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「踵骨骨折」は治りにくく後遺症が残ることも?予防方法など医師が監修!

 更新日:2023/03/22
「踵骨骨折」は治りにくく後遺症が残ることも?予防方法など医師が監修!

人の体には、大人の場合で約206個もの骨があります。骨とその周りには血管や神経が多く存在するため、骨折すると腫れや痛みでその部位を動かせなくなることもあるのです。

特に足を骨折した場合には、日常動作である歩行に支障をきたすため不便を強いられるでしょう。

そのような足の骨折の一つに、踵骨骨折(しょうこつこっせつ)というものがあります。

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)には治りにくく後遺症が残りやすいという特徴があるため、特に注意が必要です。

今回は踵骨骨折(しょうこつこっせつ)とはどのような骨折なのか、治療法や予後などから詳しく解説いたします。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)とはどのような骨折?

足痛い

踵骨とはどこの部位ですか?

踵骨(しょうこつ)とは、足の最後尾にあるかかとの骨のことです。踵骨は足の構造の中で一番大きく衝撃を受けやすいことから、海綿骨というスポンジのような骨が主体となって形成されています。踵骨は膝から足首までの下腿と連動しているため、歩行や屈伸運動に大きく関わっています。そのため、骨折などで踵骨を損傷した場合は、歩いたり立ち上がったりなどの基本的な日常動作に支障をきたす恐れがあるのです。また、踵骨は多くの関節と接していることや複雑な構造をしていることから、骨折すると治療が難しく完治までに長い期間を要するでしょう。

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)の原因は何ですか?

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)の原因として、足の酷使や転倒なども挙げられますが、ほとんどの場合は高所からの転落により起こっています。踵骨に対して垂直方向に強い力が加わることで骨折してしまうのです。あまり頻度の高い骨折ではありませんが、特に肉体労働者の労働災害としてや、骨密度の低い高齢者が階段の踏み外しで転倒した際にみられることが多いです。つまり、踵骨骨折(しょうこつこっせつ)はかかとに強い衝撃が加わったり骨が脆くなったりすることが原因で起こりやすくなるといえるでしょう。

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)の症状を教えてください

踵骨を骨折すると、踵骨の変形・ずれ(転位)・周辺の関節の損傷などにより、かかと全体に激しい痛みがあらわれます。また、損傷によりかかと全体が腫れ、皮下出血が起こることにより青紫色に変色します。痛みは腫れが酷くなるにつれ強まるため、骨折直後から次第に酷くなることが多いでしょう。踵骨は下腿と連動しているため、痛みによりかかとへの荷重が困難になることで下腿の運動も制限され、足首が硬直してしまうこともあるのです。

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)を発症しやすい人はどんな人ですか?

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)を発症しやすい人には、以下のような特徴があります。

  • 足をよく使うスポーツをしている
  • 高齢である
  • 骨密度が低い
  • 関節病を患っている
  • 体重が重い
  • 足に合わない靴を履いている

先述したとおり、踵骨骨折(しょうこつこっせつ)は踵骨に垂直方向の負荷がかかることが原因とされています。そのためランニングなど足を酷使するスポーツをしている人は、競技中の怪我による骨折はもちろん、踵骨にも負荷がかかり疲労骨折を起こしやすくなります。また、足に合わない靴を履いて競技をすることでも、足の負荷を増大させ踵骨骨折(しょうこつこっせつ)のリスクが上がるのです。骨が脆い高齢者骨密度の低い人・関節リウマチなど関節病を患っている人も、骨折自体の可能性が高いため踵骨骨折(しょうこつこっせつ)を発症しやすいといえるでしょう。体重が重い人も、踵骨に垂直方向の負荷がかかりやすいため踵骨骨折(しょうこつこっせつ)のリスクが高いです。

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)の診断と治療について

包帯

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)の診断について教えてください

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)の診断は、X線検査CT検査で行います。足部前後と踵骨側面の画像から、踵骨にひびなどの損傷がみられる場合には、踵骨骨折(しょうこつこっせつ)であると診断されるでしょう。踵骨を骨折した場合は、接している関節の損傷・変形の仕方・転位の有無などによってその後の治療方法が大きく異なるため、患部を詳しくみる必要があるのです。

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)の治療について教えてください

先述したとおり、踵骨骨折(しょうこつこっせつ)の治療法は骨折の程度や具合によって異なります。踵骨の転位がみられない、または徒手整復法という麻酔下において両手で踵骨に強い力を加えて元の位置に戻す方法で転位が治った場合には、ギプスや固定装具などによる保存的治療が行われるでしょう。しかし、転位がみられ徒手整復法では元に戻らない場合や骨折部位が大きい場合には、手術で踵骨の整復と固定をする必要があります。踵骨が転位を起こしたまま固定されると、後に疼痛や機能面などでさまざまな後遺症が残ってしまうためです。手術は腰椎麻酔によって行われ、かかとの外側を切り開き、直接踵骨の関節面と外壁を整復し変形を整えます。その後、踵骨専用プレートやスクリューを用いた小侵襲内固定法で踵骨を正しい位置に固定するのです。手術後はギプスなどでの固定が不要で、早期に関節の可動域訓練を行うことも可能です。保存的治療や手術後には、元の機能を取り戻せるようリハビリを行います。骨折の程度や患者様の状態にもよりますが、治療期間は踵骨の固定で3~6週、仕事の現場復帰までには早くても2~3か月程度と長期間に及びます。

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)の予防方法はありますか?

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)を予防するには、適切な運動骨密度の増加が大きなポイントとなります。スポーツをする人の場合は、過度なトレーニングを避けクールダウンをしっかり行うことで、疲労骨折を予防できるでしょう。また、高齢者においても適切な運動を取り入れることは非常に重要です。筋力と関節の可動域を増やし転倒しづらい身体をつくることで、骨折のリスクも減らせます。併せて、骨密度を上げることで骨が強くなるため骨折しづらくなります。特に閉経後の高齢女性には骨密度が低くなる骨粗鬆症がよくみられるため、骨密度の検査を受け、必要であれば薬物療法などで骨粗鬆症の治療を行うと良いでしょう。

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)の予後について

医師

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)のリハビリについて教えてください

リハビリは、医師の指示のもと理学療法士が指導を行います。踵骨骨折(しょうこつこっせつ)のリハビリは、可動域訓練部分荷重全荷重歩行の3段階で行われることが一般的です。足を固定したまま動かさないでいると、関節が固まり可動域が狭くなってしまいます。そのため、まずは関節の動きを回復するために、理学療法士が足首などの関節を少しずつ動かしながら可動域を広げます。術後6週辺りからは免荷装置で体重負荷を減らして行う部分荷重で歩行訓練に入り、10~12週で通常の歩行である全荷重歩行の訓練を行えるようになるでしょう。リハビリをしっかり行うことで、後遺症軽減や職場への早期復帰にも繋がります。ただし、無理は禁物です。リハビリは医師や理学療法士の指示を守り、少しずつ段階を踏んで行いましょう。

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)の後遺症はありますか?

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)は後遺症があらわれる可能性が高く、特に転位があるなど重症の場合では後遺症がよくみられます。主な症状として、疼痛扁平足歩行時痛坂道の歩行困難長時間立っていられないなどが挙げられます。踵骨を骨折すると骨が前後に分断されますが、後ろ側の骨が上手く癒合しなかった場合に、変形性関節症腱鞘炎扁平足などからくる痛みが起こりやすいのです。痛みが強く日常に支障をきたしている場合には、矯正骨切術や距骨下関節鏡での剥離手術など、二次的手術が行われるケースも少なくありません。踵骨骨折(しょうこつこっせつ)後に痛みなどで歩行への支障が続く場合には、医療機関で医師に相談することをおすすめします。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)は治療が難しいだけでなく後遺症もあらわれやすいため、できれば避けたい骨折です。転落事故による骨折が多いとはいえ、高齢者の転倒やスポーツなどによる疲労骨折は十分に予防できるといえるでしょう。最近では、高齢者が階段を数段踏み外しただけで踵骨骨折(しょうこつこっせつ)を起こすというケースが増えてきています。日ごろから適度な運動を心掛け転びにくい身体を作るとともに、骨密度アップに向けて食生活の見直しや骨粗鬆症の検査を受けるなど対策を取り、骨折しにくい身体を目指しましょう。

編集部まとめ

女性
今回は踵骨骨折(しょうこつこっせつ)について詳しくご紹介いたしました。後遺症があらわれやすく治療期間も長いため、骨折しないよう注意したいものです。

骨密度の低下は踵骨だけでなくあらゆる骨折の原因にもなります。加齢とともに骨密度は低下するため、早いうちから対策を取ることで骨粗鬆症の予防にもなるでしょう。

また、転倒も骨折の原因として非常に多いため、筋力を維持するためにも適度な運動を取り入れることをおすすめします。

健康な身体作りで、踵骨骨折(しょうこつこっせつ)を予防しましょう。

この記事の監修医師