「ムズムズした残尿感」の治し方はご存じですか?主な原因と考えられる病気を医師が解説!


監修医師:
伊藤 陽子(医師)
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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
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「ムズムズした残尿感」がある症状で考えられる病気と対処法
ムズムズした残尿感はさまざまな病気でみられます。膀胱炎・過活動膀胱・前立腺肥大症などの泌尿器系の病気でみられることが多いです。残尿感の原因によって治療法は異なります。感染症の場合、症状が悪化することで腎盂腎炎や敗血症など重大な病気を発症する危険性もあるため注意が必要です。症状が続く・繰り返し現れるなどの場合は、医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。ムズムズした残尿感がある症状で考えられる原因と治し方
残尿感がみられる病気の一つに過活動膀胱が挙げられます。過活動膀胱[陽伊2] とは膀胱が過敏に活動するようになることで、急に尿意をもよおし頻尿になる状態です。過活動膀胱の症状は、尿意切迫感(急に我慢ができないほど強い尿意を感じる)や、頻尿・夜間頻尿などです。過活動膀胱では、膀胱に尿が溜まっていないのに過敏になり、残尿感を感じます。 原因は他の原因による二次性のものと生活習慣などが原因で起こる一次性のものがあります。二次性のものは脳血管障害や脊髄疾患などの神経疾患が原因となる事が多く、一次性のものは加齢・ストレス・膀胱の感知機能の過敏などが関係しているといわれています。しかし、原因が特定できないことが大半です。 過活動膀胱は生活習慣と関係があるといわれています。肥満の解消・カフェインやアルコールの摂取を控える・禁煙する・長時間座位の姿勢をとらない・下半身を冷やさないなど、生活習慣の改善がすすめられます。 尿意切迫感、残尿感などの症状がみられる場合は、泌尿器科を受診しましょう。女性でムズムズした残尿感の症状で考えられる原因と対処法
女性で残尿感がある場合、膀胱炎がまず考えられます。膀胱炎は、膀胱に炎症が起きることで生じる残尿感・血尿・排尿時痛・頻尿などの症状がみられます。 細菌感染が膀胱炎の原因となる事が多いです。女性は男性に比べて尿道が短いこと・尿道口の近くに肛門や膣があることで、細菌が膀胱に侵入しやすい体の構造になっています。 膀胱炎の中で、急性単純性膀胱炎が一番多くみられます。細菌が尿道から膀胱へ入り込み、炎症を起こすことで、急性単純性膀胱炎が発症します。発症のきっかけは免疫力の低下・トイレを我慢すること・性交渉・妊娠中などが原因になります。治療は抗生剤による薬物療法が中心です。セルフケアとしては水分を十分にとることがすすめられます。十分な水分をとり、トイレを我慢しないようにする、排便後は前から後ろに向かって拭くなどの生活習慣が膀胱炎の予防に効果的です。 膀胱炎の特徴的な症状である残尿感・血尿・排尿時の痛み・頻尿などが現れたら、早めに泌尿器科を受診しましょう。男性でムズムズした残尿感の症状で考えられる原因と対処法
男性で残尿感の症状がある場合、考えられる病気は、慢性前立腺炎と前立腺肥大症などです。慢性前立腺炎の症状は、残尿感の他に頻尿・下腹部などの不快感などです。原因は解明されていませんが、血流の滞りなどさまざまあるといわれています。前立腺肥大症では尿の通過障害が原因で排尿後の残尿感がみられることがあります。 残尿感、頻尿や下腹部痛などがみられる場合は、泌尿器科の受診をお勧めします。すぐに病院へ行くべき「ムズムズした残尿感」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。ムズムズした残尿感があって発熱などの症状の場合は、泌尿器科へ
残尿感の他に、発熱や悪寒などの症状がある場合は腎盂腎炎や急性細菌性前立腺炎を起こしている可能性があります。腎盂腎炎は膀胱炎が悪化して、細菌が腎臓まで感染した状態です。腰背部痛・悪心などの症状が現れます。 また、急性細菌性前立腺炎は前立腺が大腸菌などの細菌に感染して炎症を起こした状態です。排尿困難や尿閉(排尿できない状態)といった症状が特徴です。残尿感があり、発熱や悪寒の症状がある場合はすみやかに泌尿器科を受診しましょう。病院受診・予防の目安となる「ムズムズした残尿感」の症状のセルフチェック法
・ムズムズした残尿感以外に下腹部に症状がある場合・ムズムズした残尿感以外に頻尿の症状がある場合
・ムズムズした残尿感以外に排尿時の痛みや血尿・発熱の症状がある場合
・ムズムズした残尿感以外に尿が出にくい症状がある場合
「ムズムズした残尿感」症状が特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「ムズムズした残尿感」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。膀胱炎
膀胱に何らかの原因により炎症が起きたものが膀胱炎です。膀胱炎になると、残尿感・頻尿・排尿時痛などがみられます。膀胱炎の主な原因は細菌感染です。トイレを我慢することや免疫力の低下・性交渉・妊娠中などが細菌感染のきっかけになります。膀胱炎は発症原因によって分類されます。急性単純性膀胱炎が最も多く、他には複雑性膀胱炎・間質性膀胱炎があります。
・急性単純性膀胱炎は女性で発症する頻度が高いです。女性は男性より尿道が短く、細菌が膀胱に侵入しやすいためです。
・複雑性膀胱炎は、前立腺肥大症・尿路結石などの泌尿器科の疾患を持つ場合に起こる膀胱炎です。
・間質性膀胱炎は免疫系の異常が原因と考えられていますが、原因はまだ解明されていません。
治療法は、急性単純性膀胱炎は抗生剤をもちいた薬物療法です。予防するためには、トイレを我慢しない・十分な水分をとる・排便後は前から後ろに向かって拭くなどの生活習慣がおすすめです。複雑性膀胱炎は抗生剤を使用しすると同時に、膀胱炎の原因になっている泌尿器科の病気の治療を行います。間質性膀胱炎は刺激物やストレスで症状が悪化する場合があるといわれています。悪化を予防するには、刺激物の摂取を控え、ストレスを解消しましょう。症状によって、鎮痛剤や抗うつ薬などの内服治療や内視鏡の手術を行います。残尿感・頻尿・排尿時痛などの膀胱炎の症状が現れたら、早めに泌尿器科を受診しましょう。
尿道炎
尿道炎とは尿道の感染症です。女性は尿道が短いため尿道炎になることは少なく、男性に多く見られる病気です。尿道炎の主な原因は性行為時の感染ですが、免疫力の低下などで発症する場合もあります。尿道炎の主な症状は、排尿時痛やかゆみ、頻尿、尿道からの排膿、尿道口の腫れなどです。症状が軽い場合や現れないこともありますが、進行すると尿道狭窄となり排尿障害に進展する場合があります。 主な治療法は抗菌薬の内服や注射です。原因となる菌によって有効な抗菌薬が異なります。感染予防のためには、性行為時にはコンドームの装着をしましょう。しかし、コンドームを装着しても完全ではありません。万が一、排尿時の痛みやかゆみ・頻尿などの症状などが出現したら、早めに泌尿器科を受診することをお勧めします。前立腺炎
男性の臓器である前立腺に、炎症が起こったものが前立腺炎です。残尿感や頻尿・尿意切迫感などの症状が現れます。前立腺炎は細菌が感染することで起こる急性もしくは慢性細菌性前立腺炎と、細菌の感染が原因ではない慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群があります。前立腺炎の90%以上は慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群です。 急性細菌性前立腺炎は排尿障害に加えて発熱・全身倦怠感などの症状が現れることがあります。慢性細菌性前立腺炎は、発熱の症状がなく、急性細菌前立腺炎と同様の症状が3ヶ月以上続いた状態です。急性細菌性前立腺炎治療が適切に行われないことや、ストレス・過度の疲労が原因となる場合もあります。慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群は排尿障害に加えて、鼠径部や臀部痛・大腿部や臀部のしびれ感など現れる症状はさまざまです。原因は解明されていませんが、長時間の座位の姿勢や長時間の自動車など乗り物の移動などで血流が滞ることが関係するといわれています。主な治療法は急性・慢性細菌性前立腺炎には抗菌薬などの薬物療法を行います。慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群は症状がさまざまです。そのため個々の症状に合わせて、抗炎症薬・抗菌薬・疼痛治療薬などの薬物療法を行います。 残尿感、頻尿などの症状に加えて、発熱・全身倦怠感などの症状があればすみやかに、鼠径部や臀部の痛みやしびれ感などの症状がある場合は、はやめに泌尿器科を受診しましょう。過活動膀胱
過活動膀胱とは、尿意切迫感や頻尿・夜間頻尿などの症状症候群です。膀胱が過敏に活動し、尿が溜まっていないのに膀胱が収縮して、急に尿意をもよおし頻尿になります。また、残尿感を感じる場合もあります。過活動膀胱症状の発症となる原因は、神経因性と非神経因性に分けられますが、まだはっきりと解明されておらず、原因が特定できないことが大半です。 神経因性は、脳血管障害や脊髄疾患などの神経疾患が原因となることが多いです。 非神経因性は、加齢・高血圧・糖尿病・脂質異常症・ストレスなどの生活習慣が発症に影響すると考えられています。 また、女性・男性それぞれ特有の発症原因があるといわれています。女性は、女性ホルモンの低下・骨盤底弛緩や骨盤臓器脱です。男性は、前立腺肥大症などで膀胱の出口部分が閉塞されること、男性ホルモンの低下などです。治療は体重減少・水分制限・カフェインやアルコールの摂取制限などの食事療法や、禁煙・長時間の座位を避ける・下半身を冷やさないなどの生活改善が推奨されています。また、膀胱訓練(トイレをなるべく我慢する)・骨盤底筋訓練などの行動療法、症状に応じて薬物療法を行います。尿意切迫感や頻尿・夜間頻尿などの症状がある場合は、泌尿器科を受診しましょう。前立腺肥大症
前立腺肥大症とは男性の臓器である前立腺が腫大し、膀胱出口部閉塞が起こって尿路症状などが現れた状態です。発症の原因は、加齢による男性ホルモンの減少や遺伝・肥満・高血圧・高血糖・脂質異常症などが関係するといわれています。前立腺肥大症で現れる主な症状は頻尿・残尿感・尿意切迫感などです。前立腺がん検診などでもちいられる血液検査にPSA値がありますが、基準値より高いと前立腺がんの他に、前立腺肥大症や前立腺炎が考えられます。 主な治療法は飲水・食事・生活などの改善や薬物療法・手術療法など個人の病態に合わせて行います。頻尿・残尿感・尿意切迫感などの症状があり、検診などでPSA値が高いと指摘されたら、泌尿器科を受診しましょう。GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)
GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause)とは、閉経関連尿路生殖器症候群とも呼ばれます。加齢に伴いエストロゲンという女性ホルモンの分泌が低下し、膀胱などの尿路が萎縮することなどが原因で、膀胱炎を繰り返したり、過活動膀胱症状・排尿痛・尿失禁などが起こりやすくなるといわれています。GMSは更年期以降に見られる泌尿器系や生殖器に生じる変化によって起こる不快な症状や障害の総称です。 GMSの進行を抑えるセルフケアとして、外陰部のスキンケアや骨盤底トレーニングが効果的であると報告されています。また、女性ホルモンの補充によってGSMの症状が改善する場合もあります。繰り返す膀胱炎や泌尿器・生殖器の不快な症状が継続する場合は、婦人科を受診することをおすすめします。「ムズムズした残尿感」の正しい対処法は?
ムズムズした残尿感が現れる原因はさまざまあります。それぞれの原因によって対処法が異なります。セルフケアをしても症状が改善されない場合は泌尿器科を受診しましょう。早く治したい場合はどうすれば良い?
ムズムズした残尿感の症状を早く落ち着かせたい場合は泌尿器科の受診をおすすめします。原因となる病気がある場合、その病気に応じて適切な治療をすることです。 ムズムズした残尿感で考えられる病気はさまざまあります。自己判断で病気を区別することは難しいです。病気に合った市販薬を選択できるとは限らず、膀胱炎の場合には検査結果に影響を与えてしまう場合があるため、市販薬の使用はおすすめしません。 膀胱炎が考えられる場合には、水分を多く摂り尿を我慢せず排出することが治療につながることが多いです。また、すぐに病院に行けない場合には市販の漢方薬を内服することで症状が軽減することもあります。それでも症状がする場合には、泌尿器科を受診しましょう。生活習慣で改善できることはある?
膀胱炎は体が冷えると症状が強くなる場合があります。体(特に腹部)を温めることがおすすめです。前立腺肥大症は生活習慣病が関連するといわれています。肥満や生活習慣病を予防するために、バランスの良い食事の適量の摂取がおすすめです。また、野菜や大豆製品に含まれるイソフラボノイドやリグナンは前立腺肥大を抑制する効果があるといわれています。睡眠不足やストレスは残尿感悪化の原因になる可能性があります。リラックスできる時間を作るようにして、ストレスの解消や質の良い十分な睡眠を確保しましょう。「ムズムズした残尿感」の症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「ムズムズした残尿感」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
急にムズムズした残尿感があるのですが、何が原因ですか?
伊藤 陽子(医師)
膀胱炎や過活動膀胱など、泌尿器科系の病気である可能性が考えられます。
膀胱がむずむずするのはなぜですか?
伊藤 陽子(医師)
膀胱がムズムズする症状で考えられる原因は、膀胱炎や前立腺肥大・尿道炎など泌尿器系の病気です。膀胱炎は膀胱に細菌が感染して、残尿感や頻尿などの症状が現れて膀胱がムズムズする感覚が生じる場合があります。また、前立腺肥大・尿道炎などでは、残尿・尿の出口の圧迫・尿道の不快感などの症状が現れて膀胱がムズムズと感じられる場合があります。
トイレに行ってもすっきりせず膀胱がムズムズして頻尿気味です。泌尿器科を受診すべきですか?
伊藤 陽子(医師)
膀胱炎や前立腺肥大症などの病気の可能性が考えられます。放置すると、膀胱炎では腎盂腎炎、前立腺肥大症では尿閉などに進行し重症化する場合もあります。症状が続くようなら泌尿器科を受診しましょう。
更年期の女性で残尿感がある場合、市販薬で治療は可能ですか?
伊藤 陽子(医師)
更年期の女性で残尿感がある場合は、GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)の可能性が考えられます。GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)は繰り返す膀胱炎が特徴の一つです。膀胱炎は症状が軽度であれば水分摂取や市販の漢方薬などで軽減することがあります。しかし、症状が強い場合には抗生剤などの治療が必要であるため、泌尿器科を受診しましょう。
男性で尿の出口がむずむずして不快なのは前立腺炎なのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
男性で尿の出口がムズムズして不快な症状は前立腺炎の症状の一つです。ただし、尿道炎や性感染症でも同様の症状が現れる場合があり専門医の診断が必要です。泌尿器科の受診をおすすめします。
まとめ ムズムズする残尿感は泌尿器疾患の可能性があります
ムズムズした残尿感の症状で考えられる病気は泌尿器疾患の可能性があり、過活動膀胱・膀胱炎・前立腺肥大症などさまざまあります。症状が軽い場合はセルフケアで改善する場合もありますが、症状が繰り返し起こったり、重症化する可能性があります。ムズムズした残尿感の症状がある場合は、はやめに泌尿器科を受診することをおすすめします。「残尿感でムズムズする」症状で考えられる病気
「ムズムズする残尿感」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。婦人科系の病気
- GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)




