膀胱炎にはクランベリーが効く!? 尿路感染症予防効果の報告【医師による海外医学論文解説】
オーストラリアのフリンダース大学らの研究グループは、50件の研究のレビューから、クランベリー製品の摂取が尿路感染症の予防に役立つという結果が得られたと発表しました。この研究結果は、2023年4月17日に「Cochrane Library」に掲載されました。こちらの研究報告について村上医師に伺いました。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
研究グループが発表した内容とは?
オーストラリアのフリンダース大学らの研究グループが発表した研究内容について教えてください。
村上先生
今回紹介する研究は、オーストラリアのフリンダース大学らのグループが実施したものです。クランベリー製品の摂取が尿路感染症の予防に役立つかどうかを研究しました。尿路感染症予防に対するクランベリーの有効性に関するレビューは、1998年に最初に発表されて以後、2003年、2004年、2008年、2012年に内容が改訂され、今回が5回目の改訂になり、計50件の研究のレビューが実施されました。50件の研究のうち45件が、6つの参加者グループを対象に、クランベリー製品をプラセボ(偽薬)、または特定の治療を行わない場合と比較していたとのことです。このうちの26件の研究を対象に、尿路感染症患者の解析を行いました。その結果、信頼性が中等度のエビデンスとして、クランベリー製品の摂取により尿路感染症のリスクが30%低下することが示されたということです。また、6つの参加者グループごとに解析すると、有症状の再発性尿路感染症を有する女性で26%、小児で54%、医学的介入により尿路感染症に感染しやすい人で53%もリスクが低下することが明らかになったと発表しています。また、信頼性が低いエビデンスとして、施設入居の高齢の男女、妊婦、膀胱を空にできない神経因性膀胱の成人ではクランベリー摂取による尿路感染症のリスク低下は認められなかったということです。研究グループは、「この研究は、世界各国で実施された研究のエビデンスが集められ、レビュープロセスも厳格だった。過去のレビュー結果と内容が異なっていたとしても、今回の結果に自信を持っている」と述べています。
尿路感染症とは?
今回の研究で取り上げられた尿路感染症について教えてください。
村上先生
尿路感染症は、細菌が尿道口を通じて膀胱内に進入することで起こります。膀胱の中で感染がとどまっているものは膀胱炎と呼ばれ、細菌が膀胱から腎臓まで進入すると腎盂腎炎(じんうじんえん)を起こします。赤ちゃんの尿路感染では発熱や機嫌が悪いといった全身症状だけの場合が多い傾向があります。また、幼児ではお腹や背中を痛がる、排尿時に痛がる、普段はお漏らしをしないのにパンツを濡らすといった症状が加わる場合があります。また、尿がいつもより臭ったり、尿に血液が混じったりするといったことが起きることもあります。学童以降の年長児ではトイレが近い、排尿時痛が強いといった排尿に伴う症状が中心になります。どの年齢においても高熱を伴う場合は膀胱炎だけでなく腎盂腎炎の可能性があるので注意が必要です。治療は抗生剤で行われ、尿が膀胱から尿管に逆流するなどの先天的な構造異常があり、尿路感染症を繰り返す場合は、治療後の感染を予防する目的で、抗生剤の予防投与を行うこともあります。
発表内容への受け止めは?
オーストラリアのフリンダース大学らの研究グループによる発表内容への受け止めについて教えてください。
村上先生
クランベリーの膀胱炎予防効果については以前より報告があり、今回の報告は、それらの50件の研究をまとめたものです。
臨床の現場でも、原因がはっきりせずに繰り返す膀胱炎の患者さんや、膀胱留置カテーテル(尿の管)を入れている患者さんの感染予防にクランベリージュースの摂取をおすすめすることもあります。ただし、クランベリーは摂取することで尿が酸性になり、一部の尿路結石の患者さんでは注意を要する場合もあります。クランベリーの摂取はあくまで膀胱炎の治療ではなく予防になりますが、繰り返す膀胱炎で悩んでいる方には、よい予防法にもなりえますので、ご興味がある方は一度かかりつけの医師に相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
オーストラリアのフリンダース大学らの研究グループが、50件の研究のレビューから、クランベリー製品の摂取が尿路感染症の予防に役立つという結果が得られたと報告したことが今回の研究発表で分かりました。手軽に摂取可能な果物による予防効果の研究は注目を集めそうです。
原著論文はこちら
https://pmc.carenet.com/?pmid=37068952