「皮膚のしこりを押すと痛い」原因をご存知ですか?医師が徹底解説!
皮膚にしこりがあって押すと痛いとき、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・治し方などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
「皮膚のしこりを押すと痛い」症状で考えられる病気と対処法
皮膚にしこりができて、押すと痛みを感じた経験は誰しもあると思います。症状の原因はたくさんありますが、皮膚や皮膚の下にある組織に関連していることが多いです。どんな場合に病院受診を行う必要があるのか解説していきます。
皮膚にしこりがあり押すと痛い症状で考えられる原因と治し方
皮膚にしこりがあり押すと痛い症状には、いろいろな原因があります。頻度の高いものとして、粉瘤(アテロームともいいます)があります。皮膚の下に袋状の構造物ができ、あか(角質)や皮膚の脂(皮脂)が、その袋の中にたまってしまうためにできるものです。粉瘤は赤い場合も、赤くない場合もあります。自分ですぐにできる処置はありません。皮膚科を受診すると、必要に応じて切開して中のものを外に出してくれます。
皮膚に赤いしこりがあり押すと痛い症状で考えられる原因と治し方
皮膚に赤いしこりがあり押すと痛い場合、炎症(化膿)性粉瘤である可能性があります。前述している粉瘤に、細菌が侵入して化膿したものになります。患部は赤く腫れ上がり、痛みを伴います。ひどい場合には膿みがたまった状態(膿瘍)になります。
自分ですぐにできる処置はありませんので、早めに皮膚科を受診していただくことをおすすめします。皮膚科では、症状の程度に応じて、抗生剤治療や切開して中の膿を外に出してくれます。
顔の皮膚のしこりを押すと痛い症状で考えられる原因と治し方
顔の皮膚のしこりを押すと痛い場合は、尋常性ざ瘡(ニキビ)が疑われます。毛穴がつまることが尋常性ざ瘡のもとになりますので、適切に洗顔することや化粧を落とすことが大事です。耳たぶにできることもあります。規則的な生活も大事と言われています。
自然に治ってしまうこともあり緊急性はありませんが、治りが悪い場合や、適切に治療して早く治したい場合には、皮膚科に行くようにしましょう。皮膚科では、程度により、外用薬、内服薬、局所の注射や手術などを検討してくれます。
腕の皮膚のしこりを押すと痛い症状で考えられる原因と治し方
腕の皮膚のしこりを押すと痛い場合は、ガングリオンの可能性が疑われます。手の甲によくできるもので、関節を包んでいる袋の一部が膨らんでできる腫瘤です。自分で対処できることはありません。通常は無症状であり、放置していても大丈夫なこともありますが、神経のそばにできると神経を圧迫して、しびれや痛み、運動麻痺などを起こすことがあります。そのような時は、できるだけ早く整形外科に行くようにしてください。注射針を指して内容物を抜いたり、手術をしたりすることが治療になります。
背中の皮膚のしこりを押すと痛い症状で考えられる原因と治し方
背中の皮膚にあるしこりを押すと痛い場合は、脂肪腫の可能性が疑われます。背部、肩、頸部などによくできるもので、皮膚の下に脂肪細胞が増殖してできた脂肪の塊です。自分で対処できることはありません。
通常は無症状であり、放置していても大丈夫なこともありますが、大きくなると痛みなどを引き起こすケースがあります。そのようなときは、形成外科に行くようにしてください。必要に応じて手術をすることになります。
おしりや陰部の皮膚にしこりがあり押すと痛い症状で考えられる原因と治し方
おしりや陰部の皮膚にしこりがあり押すと痛い場合は、肛門周囲膿瘍の可能性が疑われます。
肛門周囲膿瘍
肛門周囲膿瘍とは、肛門の周りに細菌が入って肛門の周囲が化膿するものです。肛門と腸の境目に下痢便などが入ってしまうことが原因で起こります。肛門周囲膿瘍になると、痛んだり発熱したりします。消化器外科もしくは肛門科に早めに受診するようにしましょう。抗生剤治療、切開や手術をすることになります。
皮膚のしこりを押すとかたいと感じる症状の原因と治し方
しこりが硬い場合には悪性腫瘍や、がんが転移したリンパ節である可能性があるので早めに外科あるいは皮膚科を受診しましょう。診察でこれらの悪性腫瘍が疑われる場合には正確な診断のために生検といって組織を取り顕微鏡で確認する必要があります。膿と異なり、悪性病変の場合には自ら刺したり、潰したりすることで播種する恐れもあるため、硬いしこりを自覚した場合には何も処置をせずに医療機関を受診しましょう。悪性病変であれば専門家に紹介のもと、手術・放射線治療・薬物療法といった集学的な治療が必要となります。
すぐに病院へ行くべき「押すと痛い皮膚のしこり」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
皮膚のしこりを押すと痛みが強く、赤みを伴う症状は皮膚科へ
しこりを押して痛く、赤みを伴っている場合は、何らかの原因で細菌の感染が起きている可能性が高いです。頻度の高いものとしては化膿性粉瘤があり、これは抗生剤や外科治療を行わないと良くならないことが多いです。
しこりの原因はこれまで述べてきたようにいろいろな原因がありますが、皮膚科を受診することで診断をつけてもらい、適切な対処をしてもらいましょう。
皮膚のしこりを押すと痛くてしびれなどの神経症状がある症状は、整形外科・皮膚科へ
しこりによってしびれなどの神経症状を認めている場合には、しこりが神経を圧迫していることがあります。頻度の高いものとしてはガングリオンがあります。神経の症状は早期に対処しなければ長く続いてしまう可能性があるので、早めに整形外科もしくは皮膚科に行くようにしましょう。
「皮膚のしこりを押すと痛い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「皮膚のしこりを押すと痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
粉瘤(アテローム)
粉瘤とは、皮膚の下に袋のようなものができ、そこへ皮脂や角質が溜まり、皮膚がふくらんでしこりとなる病気です。身体のどこにでもできますが、顔、首、背中、耳の後ろなどにできやすい傾向があります。
粉瘤が疑われる場合には、皮膚科の受診をおすすめします。特に化膿して赤みや強い痛みを伴う場合には早めに受診をしてもらうほうが良いでしょう。基本の治療は手術になります。
石灰化上皮腫(せっかいかじょうひしゅ)
石灰化上皮腫とは、皮膚の直下に、石の様に硬く、可動性のあるしこりを触れる病気です。原因は分かっていません。比較的若い人、特に小児の顔、腕、頸などに発生することが多いとされます。無症状なことが多いのですが、かゆみや痛みを感じることもあります。
悪性腫瘍との見分けが難しいこともあります。自然に治ってしまうことはありませんので、皮膚科や形成外科を受診することをおすすめします。飲み薬や塗り薬で改善することはなく、多くは手術を行います。
神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)
神経鞘腫とは、末梢神経の細胞の一つであるシュワン細胞によって構成される腫瘍です。皮下組織や筋肉にしこりができることが多いですが、脳の神経、脊髄の神経など、いろいろなところに生じます。しこりは末梢神経から発生しますので、部分的な痛みがみられることがあります。
脳の神経や脊髄の神経にできる場合には、聴力障害や手足の麻痺などが見られることもあります。良性の腫瘍ですが、自然に消えてしまう可能性はなく、手術が治療になります。できる部位によって受診する科もかわりますが、脳神経外科や皮膚科、形成外科をまずは受診されるとよいでしょう。
ガングリオン
ガングリオンは、関節を包んでいる袋の一部が膨らんでできる腫瘤です。ガングリオンが最もできやすいのは、手の甲側の手首や手のひら親指側の手首です。他にも、膝や足首にもみられることもあります。ほとんどが良性の腫瘤なので放置しても構いませんが、診断をつけるためには整形外科を受診しましょう。
大きくなるもの、痛みが強いもの、神経が圧迫されて症状があるもの(痛みや運動障害など)は治療が必要になります。治療としては、注射針を指して内容物を抜いたり、手術をしたりします。
「皮膚のしこりを押すと痛い」ときにおすすめの対処法や市販塗り薬は?
市販の塗り薬には、抗生物質が含まれたもの、ステロイドが含まれたもの、その2つが合わさっているものが代表的です。しこりが細菌によって化膿している場合、ステロイドを塗ると細菌感染を増悪(悪化)させてしまうことがあります。しこりの原因は多岐に渡るので、まずは皮膚科などを受診して診断をつけてもらうことをおすすめします。
もし市販の外用薬を使用するのであれば、「クロロマイセチン軟膏2%A」などの抗生物質のみの外用をおすすめします。早く治したい場合、痛みが続いている場合は、できるだけ早く皮膚科を受診するようにしましょう。
「皮膚のしこりを押すと痛い」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「皮膚のしこりを押すと痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
皮膚のしこりを押すと痛い症状の予防法を教えてください。
久高 将太医師
不潔な状態が続くと、細菌感染が起こることが多くなります。ご自身でできることは、できるだけ清潔を保っていただくことです。しっかり洗顔することや、体を洗うように心がけましょう。
顎の下に触るとしこりがあって押すと痛いです。皮膚科に行くべきでしょうか?
久高 将太医師
顔にできるしこりは、尋常性ざ瘡(にきび)の頻度が高いですが、他の原因の可能性もあります。治りが悪い場合や、適切に治療して早く治したい場合には、皮膚科に行くようにしましょう。
皮膚の下にしこりがあって、押すと痛いのはニキビでしょうか?
久高 将太医師
ニキビだけとは限りません。ニキビは頻度が高いですが、上で述べたように、色々な原因が考えられます。ニキビであれば自然に治ることが多いですが、そうでなければ医療機関を受診するようにしましょう。
押すと痛いにきびを悪化させずに早く治す方法はありますか?
久高 将太医師
自然に治る場合もありますが、早くきれいに治すためには、皮膚科を受診して治療するのが良いでしょう。
Vラインに、押すと痛く熱っぽいしこりがあります。薬で治りますか?
久高 将太医師
Vラインにできたしこりで、押すと痛く熱っぽい場合には、細菌の感染によるしこりが疑われます。病名としては化膿性粉瘤や肛門周囲膿瘍の可能性があります。これらは外用薬では効果が乏しいことが多く、皮膚科を受診して適切な処置をしてもらうようにしましょう。
皮膚のしこりを押すと痛い症状が、癌に進行することはありますか?
久高 将太医師
可能性は否定できませんが、皮膚のがんは、 痛み、かゆみは通常ありません。しかし、進行にともない潰瘍になることもあるため、痛みを感じることがあります。
皮膚のしこりを押すと痛い症状の場合は何科に行くべきですか?
久高 将太医師
細菌感染症であることが多いです。特に化膿性粉瘤が多いです。切開排膿や抗菌薬治療を要します。また、反応性にリンパ節が腫大していることもあり、鎮痛薬のみで自然に軽快していくこともあります。よってまずは皮膚科を受診し、エコーなどで正確に診断してもらいましょう。
まとめ
皮膚のしこりを押すと痛い症状は、普段の生活のなかでも比較的遭遇することの多い症状だと思います。自然に治る場合もありますが、さまざまな原因がありますので、症状がつらいときや長く続くときは無理せず医師に相談してくださいね。
「皮膚のしこりを押すと痛い」で考えられる病気と特徴
「皮膚のしこりを押すと痛い」から医師が考えられる病気は12個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
整形外科の病気
乳腺外科の病気
脳神経外科の病気
しこりの症状の多くは、皮膚科で診断がつきます。どこに受診するか迷った場合には、まずは皮膚科を受診してもらうのがよいでしょう。
「皮膚のしこりを押すと痛い」と関連のある症状
「皮膚のしこりを押すと痛い」と関連している、似ている症状は15個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
「皮膚のしこりを押すと痛い」他に、これらの症状が見られる際は、「粉瘤」、「化膿性粉瘤」、「尋常性ざ瘡(ニキビ)」、「脂肪腫」、「ガングリオン」、「肛門周囲膿瘍」、「石灰化上皮腫」、「神経鞘腫」などの可能性があります。しこりはできる部位によって、頻度の高い疾患が異なります。しっかり診断をつけるためには、早めに医療機関を受診するようにしましょう。