「熱はないが咳が止まらない」ときの対処法は?考えられる病気を医師が解説!

熱はないが咳が止まらないのを治すには?メディカルドック監修医が対処法や考えられる原因・病気・何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
羽田 裕司(医師)
名古屋市立大学医学部卒業。聖隷三方原病院呼吸器センター外科医長、名古屋市立大学呼吸器外科講師などを歴任し、2019年より現職。肺がんを始めとした呼吸器疾患に対する外科治療だけでなく、肺がんの術前術後の抗がん剤治療など全身化学療法も行う。医学博士。外科学会指導医/専門医、呼吸器外科学会専門医、呼吸器内視鏡学会指導医/専門医、呼吸器学会専門医。
目次 -INDEX-
熱はないが咳が止まらない症状で考えられる病気と対処法
咳は、身体のなかから異物や病原体を外に追い出すための反射です。発熱がなくても咳が止まらないといった症状がある場合は、さまざまな原因が考えらえます。
今回の記事では、熱はないものの咳が止まらない症状をきたしうる病気とその対処法について解説します。
熱はないが咳が止まらない症状の主な原因と対処法
感染後咳嗽(がいそう)、喘息・咳喘息、喉頭アレルギー、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺がん、後鼻漏、胃食道逆流症などが原因となります。
なかなか咳症状が治らない際には、一度内科、あるいは呼吸器内科を受診するようにしましょう。
熱はなく喉に痛みもないが咳が止まらない症状の主な原因と対処法
喉は痛くないのにも関わらず咳が止まらない場合には、後鼻漏や喘息、胃食道逆流症、喫煙、アレルギー、気管支拡張症などが考えられます。高血圧の治療薬のひとつであるACE阻害剤の副作用でも、乾燥した持続的な咳が出ることがあります。
熱はないが夜になると咳が止まらない症状の主な原因と対処法
夜間に咳の症状がひどくなる病気としては、気管支喘息や咳喘息、胸焼けがある場合は逆流性食道炎などが挙げられます。また、百日咳も夜間に症状が悪化するケースが多いです。
さらに、心不全による咳は、横になった体勢では悪化することがあり、夜になると咳症状がひどくなる場合もあります。むくみや息苦しさなども伴っている場合には、循環器内科の受診を検討しましょう。
子どもで熱はないが咳が止まらない症状の主な原因と対処法
子どもで熱がなく咳が止まらない症状がみられる病気としては、喘息や百日咳、マイコプラズマ肺炎などが考えられます。また、特に小児期から思春期までの子どもの場合、心理的な要因によって起こる心因性咳嗽もみられる場合があります。
熱はないが咳が止まらず関連症状がある場合に考えられる病気と対処法
咳に痰がらみや鼻水、声が出ない症状も伴う場合には、以下のような病気が考えられます。
熱はないが咳が止まらず痰がからむ症状の主な原因と対処法
咳が止まらず痰がからむときには、ウイルスなどへの感染やアレルギー、喘息、後鼻漏や喘息、胃食道逆流症などが原因と考えられます。また、喫煙や乾燥によっても咳と痰が出ることもあるでしょう。後鼻漏は、鼻詰まりを感じていなくても、アレルギーや慢性副鼻腔炎によって喉の奥に粘液が垂れ込み、咳と痰が出るものです。
乾燥する季節には、加湿器などで家の空気の湿度を保つようにしましょう。アレルギーの場合には抗ヒスタミン薬が、感染症の場合は抗生物質の使用が有効かもしれません。2週間以上症状が続く場合には、医療機関を受診しましょう。
熱はないが咳が止まらず鼻水が出る症状の主な原因と対処法
長引く風邪や、後鼻漏、花粉症などで起こるアレルギー性鼻炎の可能性があります。また、煙や天候の変化などの環境要因で起こる非アレルギー性鼻炎も考えられます。特定の香りや花粉などが症状を引き起こすきっかけになっているようであれば、それらを避けるようにしましょう。市販の鼻うがいセットなどが症状を和らげることに役立つ場合もありますが、1週間以上の使用は避けましょう。症状が続く場合や、悪化するような場合には、呼吸器内科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。
熱はないが咳が止まらず声が出ない症状の主な原因と対処法
咳に加えて声が出ない状態になった場合は、のど(喉頭)に炎症が及んでいるケースも考えられます。また、胃食道逆流によって胃の内容物が食道を超え、喉や鼻などの耳鼻咽喉科領域、呼吸器領域にも影響が現れるLPRD(咽喉頭逆流症)も考えられます。まずは、声を休め、水分補給をしっかりと行いましょう。
まれではありますが、頑固な咳や声が出ない場合、喉のがんや肺がんが原因であることもあります。咳が続き、声が出なくなってしまった場合には、一度呼吸器内科や耳鼻咽喉科の受診を検討しましょう。
熱はないが咳が止まらず下痢になる症状の主な原因と対処法
ウイルス感染の一部では、呼吸器症状と胃腸症状の両方を引き起こすことも考えられます。例えば、インフルエンザウイルス感染症は、発熱はみられないものの咳や嘔吐、下痢が現れる場合もあります。特に、消化器症状は大人よりも子どもに多くみられやすいです。
すぐに病院へ行くべき「熱はないが咳が止まらない」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
熱はないが咳が止まらずず呼吸が苦しい場合は、呼吸器内科へ
咳がひどい、あるいは悪化し、呼吸が苦しい場合は、早急に呼吸器内科を受診しましょう。特に、顔色の悪化などがみられる場合は、十分に酸素が身体に行き渡っていない状態も想定されます。場合によっては救急車を呼ぶこともためらわないようにしましょう。
病院受診の目安となる「熱はないが咳が止まらない」症状のセルフチェック法
・咳が悪化する場合
・咳が2週間以上続く場合
・血痰がある場合
・動いた時の息苦しさや動悸もある場合
「熱はないが咳が止まらない」症状が特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「熱はないが咳が止まらない」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
感染後咳嗽
感染後咳嗽は、ウイルスまたは細菌による風邪症候群の後あるいは気道感染後、3週間以上続き、自然に治る傾向がある咳です。乾いた咳が、就寝前から夜間、朝にかけてみられやすいという特徴があります。治療は、咳止め薬や気管支拡張薬が中心となります。
風邪症候群、つまり急性上気道炎になり、咳以外の症状が治ったにも関わ らず咳が長引く場合、一度内科や呼吸器内科を受診するとよいでしょう。
百日咳
百日咳は、百日咳菌の感染により、激しい咳発作がみられる急性の気道感染症です。小さな子どもに多くみられます。特に乳児では重症になり、肺炎や脳症にもなってしまうケースもあります。生後6ヶ月以上の場合は、抗菌薬による治療も検討されます。咳症状がひどい際には、咳止め薬などが処方されることもあります。
まるでけいれんをするような激しい咳が出るような場合は、年齢に応じて小児科や呼吸器内科を受診しましょう。
マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマという細菌の感染により起こります。子どもや若い方に起こる肺炎の原因として多くみられます。発熱や全身のだるさ、頭痛、咳などがみられ、咳は解熱後も3〜4週間ほど続く場合もあります。気管支炎など軽い症状で済む場合が多いですが、肺炎になる、重症化する、あるいは中耳炎や胸膜炎・心膜炎・髄膜炎などの合併症になる症例もあります。治療としては、マクロライド系の抗菌薬が検討されます。
急性気管支炎
風邪症候群で、上気道に生じた炎症が、気管から気管支に及ぶことで発症する場合が多いです。ウイルスや肺炎マイコプラズマなどが原因となります。咳や痰がみられ、発熱があることも多いですが軽症であるケースが大半です。細菌感染が起こると、痰が増加し、膿のような見た目になります。
多くの場合は、安静や水分栄養の補給などで症状が落ち着くのを待ちます。細菌感染が疑われるケースでは、抗菌薬も使用します。
咳喘息・気管支喘息
気管支喘息は、空気の通り道である気道に炎症が生じ、気道が敏感になるために、気道が狭くなる発作を繰り返す病気です。発作的にゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)を伴う咳が出て、息苦しくなるといった症状が典型的です。
一方、咳喘息はこうした喘鳴や呼吸困難を伴わず、呼吸機能はほぼ正常、気管支拡張薬が有効な病気です。日本では、咳喘息は長引く咳の原因として半数以上を占める原因という調査結果もあります[裕羽8] 。
気管支喘息や咳喘息の治療の中心は、吸入ステロイド薬です。発作時には、短時間作用性β2刺激薬の吸入を行います。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)は、タバコの煙をはじめとする有害物質を長年吸い込むことなどで、息切れ、せき、たんなどの症状を起こします。長年喫煙をしてきた方で、咳が止まらない、風邪が長引く、歩く時などに息切れがみられるというような場合は、呼吸器内科を受診しましょう。
「熱はないが咳が止まらない」ときの正しい対処法は?
熱がないものの咳が止まらない場合、ご自身でできるケアと、気をつけたい症状について解説します。
つらい咳を止めたい・早く落ち着かせたいときは
咳を早く止めたい場合には、加湿と水分摂取に努めるようにしましょう。ほこりやダニなどのアレルゲンと考えられるものはできるだけ除去しましょう。タバコを吸っている方は、禁煙しましょう。
症状を和らげたいというような場合、市販薬の咳止めシロップや咳止め薬などは効果があるかもしれません。しかし、あくまで対症療法です。2週間以上咳が続く場合には、一度内科や呼吸器内科を受診しましょう。
咳の症状が出ているときに気を付けることは
咳症状に血痰や体重減少、胸痛、息切れ、過度な疲労などが伴う場合には、肺がんなどの悪性腫瘍や、心不全などの循環器疾患などの可能性もあります。内科を受診しましょう。
「熱はないが咳が止まらない」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「熱はないが咳が止まらない」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
熱がないのに咳だけが続く原因は何でしょうか?
羽田 裕司(医師)
感染後咳嗽や咳喘息、後鼻漏などが原因として挙げられます。
咳の症状が何日続いたら受診した方が良いでしょうか?
羽田 裕司(医師)
咳症状が2週間以上続く場合には、一度医療機関を受診しましょう。
大人が平熱で空咳が止まらないのはマイコプラズマ肺炎なのでしょうか?
羽田 裕司(医師)
その可能性はあります。周囲にマイコプラズマ肺炎が流行しているような場合、より疑わしい状況と考えられます。
風邪を引いた後に咳だけが続くときは何科を受診すべきでしょうか?
羽田 裕司(医師)
大人の場合は呼吸器内科、子どもの場合は小児科を受診するとよいでしょう。
まとめ 熱はないが咳が止まらないときはいろいろな原因が考えられる
熱がなくても咳が長引く場合、 感染後咳嗽や咳喘息、逆流性食道炎など多くの原因が考えられます。自宅でできる対処法で症状が軽くなることもありますが、 2週間以上続く、夜間に悪化する、息苦しさを伴うような場合は早めに医療機関を受診しましょう。
「熱はないが咳が止まらない」症状で考えられる病気
「熱はないが咳が止まらない」症状で医師が考えられる病気は15個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
耳鼻科系の病気
- 後鼻漏
- 副鼻腔炎
- LPRD(咽喉頭逆流症)
消化器内科系の病気
内科系の病気
- 心因性咳嗽
咳の多くは自然に改善しますが、長引く場合には一度受診すると安心です。
「熱はないが咳が止まらない」に似ている症状・関連する症状
「熱はないが咳が止まらない」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
熱がないが咳が止まらない症状に加えてこれらの症状があり、なかなか治らない場合には医療機関の受診を検討しましょう。