「悪寒」の原因と考えられる病気はご存知ですか?医師が徹底解説!
悪寒で、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や寒気で考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
中川 龍太郎(医師)
「悪寒」症状で考えられる病気と対処法
その程度で言葉の定義があります。肌寒く上着を一枚羽織りたくなる程度が「寒気」といい、厚手の毛布を被りたくなる状態を「悪寒」、布団を被っても寒くて震えが止まらない状態は「悪寒戦慄」と言います。
原因となる病気の多くは感染症ですが、発熱をきたす自己免疫疾患や自律神経の乱れで寒気を自覚する場合もあります。
以下で順番に解説していきます。
悪寒と発熱症状で考えられる原因と対処法
悪寒と発熱が見られる場合、中等度〜重度の感染症の可能性が考えられます。発熱と悪寒に加えて、感染を起こしている臓器に関連した症状が出現します。例えば肺炎であれば咳や痰、息苦しさが出現し、虫垂炎や胆嚢炎では腹痛が見られます。
発熱と悪寒(厚手の毛布を被りたくなる程度の寒気)が見られる場合、感染症の程度としては決して軽くありませんので、原因精査と適切な治療が必要です。自己判断せず、医療機関を受診しましょう。
受診すべき診療科は一般内科です。血液検査や画像検査を行い、感染源を突き止めるのが一般的です。できるだけ早く医療機関を受診してください。
悪寒がするが熱はない症状で考えられる原因と対処法
悪寒や寒気はするのに熱がない場合、甲状腺機能低下症の可能性が考えられます。詳しくは後述しますが、何らかの原因によって甲状腺という臓器の機能が低下する疾患です。人体の代謝や活動性に関わる甲状腺ホルモンの分泌が低下するため、悪寒、無気力、易疲労感、体重増加などの症状が見られます。
受診すべき診療科は代謝・内分泌内科です。身体診察や血液検査を行い診断します。緊急性はないので日中に病院を受診してください。
悪寒戦慄(寒気と震え)の症状で考えられる原因と治し方
悪寒戦慄とは先述の通り、発熱があり布団を被っても寒くて震えが止まらない状態を指します。もっと具体的には、歯がガチガチとなる、手先がガタガタ震える状態です。この身体所見が見られた場合、菌血症の可能性が考えられます。菌血症とは、重篤な感染症のために病原菌が血中に侵入し、全身に回ってしまった状態のことを指します。
菌血症の原因として腎盂腎炎などの尿路感染症や腹腔内感染症、手術やカテーテル検査・治療の影響などが考えられます。菌血症が重篤化し、体の各臓器に障害が生じたものを敗血症と言い、極めて危険な状態と言えます。
非常に緊急性の高い状態ですので、発熱があり体がガタガタと震えている場合は、躊躇わずに救急要請するか、救命救急センターを受診するようにしましょう。治療は一刻を争うことが多く、血液検査や画像検査などを行いつつ、抗生物質の点滴などを行うことが一般的です。
悪寒と頭痛症状で考えられる原因と対処法
悪寒と頭痛が出ている場合、髄膜炎の可能性が考えられます。髄膜炎とは、細菌やウイルスといった病原体によって、脳の周囲を包む髄膜という部分に感染症が起きた状態です。高熱や頭痛に加えて、嘔吐や意識障害、麻痺や呂律困難といった局所的な神経症状、痙攣発作などが見られます。
非常に重篤で、命に関わる疾患です。数時間の経過で一気に進行する場合もあるため、緊急性も高いです。受診すべき診療科は、脳神経内科や一般内科、時間帯によっては救命医療センターの受診も検討してください。血液検査や画像検査、髄液検査などを行い、抗菌薬や抗ウイルス薬などを用いて治療するのが一般的です。
悪寒と吐き気症状で考えられる原因と対処法
悪寒や発熱、関節痛などのインフルエンザのような症状と、吐き気や腹痛が見られる場合、カンピロバクター腸炎の可能性が考えられます。カンピロバクターは細菌性食中毒の原因菌として大きな割合を占めており、日本でもよく見られます。典型的なエピソードでは、生や加熱の弱い鶏肉を食べて、その数日後から上記の症状が出現するというものが有ます。
経過は良好であることが多く、大半の場合、抗菌薬も必要としません。治療は整腸剤と補液のみです。すぐにできる処置としては、市販のものでもいいので整腸剤を内服し、OS-1などの経口補水液を使って脱水を予防することです。
食事や水分が全く摂れない場合は、医療機関を受診してください。受診すべき診療科は、一般内科です。緊急性はありませんので日中に受診しましょう。
悪寒と関節痛症状で考えられる原因と対処法
悪寒と関節の痛みが見られる場合、偽痛風の可能性が考えられます。偽痛風とはピロリン酸カルシウム二水和物(CPPD)という物質が、関節の軟骨や周囲の組織へ沈着することで、関節の炎症を起こす病気です。痛風と同じように関節の痛みを起こしますが、高尿酸血症(尿酸値が高いこと)が見られないことが特徴です。
膝や肘、手首などの関節に局所的な痛みが出現し、同時に悪寒を伴うほどの高熱が見られます。高齢者に出現することが多い病気です。
発熱や関節の痛みは数日で良くなり、予後は良好です。治療は安静と鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)の内服が行われることが一般的です。緊急性はありませんので日中に医療機関(内科や整形外科)を受診してください。
ストレスで悪寒症状が起こりやすい主な原因と対処法
ストレスで悪寒症状が出る場合、主な原因として自律神経失調症の可能性が考えられます。自律神経失調症とはその名の通り、自律神経の働きがうまくいかない状態です。そもそも自律神経とは交感神経と副交感神経の2種類に分かれます。私たちの体は、この2つの神経のバランスによって、運動時に心臓の鼓動を早くして筋肉に大量の血液を送る、食後に胃腸の働きを活発にする、ホルモンの分泌をコントロールするなど、様々な役割を無意識に行なっています。これがうまくいかないために、寒気や悪寒に加えて、めまい、動悸、息切れ、倦怠感や食欲不振などの症状が出現します。
すぐにできる対応は、いったんしっかりと休息をとり、その上で規則正しい生活を心がけること、またストレスを除去することです。
それでも症状が改善しない場合は、一度医療機関の受診を勧めます。受診すべき診療科は一般内科や心療内科です。
すぐに病院へ行くべき「悪寒」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
悪寒が出現して体の震えが止まらない場合は、内科へ
先述しましたが、ただ寒気がするだけでなく体の震えが止まらない場合は、菌血症という重篤な感染症に進行している可能性が高いです。早急に救急要請をしてください。
受診・予防の目安となる「悪寒」のセルフチェック法
- ・悪寒以外に呼吸困難がある場合
- ・悪寒以外に強い腹痛がある場合
- ・悪寒以外に頭痛や意識障害がある場合
「悪寒」がする症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「悪寒」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
インフルエンザ
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスが体内に侵入することで罹患する感染症です。発熱や咳、咽頭痛、鼻汁、関節痛、筋肉痛といった症状が一般的です。インフルエンザウイルス感染症自体は、ご自身の免疫力のみでも治癒することは可能ですが、風邪と比較すると症状が強いため、抗インフルエンザ薬などを使用することもあります。
流行に左右される疾患ですので、周囲で感染が増えていて自身も上記の症状が出た場合は、受診を検討してください。受診する診療科は内科です。学生の方は、学校保健安全法で出席停止期間があるため、必要であれば病院を受診して診断書を記載してもらいましょう。
肺炎
肺炎とはその名の通り、肺に炎症が起こった状態です。発症の原因は様々です。細菌やウイルスといった病原微生物が原因となる場合や、自分の免疫細胞が自らの肺を攻撃してしまう自己免疫疾患が原因になる場合、また粉塵や特殊な化学物質などが気管に入ってしまう場合でも起こります。
対処法・治療法は原因によって異なります。細菌性やウイルス性であれば、抗菌薬や抗ウイルス薬を使用し、自己免疫性疾患が原因であればステロイドや免疫抑制薬を使用することが多いです。
病院へ行くべき目安は、息苦しい症状が急激に悪化している場合、もしくは長期間持続する場合です。受診すべき診療科は呼吸器内科です。急激に悪化している場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
急性虫垂炎(盲腸)
急性虫垂炎とは、腸管の虫垂(盲腸)と呼ばれる部分に炎症が起こる疾患のことを指します。若い年代から高齢者まで幅広く見られます。食欲低下や腹痛(みぞおちから右下腹部へ移動する)、吐き気や嘔吐、発熱、悪寒といった症状が特徴的です。
軽症であれば、抗菌薬の内服のみで治療が完了することもありますが、重症な場合は外科手術が必要な場合もあります。
受診すべき診療科は消化器内科、消化器外科です。上記の症状が出現し、これまで解説してきた悪寒戦慄や、歩くだけでも響く腹痛が見られた際は、緊急性が高いため、夜間でも迷わずに医療機関を受診してください。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症とは、その名の通り、甲状腺の機能が低下してしまう病気です。出産後やヨウ素という栄養素を多量に取り過ぎてしまった後は、一時的に甲状腺機能が低下することがあります。また橋本病と言って、自己免疫が関連して甲状腺機能が低下してしまう場合もあります。症状としては寒気や悪寒、無気力、易疲労感、まぶたの浮腫、体重増加、動作緩慢、記憶力低下、便秘、嗄声(かすれ声)などが特徴的です。
これらの症状が1週間以上持続する場合は、一度病院を受診しましょう。受診すべき診療科は代謝・内分泌内科です。血液検査でホルモン値や抗体の測定を行なって診断します。
緊急性はないので日中に受診しましょう。
「悪寒」がするときの正しい対処法は?
発熱があり悪寒がする場合は、基本的に自力で対応しようとせず、病院を受診することを勧めます。これまで上げた疾患の中には、一時間の遅れが命取りになるものもありますが、その判断は一般の方には困難なためです。
また、発熱がなくても症状が1〜2週間持続する場合は、病院で精査しましょう。
「悪寒」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「悪寒」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
悪寒と寒気の違いは何でしょうか。
中川 龍太郎(医師)
寒気は「肌寒く上着を一枚羽織りたくなる」程度で、悪寒は「厚手の毛布を被りたくなる」程度とされています。
体がガタガタ震えて悪寒と熱があります。内科を受診すべきですか?
中川 龍太郎(医師)
ガタガタ震えている場合、悪寒戦慄という極めて危険な徴候が出ています。すぐに受診してください。
悪寒がゾクゾクするのですが入浴はしても問題ないでしょうか。
中川 龍太郎(医師)
やめておくのが無難です。
まとめ
「悪寒」は、風邪やインフルエンザといった身近な病気でも自覚するものですが、そのほかに髄膜炎や菌血症などの命に関わるものもあります。悪寒戦慄や頭痛、嘔吐、意識障害といった症状が伴っている場合は、早急に医療機関を受診してください。
「悪寒」で考えられる病気と特徴
「悪寒」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
代謝・内分泌科の病気
整形外科の病気
精神科の病気
悪寒の原因は感染症が多くを占めますが、そのほかの原因も見られます。症状が持続する場合は一度病院を受診しましょう。
「悪寒」と関連のある症状
「悪寒」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「悪寒」症状の他に、これらの症状がある場合も「菌血症」「髄膜炎」「インフルエンザ」「自律神経失調症」「甲状腺機能低下症」などの疾患の可能性が考えられます。
複数併発している場合は、なるべく早く医療機関への受診をおすすめします。