「何もしていないのに瘦せる」のは「がん」や「糖尿病」が原因?医師が徹底解説!
何もしてないのに痩せたとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
「何もしてないのに瘦せた」症状で考えられる病気と対処法
特にきっかけもなく、何もしていないのに痩せて体重が減ることもあります。
一般的に、体重減少を引き起こす病気としては、糖尿病やがん、甲状腺機能異常など様々な原因疾患が考えられます。
大きな心配が不要なケースから病気を疑って早急に受診すべき場合などがあることを把握しておくことが重要です。
今回は、「何もしてないのに痩せた」症状で考えられる病気とその対処法について解説していきます。
何もしてないのに瘦せた症状で考えられる原因と対処法
何もしてないのに瘦せた症状で考えられる原因疾患として、「うつ病」が挙げられます。
うつ病の明確な発症メカニズムは現在でも詳細に解明されていませんが、本疾患は患者自身の性格、普段の生活環境、あるいは日常生活におけるストレスなどが絡み合って引き起こされるといわれています。
うつ病は、罹患した患者本人が悪いわけではなく、誰しもが発症する可能性がある病気のひとつであり、特に真面目な性格の人がなりやすいと言われており、「ある日、突然布団から起き上がれなくなる」など症状が重度になってから周囲の人が気づくケースもあります。
一般的に、うつ病では意欲や興味の低下、楽しみの喪失、緊張や焦燥感、不安感など精神的な症状のみではなく、身体症状として不眠や食欲低下、眩暈や吐き気、頭痛、消化器症状に伴う体重減少といった様々な心身の不調を引き起こすことが多いのも特徴的です。
心配であれば、精神科や心療内科など専門医療機関を受診しましょう。
50代や60代で何もしてないのに瘦せた症状で考えられる原因と対処法
50代や60代で何もしてないのに瘦せた症状で考えられる原因疾患として、「糖尿病」が挙げられます。
糖尿病は、体内のインスリンと呼ばれる血糖を一定の範囲におさめる働きを担っているホルモンが十分に働かないために血液中に存在するブドウ糖が増加する病気です。
糖尿病の原因は、血糖値を降下させる作用のあるインスリンと呼ばれるホルモンの分泌量が低下したり、働きが悪くなったりすることで発症すると言われています。
インスリンの分泌量やその機能に異常が生じる原因としてもっとも多いのは、高脂肪、高カロリー、食物繊維不足などの悪しき食生活であり、日々の運動不足、ストレス、睡眠不足、喫煙習慣などの生活習慣の乱れもインスリン機能に悪影響を与えると考えられます。
このような生活習慣の乱れによる糖尿病を2型糖尿病と呼んでおり、全ての糖尿病患者の約9割以上を占めるとされています。
中高年齢層で最近特に契機なく体重が減少して痩せている場合には、糖尿病が隠れている可能性もありますので、糖尿病内科を受診しましょう。
高校生や大学生で何もしてないのに瘦せた症状で考えられる原因と対処法
高校生や大学生など若年者において、何もしてないのに瘦せた症状で考えられる原因疾患として、「バセドウ病」が挙げられます。
甲状腺機能亢進症の代表的な病気がバセドウ病であり、女性が男性より5倍罹患率が高いことも特徴的です。
バセドウ病を含めて甲状腺機能に異常があると、全身にさまざまな症状が現れ、特にバセドウ病では新陳代謝が活発になり、脈拍が速く、汗が多く、暑がりで疲れやすくなる、あるいは慢性的にいらいら感や不眠に陥る、食欲が増加するも体重が減ってしまう場合もあります。
また、顔つきや目つきがきつくなる、眼が出てくるなどのサインはバセドウ病の代表的な症状であり、甲状腺が腫れて大きくなって首が太くなってきて初めて病気に気づくケースもあります。
心配であれば、甲状腺専門外来や代謝内分泌内科など専門医療機関に相談してください。
すぐに病院へ行くべき「何もしてないのに瘦せた」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
バセドウ病の人が高熱や意識障害の症状を呈する場合は、代謝内分泌内科へ
バセドウ病を患っている人が、高熱症状を認めて意識が悪くなった際には、「甲状腺クリーゼ」という状態を考えねばなりません。
甲状腺中毒症で甲状腺ホルモンが高値である際に、その治療が不十分である、あるいは治療をまったく受けていない場合に、感染症や手術など生体に多大なストレスをうけると、甲状腺ホルモンの過剰な状態に耐え切れなくなり、心臓や肝臓など複数の臓器の機能が低下します。甲状腺クリーゼは、死の危険が差し迫った状態になり、高熱をともない、脈が速くなって意識が悪化して、呼吸が止まることも想定されます。
心配であれば、早急に専門医療機関を受診しましょう。
受診・予防の目安となる「何もしてないのに痩せた」ときのセルフチェック法
- ・何もしてないのに痩せた以外に高熱がある場合
- ・何もしてないのに痩せた以外に意識が悪いる場合
- ・何もしてないのに瘦せた以外に動悸症状がある場合
「何もしてないのに瘦せた」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「何もしてないのに瘦せた」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
糖尿病
糖尿病は現代の疫病ともいわれ、糖尿病予備軍まで含めると全人口のおおむね30%程度が発症していると考えられています。
糖尿病とは、血糖値(血液中に含まれるブドウ糖)が慢性的に高くなる病気を指します。
一般的に、私たちは食事をすると血糖値が上がって、血糖値の上昇が感知されると自然に膵臓から「インスリン」と呼ばれるホルモンが分泌され、肝臓や筋肉ではブドウ糖をグリコーゲンと呼ばれるエネルギー源に換えて脂肪組織では脂肪分として蓄える仕組みが作動します。
通常であれば、この仕組みが備わっているために私たちの血糖値は飲食しても一定範囲に保たれていますが、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性の状態や空腹時に血糖値が上昇する、あるいは体重が減少する傾向を示した時には、糖尿病を疑う必要があります。心配であれば、糖尿病内科など専門医療機関を受診しましょう。
悪性腫瘍(がん)
胃がんや大腸がん、肺がんなど悪性腫瘍と診断を受けた人のうちのおよそ半数近くが、体重減少の症状を自覚していると言われています。
体重減少のサインは、がんの種類やがんの進行度と密接に関係することもわかってきており、がんに罹患している患者さんの体重が減って痩せる原因は、慢性的に食欲が低下して食事を摂取できなくなることやがんに伴う悪液質という病状も関係しています。
通常、体重が減少すると、がん治療に伴う副作用の頻度が高くなる、あるいは悪性腫瘍の病状進行が早まること、あるいは様々な感染症に罹患するリスクが増加します。
日常生活で特に誘因なく体重が減ってきたと感じた際には、放置せずに適切に医療機関を受診して、正しく予防や対策を講じることが重要なポイントとなります。
バセドウ病
バセドウ病は、甲状腺機能亢進症のひとつであり、発症する原因が自己免疫によるものであり、過剰に分泌された甲状腺ホルモンにより代謝が異常に活発になる病気です。
代表的な症状としては、喉仏(のどぼとけ)の下にある甲状腺が全体的に腫れる、あるいは動悸が長期的に続き、暑がりで汗をかいて疲れやすく、1~2ヶ月で数kgの体重減少を引き起こすこともあります。
バセドウ病を根本的に治すことは難しいですが、薬物治療、手術、アイソトープなどの治療手段を用いて甲状腺ホルモンの生成を抑えて正常に社会生活が送れるように治療します。
心配であれば、甲状腺専門外来や代謝内分泌内科など専門医療機関を受診しましょう。
うつ病
うつ病は、何事に対しても憂うつで気分が重い状態になる病気であり、食欲が低下して体重減少につながることも往々にして存在します。
うつ病では、日常生活に強い影響が出るレベルで気分の落ち込みが続く、あるいは何事にも意欲や喜びを持つことができなくなる疾患であるとともに、目に見える症状が少ないため気づきにくい病気であり、うつ病を患っている本人自身が自覚していないことも多いです。うつ病は遺伝性やストレス、薬の副作用、ホルモン分泌異常症など様々な要因が契機となり発病し、日本の発症率は100人中およそ5人とされています。
精神的な病気であるうつ病に対しては適切な治療が必要となるため、精神科や心療内科などの受診を前向きに検討しましょう。
「何もしてないのに瘦せた」の正しい対処法は?
何もしていないのに気分が沈んで食欲が低下して体重減少に伴って痩せたうつ病患者さんに対する治療の主体となるのは薬物療法です。
主に頻繁に用いられるのは脳内のセロトニン濃度を高めることができる作用を持つ選択的セロトニン再取り込み阻害薬ですし、それ以外にもノルアドレナリン再取り込み阻害剤や三環系抗うつ薬などが使用されることがあります。
症状別の対処方法と注意点として、例えばうつ病で痩せて体重減少が認められる際には、絶望感や自己否定感など理想的な状況にふさわしくない感情が強く芽生えることもありますので、その考えと現実との歪みを修正する効果を発揮する認知行動療法が望ましいとされています。
特に、十分な社会生活を送るレベルまであと一歩のうつ病の患者さんに対しては、精神的デイケアなどに通所しながら、徐々に通勤や仕事業務に慣れていくことを目指すリハビリテーション治療も有意義な治療策のひとつとなります。
がん(悪性腫瘍)を患っている痩せた患者さんでは、体力を維持して治療に向き合う、あるいは感染症などの発症を防ぐためにも、エネルギーやタンパク質、ビタミン、ミネラルが不足しないように適切にバランスの良い食事を摂取することが重要なポイントとなります。
睡眠やストレス緩和やリラックスのアドバイスに関連して、うつ病やバセドウ病などにおいては様々なストレスが発症の誘因になることが多いので、良質な睡眠を日常的に確保して本人が受けるストレスが過度にならないように、無理な仕事や業務は引き受けずに、信頼できる相談相手を常に持っておくなど保健衛生上の配慮を有しておくことが重要なポイントとなります。
何もしていないのに体重が減少して痩せる症状を早く治したい時、あるいはセルフケアや応急処置を実践しても症状が収まらない場合は、出来るだけ早く専門医療機関を受診しましょう。
「何もしてないのに痩せた」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「何もしてないのに瘦せた」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ダイエットしていないのに急に体重が減るのは危険な状態ですか?
甲斐沼 孟(医師)
ダイエットしていないにもかかわらず、突然体重が減少して痩せる際には、がんや糖尿病などの病気が隠れている可能性もありますので、症状が続く場合には専門医療機関を受診して相談しましょう。
減量していないのに痩せていく症状は何科の病院で相談できますか?
甲斐沼 孟(医師)
減量する行動をしていないのに、段々と痩せていく症状を認める際には、バセドウ病やうつ病に罹患しているかもしれません。バセドウ病であれば代謝内分泌内科、うつ病であれば精神科や心療内科などで相談しましょう。
何もしてないのに瘦せたのですが病気でしょうか。
甲斐沼 孟(医師)
何も思い当たる節がないのに、痩せて体重減少を引き起こす場合には「糖尿病」を発症している可能性が考えられます。一般的に、糖尿病では、インスリンというホルモンの作用不足によって糖が体外に排泄されてエネルギー不足の状態となるため、体重が減少しやすいと考えられています。心配であれば、糖尿病内科などを受診しましょう。
ストレスが原因で何もしてないのに瘦せることはありますか?
甲斐沼 孟(医師)
年齢に関係なく様々な日々のストレスによって消化能力が低下して、空腹を感じにくくなり、本人が気づかないうちに食事量が減って痩せて体重が減少することもあります。症状が続く際には、自分なりのストレス発散方法を見つけて、セルフケアを行ってください。
まとめ
何もしてないのに痩せてしまう場合には、ストレス、糖尿病、がん(悪性腫瘍)、バセドウ病、うつ病などの病気が原因となっている例があります。
通常、半年間で5%未満の体重減少であれば、一旦様子を見て規則正しい生活とバランスの良い食事を心がけてください。
がん患者さんなど食欲が湧かない際には、消化の良い食べ物や食べやすいものを少しずつ摂取してください。
思い当たる節がないにもかかわらず、体重が減って痩せる症状が悪化する際には、専門医療機関を受診して出来るだけ適切なタイミングで相談できるように努めましょう。
今回の情報が参考になれば幸いです。
「何もしてないのに瘦せた」症状で考えられる病気
「何もしてないのに瘦せた」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
精神科・心療内科の病気
糖尿病内科の病気
代謝内分泌内科の病気
- バセドウ病
- 甲状腺クリーゼ
内科の病気
- がん(悪性腫瘍)
思い当たる理由がないのにみるみるうちに体重が減り痩せてしまった場合には、病気が隠れていないか一度検査を受けることをお勧めいたします。
「何もしてないのに瘦せた」に似ている症状・関連する症状
「何もしてないのに瘦せた」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「何もしてないのに痩せた」症状の他にこれらの症状がある場合でも「うつ病」「糖尿病」「バセドウ病」「甲状腺クリーゼ」「がん(悪性腫瘍)」などの疾患の可能性が考えられます。高熱が出現したり意識状態が悪化したり動悸が起こったりする場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
・糖尿病とは(国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター)