膀胱炎は放っておいても自然に治る病気なの?
年に数回の頻度で繰り返すことのある膀胱炎(ぼうこうえん)。仕事の忙しさなどから、つい、自分で治そうとする方も少なくないのではないでしょうか。しかし、仮に症状が落ち着いたとしても、果たして「完治した」と言えるのでしょうか。しつこい病気への正しい対処法を、「くぼたクリニック松戸五香」の窪田先生に教えてもらいました。
監修医師:
窪田 徹矢(くぼたクリニック松戸五香 院長)
獨協医科大学卒業。国立病院機構千葉医療センター、成田赤十字病院にて研修。その後、国保松戸市立病院(現・松戸市立総合医療センター)泌尿器科、千葉西総合病院泌尿器科などの勤務を経た2017年、千葉県松戸市に「くぼたクリニック松戸五香」開院。地域に根差したおもいやりの医療を提供している。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医、日本プライマリ・ケア連合学会、日本透析学会正会員。
治療は確実、放置は運任せ、どちらを選ぶか
編集部
そもそも、膀胱炎になる原因はなんでしょうか?
窪田先生
主な原因は細菌感染で、そのほとんどは大腸菌が膀胱炎を引き起こしています。とくに女性に多い病気で、細菌が尿道から膀胱に侵入して、菌が繁殖すると炎症が起こります。免疫力が落ちてくるとかかりやすくなってしまいますね。
編集部
膀胱炎は、自然治癒力だけで治るものでしょうか?
窪田先生
程度にもよるでしょう。軽度なら、十分な水分摂取により尿とともに炎症の原因となる菌を排出することで、自然に治癒します。また、免疫力が落ちたために感染したと思われますので、その原因を改めることも必要でしょう。例えば、寝不足やストレスの抱え込みすぎなどですね。
編集部
では、なにをもって重度と判断したらいいですか?
窪田先生
重度の症状としては、多量の出血や激しい痛みなどです。通常、膀胱炎は、発熱を伴いません。もし発熱しているようであれば、「腎盂炎(じんうえん)」へ発展している可能性があります。そうならないよう、あまり自然治癒に期待せず、早期の対策を心がけてください。
編集部
市販薬に頼る方法はどうでしょう?
窪田先生
例えば、受診先が休診日だったときなどに、その場しのぎとして市販薬を服用してみてもいいでしょう。西洋のお薬や漢方薬の中には、症状を和らげてくれるものがあります。ただし、市販薬だけで治しきろうとは考えないでください。やはり、医師に診せるのが一番の近道だと思います。
編集部
最近、オンライン診療なども増えてきましたよね?
窪田先生
若い方で軽度な症状を繰り返しているようなら、それまでの受診によって原因が“ある程度”把握できているので、オンライン診療でもいいと思います。必要に応じて、お薬の処方箋などをその場でお出しします。他方、高齢者の場合は、ほかの重篤な病気が隠れていないか、受診して慎重に診察していく必要があるでしょう。
下半身の感染症対策を十分に
編集部
膀胱炎を防ぐ方法はあるのでしょうか?
窪田先生
膀胱炎のほとんどは感染症ですから、衛生対策に尽きると思います。気を付けるべき一例が、水洗便座ですね。少なくとも、公共の場で掃除の行き届いていない水洗便座は、避けるべきでしょう。
編集部
ほかにも予防方法があったら、続けてお願いします。
窪田先生
粗悪なトイレットペーパーを使っていると、知らないうちにちぎれたペーパーが患部に残り、感染源となってしまいます。吸水性の高いトイレットペーパーが市販されていますので、必要に応じて活用してみてください。生理用品も、吸水性の高いものが好ましいです。
編集部
生活面で意識すべきことはありますか?
窪田先生
よく言われることですが、「下半身を冷やさない」「水分を多めに取る」などが、代表的な予防策です。ほか、加えるとしたら「オシッコを我慢しない」「刺激の多い食べ物を避ける」などでしょうか。
編集部
いままで女性前提でしたが、男性の場合で気をつけることは?
窪田先生
男性は、膀胱の手前に前立腺がありますから、まず、前立腺炎にかかります。男性が膀胱炎になるとしたら、感染とは別の要因でしょう。例えば、結石が膀胱を傷つけているようなケースです。男性の生活面での工夫としては、清潔な下着を身につけることでしょうか。患部の通気性にも留意してください。
かかりにくい体質を目指して
編集部
先ほど「冷え」の話が出ていましたが、どんな関係があるのですか?
窪田先生
冷えは、血流不足により新陳代謝の低下を伴うので、免疫力が下がってしまいます。つまり、感染症に大きく関係する体質といえるでしょう。
編集部
ほか、食生活などの注意点は?
窪田先生
女性は基礎代謝が低く汗もかきづらいので、なかなか水分を取らないようです。また、仕事や子育ての都合上、“取れない、取るヒマがない”という方も散見します。できれば、機会を見つけて、1日2リットルの水分を、食事以外から取るようにしてください。男性なら、1日2.5リットルが目安です。
編集部
運動はどうでしょう? 排出する水分が汗に回ってしまうと思うのですが?
窪田先生
そこまで気にする必要はありません。第一、汗だくになるまで運動したら、水分が欲しくなります。また、適度な運動は、体の免疫力を整えるきっかけになるでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
窪田先生
お体のお悩みがあったら、すみやかに医師へ相談していただいて、その後の処置を決めていきましょう。治療をするかどうかは別で、ケースによっては、自宅で治す方法もアドバイスします。医院は、必ずしも「治療するところ」ではありません。もっとお気軽にご活用ください。
編集部まとめ
膀胱炎が自然に治まることはあるものの、それに期待してはいけないということでした。なぜなら、根本原因が解決されないまま残されていますし、腎盂炎などの重篤な病気へ発展しかねないからです。まずは日常生活の小さなところから意識を向け、体の内側も外側も清潔に、そして健康に保ってください。
医院情報
所在地 | 〒270-2261 千葉県松戸市常盤平5-17-10 |
アクセス | 新京成線「五香駅」 徒歩3分 |
診療科目 | 泌尿器科、内科、皮膚科 |