治らない「膀胱炎」の原因・対策を医師が解説 抗生物質･抗菌薬を飲んでも繰り返すのはなぜ？
女性に多くみられる「膀胱炎」。治ったと思ったら何度も繰り返すというケースもあり、実際に長い期間、悩まされている人も多いのではないでしょうか。一体なぜ、膀胱炎は繰り返しやすいのでしょうか。また、どう対処したらいいのかも気になります。今回は、「港南台かわかみ泌尿器科クリニック」の川上先生に教えていただきました。
監修医師：
川上 稔史（港南台かわかみ泌尿器科クリニック）
目次 -INDEX-
膀胱炎の治療方法・正しい治し方を医師が解説
編集部
そもそも、膀胱炎とはなんですか？
川上先生
文字通り、膀胱が炎症を起こしている状態のことです。膀胱は伸縮性のある袋状の器官で、内部に尿を貯め排出する働きがあります。この膀胱が細菌感染を引き起こし、炎症を起こしてしまうのが膀胱炎です。膀胱炎には、泌尿器科の疾患が原因となる「複雑性」と、それ以外の「単純性」がありますが、今回は女性で圧倒的に多くみられる「急性単純性」の膀胱炎に絞って話を進めさせていただきます。
編集部
わかりました。なぜ、炎症が起きるのですか？
川上先生
大腸菌を始めとする腸内細菌が膀胱内に侵入することで膀胱粘膜に炎症を起こします。とくに多くみられる女性の場合、肛門周囲の細菌が尿道から膀胱に侵入し炎症を起こします。女性は身体的な構造上、肛門、膣、尿道が近接しており、男性と比べて尿道が短いため、細菌が侵入しやすいのです。
編集部
ほかにも、膀胱炎の原因はありますか？
川上先生
排尿を我慢し膀胱に貯め過ぎることも膀胱炎の原因の1つになり得ます。また、冷えやストレス、疲労、妊娠、性交渉などが原因で起こることもあります。それから、閉経によって膣内環境の変化で雑菌が繁殖しやすくなるため、閉経後の女性も膀胱炎になりやすいと言えるでしょう。
編集部
膀胱炎になると、どのような症状が出るのですか？
川上先生
一般的なのは、排尿時（とくに排尿の後半から排尿後）の痛み、頻尿、残尿感、時には血尿もみられます。放置して炎症が悪化すると、細菌が腎臓にまで上がって腎盂炎（じんうえん）を引き起こし、発熱や腰痛が出ることもあります。
編集部
「膀胱炎は繰り返す」というイメージがあります。どのように治療するのでしょうか？
川上先生
通常、膀胱炎の治療には、抗生物質（抗菌薬）が用いられます。膀胱炎の薬で市販されているものもあり、症状の軽ければ改善することもあります。しかし、症状がくすぶったり、繰り返したりすることもあるので、早めに泌尿器科を受診し治療した方が結果として回復までの時間が短く済むと思います。
膀胱炎は抗生物質を服用してどれくらいで治る？ なかなか治らない場合は？
編集部
抗生物質を服用したら、どれくらいで効くのでしょうか？
川上先生
炎症の程度にもよりますが、2～3日で症状が改善しますね。遅くとも1週間以内には症状が治まると思います。
編集部
その間は抗生物質を飲み続けないといけないのですね。
川上先生
はい。抗生物質を服用する期間は、必ず医師の指示に従ってください。それから、多めに水分を摂取すると細菌を体外へ排出しやすくなるので、治癒が早くなることもあります。
編集部
それでも治らない場合はどうしたらいいのでしょうか？
川上先生
一般的に用いられる抗生物質は「セフェム系」や「ST合剤」というものですが、最近は抗生物質が効きにくい耐性菌も増えています。そのため、治療効果が乏しい場合や耐性菌が既に出現している場合には、検査の結果を受けて抗生物質の種類を変えることもあります。また、再発予防のために「猪苓湯（ちょれいとう）」や「五淋散（ごりんさん）」などの漢方薬を使用することもあります。
編集部
「膀胱炎は何度も繰り返しやすい」と聞きますが、なぜでしょうか？
川上先生
再発には必ず何らかの原因があります。例えば、細菌が侵入しやすい状況だったり、増殖しやすかったりする状態になっていることが考えられます。月経中などは膣内環境の変化で細菌が繁殖しやすくなりますし、トイレを長時間我慢すると侵入した細菌が膀胱内にとどまり、増殖しやすい状況になります。何度も膀胱炎を繰り返す場合は、こうした状態を改善する必要があります。
編集部
まずは自分の環境を見直すことが大事ですね。
川上先生
はい。あるいは、「膀胱炎と思っていたけれど、じつは重大な疾患が隠れていた」というケースもあります。例えば、膀胱がんをはじめとする尿路の悪性腫瘍や尿路結石などが「膀胱炎のような症状」の原因になることもあります。何度も膀胱炎を繰り返す場合には、これらのリスクが隠れているかもしれないので検査した方がいいでしょう。
なかなか治らない慢性膀胱炎･繰り返す膀胱炎の予防法や再発を防ぐには
編集部
膀胱炎の再発を予防するには、どうしたらいいのでしょうか？
川上先生
まずは、トイレを我慢しないようにしましょう。そのために、十分な水分補給をおこなって、尿と一緒に細菌を体外へ排泄することが大事です。体格や日中の活動量にもよるので一概には言えませんが、「1日1500mlの水分を摂取すると、再発性の膀胱炎の頻度を50％減らせる」というデータもありますから、1つの目安にしてみてください。
編集部
そのほかに、気をつけることはありますか？
川上先生
排尿や排便後にトイレットペーパーで拭く際に「後から前へ」拭くと、肛門周囲の細菌が尿道に触れることになります。そのため、日頃から「前から後へ」拭く習慣をつけましょう。なお、必要以上に強く拭いてしまう人もいますが、軽く拭う程度で問題ありません。
編集部
トイレでも要注意ですね。
川上先生
そうですね。それから、清潔に保とうとするあまりに、小便後にビデやウォシュレットを使う人も多いと思います。しかし、これがかえって細菌を体内へ招き入れてしまう原因となることもあります。本来、尿は無菌なので小便後の洗浄は必要なく、大便時はお尻だけを水圧を弱くして当てることを意識しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
川上先生
膀胱炎は繰り返しやすいと言われていますが、繰り返すには必ず何らかの原因があります。もしかしたら、重大な疾患が隠れているかもしれませんから、必ず泌尿器科で検査を受けるようにしましょう。とくに女性にとって、泌尿器科の受診はハードルが高いかもしれませんが、最近では女性専用外来や女性専用の待合室を設けている病院もあります。膀胱炎を放置すると大きな病気にもなりかねないので、違和感を覚えたら受診するようにしましょう。
編集部まとめ
「膀胱炎かもしれない」と思ったら、まずは泌尿器科へ。内科や婦人科などでも診てくれますが、泌尿器科なら尿の中の白血球の有無を検査して正しく診断してくれます。ぜひ、早めの対策を講じてください。
医院情報
| 所在地 | 〒234-0054 神奈川県横浜市港南区港南台3-16-27-101 |
| アクセス | JR根岸線「港南台駅」 徒歩3分 |
| 診療科目 | 泌尿器科 |
