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帯状疱疹ワクチンの有効性を確認、65歳以上で入院リスクが減少【医師による海外医学論文解説】

 更新日:2023/03/27

ニュージーランドのビクトリア大学ウェリントンの研究グループは、帯状疱疹のワクチン接種により、帯状疱疹、合併症の帯状疱疹後神経痛による入院のリスクが減少していたと報告しました。この報告は2022年9月26日のLancet Regional Health Western Pacific誌電子版に掲載されました。この研究報告について竹内先生に伺います。


竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

研究グループが報告した内容とは?

ニュージーランドのビクトリア大学ウェリントンの研究グループが報告した内容について教えてください。

竹内想医師竹内先生

今回の研究はニュージーランドのビクトリア大学ウェリントンの研究グループが、弱毒化生ワクチン単回接種の有効性を検討したものです。
研究グループはニュージーランドでワクチンを接種した27万4272人と、条件がマッチする未接種者を54万9870人選び出しました。追跡期間中に帯状疱疹と診断されたのは7819人で、そのうちの9.2%に当たる718人が入院していたとのことです。また、入院した帯状疱疹後神経痛の患者は180人でした。
全体の90.8%の7101人の患者は入院せずに外来で抗ウイルス薬の治療を受けており、帯状疱疹で入院した718人のうち、100人がワクチンを接種したグループで、618人は未接種のグループでした。
1000人/年当たりの帯状疱疹による入院率は、接種したグループが0.16、対照グループは0.31となっています。また、帯状疱疹後神経痛で入院した180人中19人が接種グループ、161人は未接種グループで、1000人/年当たりの入院率は0.031と0.080となっています。
この結果をさらに分析した結果、帯状疱疹での入院を予防するワクチンの効果は57.8%で、65歳以上の人では54.4%となり、また免疫抑制状態にある人に対する効果は51.5%でした。さらに帯状疱疹後神経痛での入院を予防するワクチンの効果は73.7%で、65歳以上では75.5%、免疫抑制状態の人には67.6%となっています。

帯状疱疹ワクチンとは?

今回の研究対象になった帯状疱疹ワクチンについて教えてください。

竹内想医師竹内先生

帯状疱疹ワクチンとは、帯状疱疹の発症や重症化を予防するために開発されたワクチンで、50歳以上の人が接種対象者となっています。帯状疱疹ワクチンは2種類あり、1つは2016年に認可された、弱毒化された生きたウイルスが含まれている生ワクチンである弱毒生水痘ワクチンです。今回のビクトリア大学ウェリントンの研究グループが対象にしたのもこの生ワクチンになり、帯状疱疹の発症予防効果は51.3%で、8~10年で効果が消失するとされています。もう1つが2020年に認可された、サブユニットワクチンというウイルス表面タンパクの一部を抗原とした組換えワクチンであるシングリックスというものです。こちらの発症予防効果は50歳以上で97.2%、70歳以上でも90%以上という高い数値になっています。ただし、生ワクチンと比べて高い効果が出ますが、費用も生ワクチンに比べると高くなっています。

報告内容への受け止めは?

帯状疱疹のワクチンについては最近テレビCMなども流されるなど認知度が上がっていますが、今回のビクトリア大学ウェリントンの研究グループが報告した内容は、医療従事者の立場からどのように受け止めていますか?

竹内想医師竹内先生

帯状疱疹ワクチンの接種が一般的になってきました。今回の研究対象は予防効果ではやや劣るとされる生ワクチンの結果ですが、帯状疱疹による入院を減少させる効果があることが明らかになりました。今回の研究対象は日本人ではなくニュージーランド人を対象としたものなので、日本でも今後同等の研究が行われ、日本人でも帯状疱疹ワクチンの予防効果が証明されることが期待されます。また生ワクチンではなく、不活化ワクチン接種の場合はどの程度の予防効果が得られるのかの大規模なデータも今後期待されるところです。

まとめ

ニュージーランドのビクトリア大学ウェリントンの研究グループが、帯状疱疹のワクチン接種で帯状疱疹、合併症の帯状疱疹後神経痛による入院のリスクが減少していたと報告しました。最近テレビCMなどを通じて認知が上がっている帯状疱疹ワクチンについての研究結果は、今後も注目を集めそうです。

原著論文はこちら
https://www.thelancet.com/journals/lanwpc/article/PIIS2666-6065(22)00216-4/fulltext

この記事の監修医師