「吐き気」で考えられる6つ病気はご存知ですか?医師が監修!
ほとんどの方が今までに一度は吐き気を催した経験があるのではないでしょうか。乗り物酔いで吐き気を催したというケースが多いかもしれません。
しかし、何らかの病気が吐き気を引き起こしている可能性もあります。中には重大な病気が起因となっているケースもあるため、油断はできません。
今回は、吐き気を引き起こす病気にはどのようなものがあるのか、紹介します。また、吐き気が原因で医療機関を受診する目安や、診断と治療の内容についても併せて解説します。
吐き気についてあらかじめ知っておけば、いざという時に落ち着いて行動できるかもしれません。ご自身だけでなく、家族の健康を守るためにも、吐き気に関する知識を持っておきましょう。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
吐き気を引き起こす病気
吐き気は、様々な病気が原因となって発生する症状です。吐き気は、嘔吐と同時に起こったり、それぞれが別のタイミングで起こったりします。
吐き気や嘔吐の程度や状態によって、原因となる病気が異なると考えられています。主な病気とそれぞれの特徴を理解しておけば、いざというときに対処しやすいでしょう。
以下に、吐き気の原因となる主な病気について紹介をします。
- 急性胃炎
- 逆流性食道炎
- 感染性胃腸炎
- 機能性ディスペプシア
- 腸閉塞
- 虫垂炎
- 脳腫瘍などの脳神経疾患
- メニエール病などの耳の病気
- 胆石
- 胆嚢炎
- 尿管結石
- 心筋梗塞
中には重症になる可能性のある怖い病気もあるため、早めに専門医に相談しましょう。
急性胃炎
急性胃炎は、何らかの要因で胃の粘膜に急性の炎症が発生し、痛みやむかつきの症状を引き起こす病気です。急性胃炎を引き起こす要因としては、以下のようなものが挙げられます。
- ストレス
- 主に刺激物の暴飲暴食
- 痛み止めの薬の副作用
- 食中毒
- 肝硬変・腎不全などの全身性の病気
症状の程度は様々で、軽めの吐き気が2~3日程度続く場合もあれば、激しい痛みと嘔吐が長期間継続する場合もあります。肝硬変や腎不全など重大な病気が原因となっている可能性もあるため、安易に自己判断せず、早めに医療機関に相談しましょう。
急性胃炎になった場合は、胃を安静に保つために1~2日程度の絶食をするケースもあります。絶食中は点滴で栄養補給を行う場合が多いです。ストレスを溜めず、規則正しい生活を送ることが大切です。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃酸など胃の内容物が食道に逆流することにより、食道に炎症を起こす病気です。食道への逆流は誰でも起こりうる状態ですが、通常よりも逆流の時間が長くなると食道の粘膜にダメージが及び、炎症を引き起こします。
逆流性食道炎が起こる要因の最たるものは、食道と胃の間にある下部食道括約筋の緩みです。下部食道括約筋は、飲食物が通る時以外は閉じており、胃からの逆流を防いでいます。しかし、加齢・食べ過ぎ・肥満などが影響して下部食道括約筋の機能が落ち、緩んでしまうと考えられています。胸焼け・酸っぱいものが上がってくる感じ・吐き気・胸辺りの痛みなどが主な症状です。
逆流性食道炎の治療方法には、主に内服治療と生活習慣の改善が挙げられます。高齢者に起こりやすい病気と考えられている病気です。
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は、細菌やウイルスが原因となって発症する感染症の一種です。特にウイルス性のものが多く、ノロウイルスやロタウイルスに感染する例が多くみられます。病原体が付着した手で口に触れる接触感染や、病原体に汚染されている食品を食べることによる経口感染により罹患するケースが多いです。
症状は病原体によって異なりますが、吐き気・嘔吐・発熱・下痢・腹痛などの症状が一般的です。感染性胃腸炎の治療方法はなく、表れる症状を軽減する対症療法が行われます。
激しい下痢による脱水症状や、誤嚥(ごえん)を起因とした肺炎を引き起こす可能性があるため、できるだけ早めに専門医の診断を受けましょう。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアとは、胃の痛みやもたれが起こる病気です。内視鏡などで検査をしてもはっきりと異常がみられないにも関わらず、胃炎のような症状を引き起こすのが特徴です。
主な症状は、胃の痛み・もたれ・みぞおちの痛み・食欲不振・吐き気・嘔吐などです。機能性ディスペプシアが発症する原因として、以下のような要素があると考えられています。
- 胃・十二指腸運動の障害及び知覚過敏
- 不安感や虐待歴などの心理的な要因
- 過剰に分泌された胃酸
- 遺伝的要因
- ピロリ菌・サルモネラ菌などの感染
機能性ディスペプシアの治療方法は、薬物療法と生活習慣の改善が挙げられます。薬物療法は、症状に合わせた対応をするのが一般的です。
胃酸の抑制・消化管機能の調整・ストレス緩和などの効果のある薬品を投与するケースが多いです。
腸閉塞
腸閉塞は、何らかの原因により腸の内容物が肛門側へ通過していかなくなる病気です。腸の中に食べ物・胃液・腸液・ガスなどが溜まり、腸が膨らんでいきます。
腸閉塞は、原因によって機械的腸閉塞と機能的腸閉塞の2種類に分類されます。機械的腸閉塞は、腹部手術などによる腸の癒着・腫瘍などにより腸の中でふさがってしまう状態です。
機能的腸閉塞は、腸の動きを司る神経が異常をきたしたり、炎症が広がったりすることで、腸の内容物がスムーズに流れなくなる状態です。激しい腹痛・吐き気・嘔吐・腹部の張り・排便が出ないなどの症状が発生します。
治療には、チューブを用いた胃・腸の減圧処理が用いられるケースが多いです。それでも改善がみられない場合は、外科手術を実施する場合もあります。
虫垂炎
虫垂炎(ちゅうすいえん)は、虫垂に発生する炎症性の病気で、一般的には盲腸という名称で知られています。大腸の始まりである盲腸にある虫垂に細菌が感染して炎症を起こす病気です。
10~20歳代など若い年代で発症する例が多いですが、幼児や高齢者が発症するケースもあります。虫垂炎になると、みぞおちやへそのあたりの強い痛み・悪心・吐き気・嘔吐・食欲低下などの症状が起こります。
症状が進行すると、腹膜炎を起こし命に関わる重篤な状態に陥る可能性のある危険な病気です。症状がみられたら、できるだけ早めに医療機関で診てもらう必要があります。
吐き気で受診する目安
吐き気で受診を検討する目安としては、吐き気や嘔吐以外の症状がどの程度あるのかを確認すると良いでしょう。強い腹痛・下痢・排便障害などの症状がみられる場合は、重大な病気が原因となっている可能性があるため、できるだけ早めに医療機関で受診をするのをおすすめします。
また他の症状がなくても、吐き気や嘔吐が1週間継続したり、繰り返し発生したりする場合も医療機関に相談に行きましょう。
吐き気の診断と治療
吐き気について医療機関で相談する際には、症状をできるだけ正確に伝えましょう。いつから発生しているのか・1日に何回発生するのか・腹痛などほかの症状を伴っているのかなどをまとめておくと良いです。
症状を正確に伝えることは、吐き気の原因究明において大変重要です。問診及び検査を受けて原因が判明してから、治療に取り掛かります。吐き気の症状の治療方法は、原因によって様々です。
薬物療法や生活習慣の改善が多いですが、原因となる病気によっては手術が必要になるケースもあります。
すぐに病院に行った方が良い「吐き気」症状は?
- 高熱や繰り返す嘔吐、下痢、腹痛などもある場合
- 水分が取れない、ぐったりしている場合
これらの症状の場合には、すぐに病院受診を検討しましょう。
行くならどの診療科が良い?
主な受診科目は、内科、消化器内科です。
問診、診察、血液検査、尿検査、画像検査(レントゲン、CTなど)、心電図検査、超音波検査などが実施される可能性があります。場合によっては、上部消化管内視鏡検査や頭部画像検査なども追加されます。
病院を受診する際の注意点は?
持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。
いつから、どのような症状があるか、きっかけに心当たりがあるかなどを医師に伝えましょう。
治療をする場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。
まとめ
吐き気は、様々な要因で発生する症状です。体質によっては、ちょっとした要因で発生する場合もあるため、日常的な状態であると軽視してしまいがちです。
しかし、吐き気を起こす原因の中には、重篤な病気の可能性もあります。治療が遅れると、命に関わる事態に陥る可能性もあるでしょう。
単なる吐き気だから時間が経てば治ると、安易な自己判断をするのは危険です。特に、長期間吐き気が継続したり他の症状を伴っていたりする場合には、できるだけ早めに専門医に相談をすると良いでしょう。