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「偽痛風」になると現れる初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/29
「偽痛風」になると現れる初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

偽痛風とは、痛風と同じような関節炎を引き起こす病気であり、痛みや腫れなどの症状を発症することがあります。

似たような症状であるため、痛風と混同される方もいますが、全く異なる原因であり適切な治療が必要です。

痛風など他の病気としっかりと区別して、適切な治療を行うためにも、本記事では偽痛風の初期症状と原因を解説します。

診断方法・治療方法・治療後の注意点なども併せて解説ご紹介するので、参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

偽痛風の初期症状と原因

医療

偽痛風はどんな病気なのでしょうか。

偽痛風とは、発作の症状などが痛風発作と似ていることから名づけられた病名です。しかし、実際には痛風とは異なる原因で発症します。痛風は、尿酸結晶による関節炎です。
血中の尿酸値が高い状態が続き、溶けきれなくなることで尿酸が結晶化し、関節などに蓄積することで痛風を引き起こします。そのため、高尿酸血症の状態が痛風であることのポイントです。
一方で偽痛風は、高尿酸血症の状態は見られません。また、病気にかかる年齢層なども異なります。痛風は中年男性が多いのに対して、偽痛風は加齢に伴って発症することが多く、この病気にかかる方は60~80歳の高齢者が中心で、男女差もないといわれています。
さらに、発症部位も痛風とは異なります。痛風の場合は、心臓から遠い足が主な患部ですが、偽痛風では膝・足首・手首・肘・肩・脊髄などの大きな関節が中心です。

初期症状について知りたいです。

この病気の初期症状としては、次のようなものが挙げられます。

  • 関節痛
  • 発熱
  • 腫れ
  • 発赤
  • 運動時の痛み

初期症状の1つが、関節のひどい痛みです。特に高齢者の変形した肩・手・膝・足などの大きな関節に多く発症します。この中でも特に多いのが膝関節であり、この病気の半数以上が膝関節です。
また、患部の炎症に伴って発熱がある点も主な症状です。腫れや発赤なども見られることがあります。運動時にも痛んだり、可動域が制限されているために関節を上手く動かせなくなるなどの症状が発生するケースもあります。

偽痛風の原因はなんですか?

この病気の原因は、関節内にピロリン酸カルシウムの結晶ができるためです。ピロリン酸カルシウムが関節に過剰に存在するため、結晶化して沈着してしまうのです。
ピロリン酸カルシウムが結晶化する理由ははっきりとは分かっていませんが、次のような方が発症しやすいといわれています。

  • 高齢の方
  • 手術など外傷のある方
  • 代謝性疾患を患ったことがある方

加齢に伴ってピロリン酸カルシウムが結晶化しやすいと考えられており、発症者には高齢者が多いです。また、手術などの外傷のある方や、痛風・低マグネシウム血症・副甲状腺機能亢進症などの代謝性疾患をきっかけに引き起こすことも多いです。
さらに、ピロリン酸カルシウムの結晶化は、遺伝的な要因も関係しているといわれています。

偽痛風の診断方法と治療方法

痛がる男性

何科を受診すればいいですか?

この病気が疑われる場合には、内科や整形外科を受診しましょう。かかりつけの内科などがあれば、そこで診てもらうと良いでしょう。
内科では痛風の治療を行っている場合もあります。そのため、血液検査などで痛風か偽痛風かをすぐに判断してもらえる可能性が高いです。
この病気は、珍しい病気ではないため、大きな病院に限らず治療を受けられる可能性が高いです。少しでも症状を感じた場合などは、早めに近くの医療機関を受診しましょう。

偽痛風の診断方法を知りたいです。

この病気の診断は、関節でのピロリン酸カルシウムの層状石灰化が認められるかどうかや、結晶が確認できるかで行われます。主に次のような鑑別疾患があるため、それぞれの特徴をピロリン酸カルシウムの状態と比較しながら診断します。

  • 痛風
  • 変形性関節症
  • 関節リウマチ
  • 細菌感染

先述したように、痛風は偽痛風とよく似ている病気です。しかし、痛風は高尿酸血症であるのに対して、偽痛風はピロリン酸カルシウムの結晶により症状があらわれます。そのため、高尿酸血症を示さずピロリン酸カルシウムの結晶を示すのであれば、偽痛風と診断できます。
変形性関節症とは加齢に伴って骨や軟骨が変形する病気です。特に、膝関節で発症するケースが多く、この場合は偽痛風と同じような状態となります。しかし、変形性関節症の場合は、ピロリン酸カルシウムの結晶を認めないことから病気の診断が可能です。
関節リウマチは、関節の腫れや変形などの症状が現れる病気です。見分ける方法としては、痛み方の違いで分けられます。偽痛風の痛みは急性であるのに対して、関節リウマチは慢性的な痛みである点が大きな違いです。また、血液検査などでも確定させられます。細菌感染も似ている病気に挙げられます。
細菌感染によって、関節やその周囲の皮下組織などに、痛み・腫れ・発熱を伴う病気です。この場合は、ピロリン酸カルシウムの結晶が認められないことから、見分けられます。このように、それぞれの病気の特徴や原因を比較することで、確定診断を行います。

どんな検査が行われるのですか?

この病気の検査方法は、次の通りです。

  • X線検査
  • 関節穿刺液検査
  • 血液検査

検査方法の1つが、X線検査です。この検査方法では、関節に結晶ができていないかを確認します。結晶ができている場合は、石灰像が認められるためこの病気の可能性が高いです。
関節穿刺液検査とは、注射を関節内に刺して関節液を採取する検査方法です。採取した関節液は、偏光顕微鏡で見てみると結晶の種類が分かるため痛風などの病気と見分けられます。血液検査では、尿酸値やリウマチでないことを調べます。

偽痛風の治療方法について詳しく知りたいです。

偽痛風の効果的な治療方法は、まだ確立されていません。そのため、基本的には痛みを和らげるための対症療法が中心です。具体的な対症療法としては、次のものが挙げられます。

  • 非ステロイド系抗炎症薬
  • 患部冷却
  • ステロイド薬
  • 関節へのコルチコステロイドの注射
  • 理学療法

非ステロイド系抗炎症薬は、急性の場合に用います。この薬の内服によって、炎症や痛みの軽減を図り症状を落ち着かせる方法です。また、患部冷却などによっても痛みの軽減効果が期待できます。20分程度冷却してみて、再び患部が熱を持つようなことがあれば冷却をするといった対応を繰り返すと良いでしょう。
複数の関節で同時に炎症が起きているケースや強い炎症反応が出ている場合には、速やかに痛みを軽減させるためにステロイド薬を使用するケースもあります。さらに、関節液を排出して、直接的に関節部位にコルチコステロイドを注入する方法もあります。これは、速やかに痛みを軽減するために行う方法です。
理学療法も併せて行うことがあります。筋力強化訓練や関節可動域訓練などが代表的で、関節の機能維持に役立つ治療方法です。

偽痛風の再発・治療後の注意点

医師

偽痛風は再発しますか?

偽痛風は再発することがあります。
特に抗炎症薬を服用して痛みなどが改善された方は、服用をやめると再発する傾向です。しかし、再発をした際にも命にかかわるようなことはありません。再発する場所は、基本的には最初に発症した同じ場所に症状が現れます。

治療後はどのような点に注意すべきですか?

治療後の注意点としては、再発を防ぐための薬の服用を忘れず行うことと、再び炎症が見られた際には安静にすることです。
特に、コルヒチンと呼ばれる薬は、発作の予防目的に用いられる薬です。そのため、服用を忘れると再び痛みなどの症状が現れる可能性があります。飲み忘れがないようにしましょう。
万が一、再び症状が現れた場合には、患部を安静にして症状を悪化させないようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

偽痛風は、痛風などの関節の炎症を起こす病気と似た症状が見られる病気です。そのため、どの病気による症状かを自己判断することは難しいです。強い痛みや腫れも伴うため、少しでも症状が現れたのであれば、すぐに専門の医療機関を受診しましょう。
また、予防のためにも正しく原因の理解や注意点を押さえておくことが大切です。再発の可能性があり、再び強い痛みや発熱を伴う可能性があります。生活にも影響が出てしまうため、正しい治療方法や注意点を把握した上で対処しましょう。

編集部まとめ

診察をする男性医師
偽痛風は、高齢の方が発症しやすく、痛み・発熱・腫れといった痛風と似た症状を伴う病気です。

しかし原因は全く異なるため、専門の医療機関を受診すれば、すぐにどの病気による症状なのかを見分けられるでしょう。

少しでも症状の疑いがある方や違和感を覚えている方は、我慢をせずに早めに受診して治療を始めましょう。治療が早ければ、治療期間も短く症状の早期改善が期待できます。

この記事の監修医師