「手のしびれ」の原因はご存知ですか?医師が治し方も解説!
手がしびれる時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
柏木 悠吾 医師
「手のしびれ」で考えられる病気と対処法
手のしびれがある場合、考えられる疾患は多数あります。しびれる範囲や発症状況などで何が起こっているか概ね予想できることが多く、この記事が実際に病院を受診すべきかの一助になれば幸いです。しびれと言っても個人により感じ方が異なり、ビリビリと電気が走ったような感じ方であれば、ズーンと重たく痛いような感じ方の場合などさまざまであり、手にいつもと違う異常感覚があればぜひご一読ください。
左手だけ・右手だけなど片側の手がしびれる症状の原因と治し方
片方の手のみしびれがあり、もう片方には無症状の場合を指します。この場合には頚椎症性神経根症が考えられます。頚椎症とは、加齢性に頚椎の骨が変形したり(変形性頚椎症)、クッションの役目を果たしている椎間板という組織が変性し膨隆したりする状態(頚椎椎間板ヘルニア)です。神経根とは、脊髄から分かれて手の方に分布する神経の枝です。頚椎症が原因で、変形した骨や椎間板が神経根を圧迫すると、手に痺れが走り、頚椎症性神経根症と呼ばれます。片方の神経根のみ圧迫されることが多く、片手のみの症状となります。主な診療科は整形外科です。レントゲンやMRIでの診断となります。治療は、疼痛の程度が強かったり、麻痺があったり、日常生活への支障があったりすると手術も選択肢になります。もちろん自然に軽快することも多くみられます。症状が続く場合には整形外科を受診してください。
手指・指先がしびれる症状の原因と治し方
手指が痺れる場合には痺れの範囲に注目すると、ある程度疾患を推測できます。
手指、手のひら、手の甲を走行する神経は主に3つあります。
橈骨神経(とうこつしんけい)、正中神経(せいちゅうしんけい)、尺骨神経(しゃっこつしんけい)です。
橈骨神経が障害されると、橈骨神経麻痺を起こし、主に親指、人差し指、中指側の手の甲がしびれ、手首を手の甲側に曲げにくくなります。原因は外傷や骨折による神経損傷の場合が多いです。
正中神経が障害されると、手根管症候群という病態が考えられ、主に親指、人差し指、中指と手のひらがしびれます。
尺骨神経が障害されると、肘部管症候群やギヨン管症候群が考えられ、主に、薬指、小指全体と、小指側の手のひらと手の甲がしびれます。
主な診療科は整形外科です。手根管症候群、肘部管症候群、ギヨン管症候群は物理的に神経の通り道が狭くなっていることが原因ですので、改善がない場合は手術加療にて圧迫を解除してあげる必要があります。症状が改善しない場合は、神経圧迫がすすみ麻痺が完成してしまい、筋委縮や手指の細かい動きができなくなることがあります。神経電動速度検査とうい電気を使った検査で診断できますので、疑わしい場合や長引く場合は整形外科に相談しましょう。
手足がしびれる症状の原因と治し方
頚椎症性神経根症は頚椎症が原因で神経根が圧迫される病態で、片方の手に症状が多い疾患でした。神経根ではなく、頚椎症が原因で脊髄自体が圧迫されストレスを受けると、頚椎症性脊髄症(けいついしょうせい せきずいしょう)と呼ばれ、両手足にしびれを認めます。手足のしびれのみならず、手指の細かい作業がしづらくなったり、歩行がしづらくなったりします。レントゲンやMRIで診断します。治療は、神経根症と同様に強い疼痛やしびれ、麻痺、日常生活への支障などを総合的に判断し手術加療が適しているか判断します。神経痛に効く内服での保存療法もあります。強い圧迫があれば脊髄損傷を起こし、手足が動かなくなる場合や呼吸困難となる場合もあるので、症状が強ければ整形外科への受診を検討しましょう。
すぐに病院へ行くべき「手のしびれ」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
片方の手足のしびれがある場合は、脳神経内科へ
片方の手のしびれは頚椎症性神経根症の可能性、両方の手足のしびれは頚椎症性脊髄症の可能性を説明しました。
一方、同じ側の片方の手足にしびれがみられる場合は、要注意です。頭の中の病変(脳腫瘍や脳血管障害)の可能性が考えられます。
脳血管障害とは、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などを指し、脳卒中と呼ばれます。急に同じ側の片方の手足の痺れや、頭痛、嘔気・嘔吐、呂律不良など様々な症状が現れます。酷いものは意識障害や痙攣、麻痺などに繋がります。主な診療科は脳神経内科です。
このような症状があり、脳腫瘍や脳血管障害の疑いがある場合、緊急性があります。自宅で様子をみることによって、治療が遅れ、後遺症が残る可能性もあります。血圧の変動に注意する必要があるため救急車を要請しても良い疾患でしょう。
高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙などの基礎疾患があると、脳卒中リスクが高いと言われています。どれも日頃は症状がなく危機感にかけてしまいますが、急に脳血管障害が発生しますので、怖い病気です。日ごろから生活習慣の改善に努め、健康を維持しましょう。
受診・予防の目安となる「手のしびれ」のセルフチェック法
- ・手の甲がしびれる場合
- ・手のひらがしびれる場合
- ・手の甲がしびれ、手首を手の甲側に曲げにくくなる場合
- ・主に親指、人差し指、中指の手のひらがしびれる場合
- ・主に薬指と小指全体、小指側の手のひらと手の甲がしびれる場合
- ・手全体が手袋をつけたような鈍い感覚、しびれがある場合
- ・片方の腕や手がしびれる場合
- ・両方の手足がしびれる場合
- ・同じ側の片方の手足がしびれる場合
「手のしびれ」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「手のしびれ」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
脳卒中
脳卒中とは、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血を一括りにした言葉です。生活習慣病(高血圧、高脂血症、糖尿病など)がもともとある方は要注意です。症状が突然出現し、酷いものは意識が消失したり、麻痺が出たりするため自分で救急車を要請することもできません。発症からの経過時間で治療法や後遺症が変わってくる可能性があり緊急性があります。同じ側の片方の手足の脱力、痺れ、ものが二重に見える、頭痛、嘔気・嘔吐、呂律不良など様々な症状が特徴です。
脳梗塞は、脳の血管の一部がつまり、血流がなくなった脳細胞が壊死することにより症状が出現します。
脳出血は、脳の血管が破れて脳内に出血をきたして症状が出現します。出血量によっては手術が必要になります
クモ膜下出血は、脳出血とは違い脳の中での出血ではありません。クモ膜(脳を覆う膜)と脳との間の空間に出血し発症します。突然バットで殴られたような激しい頭痛が特徴的です。
疑わしい場合は、救急車を要請して脳神経内科や脳神経外科のある病院へ受診してください。
糖尿病
生活習慣の乱れにより、血糖が慢性的に高くなってしまう状態を糖尿病と呼びます。
糖尿病の初期には、はっきりとした症状はありませんが、持続し悪化すると合併症が起こります。腎不全となり手足が浮腫んでしまったり、網膜症となり失明したりする怖い合併症です。また神経障害も起こり、手足のしびれを自覚します。手袋や靴下を履いたような感覚の鈍さを訴えられる方が多く、左右対称性に異常感覚を認めます。採血検査にて診断します。生活習慣の是正と内服による治し方が基本ですが、病態によりインスリン注射や入院加療が必要な場合があります。健康診断で高血糖を指摘された方は、症状がないからとあまくみずに糖尿病内科での早めの治療をお勧めします。また遺伝も関係しているため、家系に糖尿病の方がいる際は、日頃からの生活習慣に気をつけましょう。
手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん )
前述の通り、手根管症候群とは正中神経という神経が障害された状態です。正中神経は、主に親指、人差し指、中指と薬指の内側までの感覚と関係しています。手首には手根管というトンネル状の管があり、正中神経はその中を走っています。何らかの原因で手根管内の圧力が上がり正中神経が圧迫されると、親指、人差し指、中指と薬指の内側までの手のひらがしびれます。原因は不明なものが多いのですが、妊娠中や更年期の女性、透析患者などに多いと言われています。腱鞘炎や手の使い過ぎにも起因します。診察にて疑わしければ電気を用いた神経電動速度という検査にて診断します。治療は局所の安静加療や内服、塗布剤などの加療の場合もあれば、手根管を切離し正中神経の圧迫を解除する手術加療の場合もあります。放置すると、親指の根元の母指球筋という筋肉が萎縮し細かな手作業が難しくなります。痺れの分布で疑わしい時は整形外科を受診して検査を受けましょう。
「手がしびれる」ときに気をつけたい日常動作と対処法は?
手が痺れる時は、上記に記載のセルフチェック法のように、痺れの場所と範囲である程度推測できることが多いです。神経が圧迫されている病態(手根管症候群や肘部管症候群)が長く続くと、自分で治すことはできず親指の根元の筋肉(母指球筋)や指の間の筋肉(骨幹筋)が萎縮してしまい、手術にて圧迫を解除しても筋力を戻すことは容易ではありません。筋萎縮が始まる前に加療が必要です。
また、頚椎症性脊髄症に関しては、頭を後ろに倒す(頚椎を後屈する)とさらに神経狭窄が悪化し、脊髄損傷につながることがあります。脊髄損傷を起こすと、手足の麻痺はもちろん、自分で呼吸ができなくなる場合もあり寝たきりとなる可能性があります。首を後屈して両手足に痺れがある場合は、整形外科受診し狭窄具合を検査することをお勧めします。
「手のしびれ」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「手のしびれ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
手のしびれや指先のしびれは自然と治るのでしょうか?
柏木 悠吾 医師
手の使いすぎで手根管症候群などを起こす場合もあるので、安静にするだけで自然軽快する場合があります。
手の指先に痺れを感じるのは何科の病院で治療できますか?
柏木 悠吾 医師
指先のみのしびれであれば、整形外科や神経内科が妥当と思われます。手袋のような鈍い感覚があれば糖尿病科が良いでしょう。
手のしびれが気になるのですが、病気の前兆でしょうか?
柏木 悠吾 医師
一時的なしびれならば経過を見て良いですが、続く際は思わぬ疾患が隠れている場合があります。病気の前兆かもしれませんので受診をご検討下さい。
糖尿病と手がしびれには関係がありますか?
柏木 悠吾 医師
関係があります。糖尿病は神経障害を起こす可能性があり、手袋や靴下を履いた感覚と似た異常感覚が有名です。
朝起きると手がしびれることが多いのですがなぜでしょうか?
柏木 悠吾 医師
寝ている状態は頚椎の並びが起きている時と変化するため頚椎症由来の神経痛かもしれません。
まとめ
手のしびれの中には、脳内での疾患も含まれており注意が必要です。また、神経が原因である疼痛が多いため、放置すると麻痺に繋がり手の機能が失われる可能性があります。痺れの範囲と場所である程度推測できるため、セルフチェックリストを参照してもらい、適切な科への受診を検討しましょう。
「手のしびれ」で考えられる病気と特徴
「手のしびれ」から医師が考えられる病気は15個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
糖尿病内分泌科の病気
首や腕などが原因でしびれることは多いのですが、なかには脳疾患も含まれており注意が必要です。
「手のしびれ」と関連のある症状
「手のしびれ」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「手のしびれ」の他に、これらの症状が見られる際は、「手根管症候群」「脳梗塞」「糖尿病」「肘部管症候群」などの疾患の可能性が考えられます。急に手のしびれ症状が出現した場合は、早めに医療機関へ受診しましょう。