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「菌血症」の初期症状・原因・入院期間はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/05/19
「菌血症」の初期症状・原因・入院期間はご存知ですか?医師が監修!

菌血症(きんけつしょう)は普段の生活では聞きなれない病気だと思います。菌血症とは血液中に細菌が存在している状況のことを指します。

血液中に細菌が滞在しているだけでは問題ないのですが、細菌が他の臓器などで感染症を引き起こすと全身の症状を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。

全身の症状を引き起こす前に、正しい治療を進めれば治癒する病気でもあります。

今回は症状・原因・治療方法・入院期間・致死率・後遺症について詳しく解説します。菌血症といった聞きなれない病気に対する知識を身につけましょう。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

菌血症とは

説明する医師

菌血症はどのような病気ですか?

菌血症とは血液中に細菌が入り込んで滞在している状態を指します。一般に血液培養によって細菌を検出することにより診断がつきます。
肺炎・関節炎・尿路感染症などの感染巣から入り込んだり、手術後に細菌が入り込んだりと原因はさまざまです。稀ですが、特に感染巣が明らかにならないけれど、細菌が入り込む場合もあります。

菌血症と敗血症はどのように違うのでしょうか?

日本版敗血症ガイドライン2020によると、敗血症は「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされている状態」とされています。
つまり菌血症は血液中に細菌が存在している状態であり、敗血症は感染症によって全身に重篤な感染症状が起きている状態といえます。これらが菌血症と敗血症の大きく異なる点です。
基本的に血液には免疫機能が働いているため細菌が入り込んでも、防御する力があります。しかし他の感染症を引き起こしている、または免疫機能でも抑えられない強い細菌が入り込んでしまう場合、全身に重篤な感染症状が引き起こされる危険性があります。

菌血症の症状を教えてください。

主な症状は以下の通りです。

  • 発熱
  • 悪寒・戦慄
  • 低血圧
  • 頻呼吸
  • 心拍数増加
  • 意識障害
  • 吐き気

上記の症状が出現している場合は敗血症に移行している危険性があるため注意が必要な状態です。
菌血症は血液中に細菌が存在している状態のため、感染などを引き起こしていない場合は無症状で経過することもあります。

発症する原因を教えてください。

血液内に細菌が入り込む原因には以下の状況があります。

  • 肺炎・尿路感染症などの感染症から細菌が流入する場合
  • 手術・怪我・注射などの外部から細菌が流入する場合
  • 特に感染症が明らかでないけれど検出される場合

上記のように血液内に細菌が入り込む原因はさまざまあります。感染症を引き起こした後に細菌が流入した場合や、手術を受けた後に細菌が流入した場合は特に注意が必要です。感染症や手術により全身の免疫機能も低下していることが多く、細菌が全身に回りやすい状態です。
また菌血症を発症する原因菌として多いのはグラム陰性桿菌(いんせいかんきん)、グラム陽性球菌(ようせいきゅうきん)などが挙げられます。

菌血症の治療方法

点滴

受診を検討するべき初期症状はありますか?

初期症状としては発熱・悪寒戦慄・低血圧・頻呼吸・心拍数増加・吐き気などの症状が出現した場合は、敗血症のリスクがあるため医療機関を受診して医師の診察を受けましょう。
菌血症は無症状で経過することも多く、免疫機能の働きにより気づかないうちに細菌が血液外に排出されます。しかし、先述したように免疫機能が破綻していたり、他の感染症を引き起こしたりしている場合は敗血症に移行するリスクがあるため注意が必要です。
敗血症になってしまうと適切な治療が必要になり、悪化するリスクが高くなるため、初期症状が出現した段階で早期に受診して診断を受けてください。

どのような検査で菌血症と診断されますか?

菌血症の診断には血液培養の検査を行って診断がつきます。血液培養とは採血により血液中に存在している細菌を採取して、培養にかけることです。
血液培養は2セット以上採取することが基本とされています。2セット以上採取する理由として採取した血液に細菌が検出されないことや、皮膚の常在菌の影響を除外することなどが挙げられます。どのような細菌が症状を引き起こしているのか、原因になっている細菌を同定できないと治療に繋げられません。
基本的に血液中は無菌状態のため、血液培養にかけて採取された細菌があれば原因菌であると考えられます。血液培養前に菌血症に対して治療を行なっている場合は一度治療を中断します。治療により細菌の検出感度が低下して、原因になっている細菌が同定できなくなるリスクがあるためです。
また採血によりCRPなどの炎症マーカーが上昇しているか、WBC(白血球)の値が増加・減少しているかなども診断の補助として使用します。
血液培養により原因菌を同定して適切な薬剤を選択することが、有効な治療の第一歩になります。

菌血症の治療方法を教えてください。

原因菌が判明した段階で、原因菌に対する抗菌薬を点滴で投与します。投与後は適宜、採血にてCRPの炎症マーカーが低下しているかなどを確認することが大切です。
また近年では、プロカルシトニン検査といわれる感染性炎症の指標になっている検査も効果判定に用いられています。CRPやプロカルシトニンの数値が低下しない状況においては、現在使用している抗菌薬を変更するなど治療方法を再度検討する必要があります。

入院期間はどのくらいでしょうか?

菌血症の原因になった感染症の治療期間に応じて入院期間が決まります。一般的に治療期間は10〜14日間です。少なくとも1週間、基礎疾患の有無によっては2週間以上かかることもあるため、医師の指示に従いましょう。
基本的に炎症マーカーであるCRPの低下、プロカルシトニン検査での数値低下などにより、細菌が消失していることを確認してから退院になります。また原因になった感染症の種類によっては最後に血液培養で細菌が血液中に存在しないか確認することもあります。

菌血症の後遺症

問診表と聴診器

菌血症は治る病気ですか?

菌血症は原因菌に対して適切な治療を行えば治癒する病気です。そのため血液培養で原因菌を同定することが非常に大切になります。
原因菌に対する適切な抗菌薬が投与されないと、なかなか治療は進みません。適切な治療が行われないと、細菌が全身に回ってしまい、敗血症を引き起こすケースもあるため注意が必要です。

致死率は高いのでしょうか?

菌血症のみで治療が完結する場合は、致死率はほとんどありません
しかし敗血症を引き起こして、全身に炎症が波及した場合は致死率が高くなります。WHO(世界保健機構)によると敗血症は全世界の死亡原因の20%を占めているといわれています。敗血症を引き起こす前に適切な治療を行うことが大切です。

菌血症に後遺症はありますか?

原因菌に対して適切な治療が行われた場合には、基本的に後遺症は残りません。しかし敗血症を引き起こしたケースや、治療に伴う長期間の臥床(がしょう)を余儀なくされたケースなどは廃用症候群のリスクがあるため注意が必要です。
廃用症候群とは長期間の臥床により筋力低下・関節可動域制限・呼吸機能低下・褥瘡などの二次的な障害を指します。医療機関によっては廃用症候群の予防のために早期からリハビリテーションが開始される場合もあります。
注意すべき点は、必ず医師の安静度に従い運動を進めていくことです。自己判断で運動を進めては菌血症の治療に支障をきたすことがあるため注意してください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

菌血症は血液中に細菌が入り込んだ状態を指します。細菌が入り込んでいる状態であれば問題ないのですが、細菌が他臓器で感染症を引き起こしてしまうと敗血症を引き起こすケースもあります。敗血症は致死率も高く注意が必要です。
一方で菌血症は血液培養によって原因になっている細菌を同定して、適切な治療を行うことで治癒する病気です。敗血症を引き起こさないためにも、感染症などの症状が出現したら早期に医療機関を受診して医師の診断を受けて治療を進めてください。ただの感染症と簡単にすませないことが自身の健康を守るためにも大切です。

編集部まとめ

ウォーキングする老夫婦
今回は菌血症について解説しました。菌血症は適切な治療を行えば治癒する病気です。

一方で感染が他の臓器まで広がってしまうと敗血症を引き起こす危険性もあるため注意が必要です。

初期症状は発熱・心拍数増加・戦慄悪寒・吐き気などさまざまですが、症状が出現した段階で医療機関を受診しましょう。

血液培養などの検査を行い原因になっている細菌を同定することが大切です。医師の指示に従い適切な治療を受けましょう。

この記事の監修医師