蓄膿(ちくのう)症のような固有の病気を除くと、アレルギー性の鼻炎であることがほとんどです。ステロイド点鼻薬は、アレルギー性鼻炎の治療に有効とされています。
編集部
医院を受診せず、自分で改善する方法はありますか?
水島先生
複数の要因が重なっていたり、ぜんそくを併発していたりすると、ご自身での改善は難しいでしょう。かえって、症状を悪化させることもあります。
編集部
やはり、耳鼻科の受診が必要だと?
水島先生
受診というより、「相談」くらいの軽い気持ちで、遠慮なくご来院ください。治療へ進むかどうかは、そのときに決めればいいことです。まずは、今起きている問題を把握しましょう。
編集部まとめ
市販の点鼻薬を自分だけの判断では使わない。その前に、ドクターの指示を受けること。それが今回の結論です。依存症になってから受診するくらいなら、事前に医師へ相談してみてはいかがですか。それに、根本が解決できれば、薬の使用すら不要になるかもしれないのです。
医院情報
所在地 | 〒272-0805 千葉県市川市大野町3-185 |
アクセス | 市川大野駅徒歩2分 |
診療科目 | 耳鼻咽喉科・アレルギー科・小児耳鼻科 |