「膀胱炎(ぼうこうえん)」の症状・治療法・原因・予防法について解説!
主に尿路に細菌が感染して発症する膀胱炎(ぼうこうえん)。よく知られる疾患ですが、単純性・複雑性など、さまざまな種類があることはご存じでしょうか。膀胱炎の症状や種類にはさまざまあり、疑われる場合は早期の受診が必要です。
今回は、膀胱炎の種類と原因、症状や受診科目、年齢差・性差などを紹介します。
監修医師:
竹内 尚史(新松戸中央総合病院)
膀胱炎の種類と原因
膀胱炎とはどのような疾患ですか?
細菌感染の中でも、特に直腸の常在菌が会陰部を通り、尿道から膀胱へ侵入する「逆行性感染」によって起こることが多いです。そして、細菌感染による膀胱炎は、大きく「単純性膀胱炎」と「複雑性膀胱炎」に分かれます。
単純性膀胱炎
単純性膀胱炎とは、どのような膀胱炎ですか?
20〜40代女性が最も多く発症し、閉経後の女性も発症することがあります。尿意を我慢したり、月経、妊娠、性交渉、便秘などが原因です。残尿感、頻尿などの症状が現れます。
複雑性膀胱炎
複雑性膀胱炎とは、どのような膀胱炎ですか?
また、前立腺肥大症や膀胱結石などによって排尿が妨げられることも原因になります。尿には膀胱の洗浄作用がありますが、排尿が妨げられることで感染しやすくなるのです。複数の菌に感染していることも、まれにあります。
複雑性膀胱炎は、こういった基礎疾患を治療しない限り治らないことが多いです。
その他の膀胱炎
他にはどんな膀胱炎がありますか?
間質性膀胱炎は原因不明の膀胱炎です。膀胱の粘膜に尿が染みることで、間質に炎症が起きます。膀胱は200〜400mlの尿が溜まると尿意を感じますが、間質性膀胱炎では膀胱が膨らみません。
膀胱が100ml以下で一杯になり、下腹部にひどい膀胱痛がしてトイレに行く回数が増えます。また、潰瘍が発生することもあります。
嚢胞性膀胱炎は膀胱の粘膜に袋のようなものができる膀胱炎です。真菌性膀胱炎は、かび(真菌)に感染することで、炎症を起こす膀胱炎です。
膀胱炎の症状
膀胱炎にはどのような症状がありますか?
排尿痛
膀胱炎の排尿痛は、どのような症状ですか?
「絞られるような痛み」と表現する人が多いです。
頻尿
頻尿はどのような症状ですか?
また、尿意切迫感といい、我慢できないほどの尿意が突然現れることもあります。残尿感があることも多いです。
尿の濁り
尿の濁り(にごり)はどのような症状ですか?
膀胱炎の受診科目と検査
膀胱炎のような症状が現れたら、何科を受診すればいいでしょうか?
膀胱炎が疑われる場合は、どのような検査を行いますか?
出始めの尿はおりものなどが混入しやすいため、中間の尿をとります。そして菌の種類を調べるために、尿中の細菌を培養します。
また、膀胱炎かほかの病気なのかを判別しなければならないことも。レントゲンや腹部超音波、内視鏡検査などで、前立腺、下部尿管や膀胱の結石、膀胱粘膜などを見ます。
また、膀胱炎の治療をしても効果が出ない場合は間質性膀胱炎が疑われ、内視鏡検査で膀胱粘膜を見ることで診断されます。
膀胱炎の性差・年齢差
膀胱炎に年齢差や性差はありますか?
また、閉経後の女性も発症しやすい傾向があります。女性ホルモンの低下により膣内の常在菌が減少して、直腸内の細菌が侵入しやすくなることが原因です。
膀胱炎の治療方法
膀胱炎の治療をする場合、どのような治療方法がありますか?
抗菌薬は、単純性膀胱炎で5〜7日ほど、複雑性膀胱炎では7〜14日ほど服用します。薬の服用が終わったら尿検査をして、抗菌薬を継続・変更するかを判断します。
自分の判断で薬の使用を中止するのはやめましょう。細菌は抗菌薬が効きにくい「耐性菌」が増えているため、完全に治るまで医師の指示にしたがってください。
また、尿が膀胱に溜まっている時間が長かったり、尿の量が少なかったりすると、膀胱内の細菌が繁殖しやすくなります。治療中は特に、水分の摂取量を増やして排尿の回数を増やし、こまめに排尿してください。
排尿痛や残尿感など、膀胱炎の症状に対する市販薬も販売されていますが、完全に治すには医療機関を頼りましょう。
膀胱炎の予防方法
膀胱炎を予防するために大事なことを教えてください。
女性は排便後に前から後ろに拭いて、肛門付近の大腸菌を尿道に入れないようにしてください。また、性行為中は細菌が尿道に侵入しやすいので、性行為後はトイレで排尿しましょう。
菌を増やさないために、免疫力を下げないことも重要です。バランスの良い食事や規則正しい生活習慣を心がけてください。
編集部まとめ
膀胱炎とは、尿を溜める膀胱に炎症を起こす、尿路感染症の一種です。多くは細菌感染であり、単純性膀胱炎と複雑性膀胱炎に分かれます。
ほかにも、原因不明の間質性膀胱炎や、膀胱の粘膜に袋のようなものができる嚢胞性膀胱炎、かびに感染する真菌性膀胱炎があります。
膀胱炎の症状は主に、排尿痛、頻尿、尿の濁りの3つです。ほかにも、残尿感や下腹部痛などがあります。
泌尿器科で尿検査を行い、白血球数や細菌が調べられ、一定数以上が見つかれば膀胱炎と診断されます。特に性的活動期である20~40代女性が単純性膀胱炎を発症しやすいです。
治療には抗菌薬が用いられ、単純性・複雑性膀胱炎のどちらも「ニューキノロン系抗菌薬」や「セフェム系抗生物質」を服用します。
膀胱炎が疑われる場合は、できるだけ早く泌尿器科を受診しましょう。早期の治療が早期治癒につながります。