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「肘部管症候群」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/04/21
「肘部管症候群」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

肘部管症候群とは、肘にある尺骨神経が傷つくなどで小指や薬指付近が痺れるなどの症状が現れる病気です。

症状が悪化すると、箸が持ちにくくなったりと日常生活に与える影響も大きいでしょう。そのため、軽度のうちに早期治療を行うことが大切です。

そこで、本記事では肘部管症候群の症状と原因を解説します。肘部管症候群の検査・診断方法・治療方法・予防についてもご紹介するので、早期発見と早期治療に役立ててください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

肘部管症候群の症状と原因

女性の肘

肘部管症候群の主な症状を知りたいです。

肘部管症候群の主な症状としては、次のようなものが挙げられます。

  • 痺れ
  • 不快感
  • 痛み
  • 手の筋肉が痩せる

初期に現れる症状としては、肘の内側から小指や薬指にかけての痺れ不快感が挙げられます。
肘を曲げた状態にしていると、痺れが強くなるといったように感じる方が多いです。読書の際やスマホを使用する際などで痺れや不快感を覚え、痛みを感じることもあります。また、症状が進行すると前腕の小指側や手の筋肉が痩せるなどの症状が現れるケースもあります。
筋肉が痩せてくると、小指や薬指を思うように閉じたり開いたりできなくなるため、日常生活における作業に支障をきたす可能性が高いです。握力の低下が発生し、見た目にも手の甲の骨が浮き出たようになります。

発症には性別や年齢は関係ないのでしょうか。

この病気の発症は、一般的には40〜60歳の女性に多いといわれており男女比は約7:3です。しかし、若年層でも発症する場合があります。20歳以下の方でも、過去に骨折したことのある方が発症した症例やスポーツ障害として発症した症例があるのです。
男性よりも女性に多い理由としては、神経と手を曲げる腱が通っている手根管が、男性に比べて狭いためだと考えられています。また、利き手側で発症する傾向が多いです。

肘部管症候群の原因はなんですか?

この病気は、尺骨神経が慢性的に刺激を受けているために引き起こされます。腕の内側には、肘部管と呼ばれるトンネルのようなものがあり、その中に尺骨神経が通っています。
しかし、このトンネル内は非常に狭い構造のため、腕を圧迫したり引き延ばしたりすると簡単に神経麻痺を引き起こしてしまうのです。また、皮膚のすぐ下に神経が通っているため、比較的圧迫を受けやすい構造にもなっています。
そして、肘部管が圧迫される要因としては、次のようなものが考えられます。

  • 加齢の影響
  • 靭帯の肥厚
  • 子供の頃の怪我
  • スポーツ障害

要因の1つが、加齢の影響です。年齢を重ねると、骨が変形して棘のように隆起することがあります。すると肘部管を圧迫して神経を刺激し麻痺などを引き起こします。
また、靭帯の肥厚も大きな原因です。理由ははっきりとは分かってはいませんが、何らかの理由で靭帯が厚くなってしまい神経を圧迫するケースがあるのです。その他にもガングリオンと呼ばれる良性の腫瘍によって圧迫されることでも肘部管症候群を発症する可能性があります。
さらに、子供の頃の骨折や脱臼などの怪我によって肘が変形してしまい、神経が引き延ばされることでも症状が現れることがあります。若い方で肘部管症候群を発症する方の多くは、幼い頃の怪我が関与している傾向です。
スポーツ障害も若い方が肘部管症候群を発症する要因の1つです。テニスや野球などで肘に負担がかかって、麻痺や痛みを発症する場合があります。

肘部管症候群の検査・セルフチェック方法

腕組みをする医者

何科を受診すればいいですか?

この病気が疑われる場合には整形外科や手外科などを受診しましょう。整形外科では、外科的な考えに基づいて診断してくれます。筋肉や神経などを専門的に扱っているので、神経の圧迫による痺れと痛みの相談や治療を行ってくれるでしょう。
また、手外科は手の疾患や障害に関して専門的に扱う診療科目です。指や手の様々な症状を診てもらえるため、近くに手外科がある場合は受診しても良いでしょう。

肘部管症候群の検査方法を知りたいです。

肘部管症候群の検査方法としては、次のようなものが挙げられます。

  • 神経学的検査
  • 画像検査

検査方法の1つが神経学的検査です。感覚の有無や手の運動能力がどの程度あるかを確認する検査方法です。また、皮膚から神経に直接電気的な刺激を与えて、筋肉の反応を確認する神経伝達速度検査なども行います。
その他には、画像検査も有効な方法です。レントゲン検査やMRI検査などで肘の変形の状態や圧迫部位の確認を行います。

どんな検査が行われるのですか?

この病気の検査方法としては、神経学的検査と画像検査が行われるとご紹介しました。その中でも手の運動能力や感覚の有無を確認するための検査方法には、次のようなものが挙げられます。

  • ティネル様徴候
  • フロマン徴候

ティネル様徴候とは、肘の内側を叩いて指への痺れの発生具合を確認する方法です。圧迫している部分がどのあたりなのかを知る上で役立ちます。
次に、フロマン徴候とは手の筋力の低下が発生しているかを確認する方法です。患者様に、紙を親指と人差し指で挟むようにして持ってもらい、医師がその紙を引っ張ります。
この時、親指を曲げないと紙を押さえられない場合は、手の筋力低下が起きていると考えられます。このような検査でも肘部管症候群の症状確認を行えるのです。

セルフチェック方法があれば知りたいです。

セルフチェックの方法としては、ご自分で腕を軽く叩く方法があります。
肘の内側にある骨の出っ張りを軽く叩いてみましょう。すると小指や薬指などに痺れを感じることがあります。痺れを感じた場合には、肘部管症候群の可能性が考えられるでしょう。
また、先述した検査方法の1つであるフロマン徴候はご自分でも実施できます。薄い紙の両端を両手の人差し指と親指で、指を伸ばした状態でつまんでみましょう。そして、両側に引っ張った時に、無意識に親指を曲げてしまっている場合には肘部管症候群の可能性が考えられます。また、紙が抜けてしまう場合にも、この病気の疑いがあるため早めに専門の医療機関の受診をおすすめします。

肘部管症候群の治療方法と予防

手首を掴む

肘部管症候群の治療方法を教えてください。

この病気の治療方法は、次の通りです。

  • 安静
  • 薬物療法
  • 注射療法
  • 手術

治療方法の1つが、安静にすることです。軽度の症状の場合や進行が初期の場合には、安静にして肘に負担がかかるような作業や動作を控えるようにします。これによって神経の回復を促します。
また、同時にビタミンB12剤の内服や末梢神経障害性疼痛改善薬などで炎症を落ち着かせる薬物療法を実施するのも有効です。痺れや神経性の痛みを改善できるでしょう。注射療法は、神経の位置を確認後にステロイドなどの炎症を抑える効果が期待できる薬を投与する方法です。
しかし、安静・薬物療法・注射療法では回復が見込めない場合もあります。そのままにしておくと、動作に大きく影響する程の痺れの悪化や筋力の低下を引き起こすため手術が必要です。手術では、神経を圧迫する原因を取り除く内容となります。
例えば、靭帯の肥厚による圧迫の場合は腫瘍を摘出し、骨の変形による圧迫であれば骨の出っ張りなどを切り離します。なお、手術を行った場合には、神経が回復するまで少し時間がかかる可能性が高いです。回復の期間は、手術前の症状の度合いによっても異なります。

事前に予防する方法はありますか?

肘部管症候群を予防するためには、肘を強く曲げるような動作をできるだけ避け、正しい姿勢で肘を使いましょう。普段の生活の中で、無意識に強く肘を曲げてしまうことでこの病気を発症する可能性があります。
また一度治ったとしても、肘に負担がかかり続けると、再発を繰り返す恐れもあります。再発を繰り返さないためにも、姿勢を正して肘に負担をかけない動きを意識して取り組むことが大切です。就寝中などで無意識に肘を曲げてしまいそうな時には、サポーターによる固定やタオルを巻く方法も予防につながります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

肘部管症候群は、高齢の方が発症しやすく、小指や薬指における痺れや痛みを感じる病気です。
軽度なものであれば、少しの痺れや違和感を覚える程度であるため放置する方もいますが、悪化すると手の動作にも悪影響を与えます。そのため、少しでも違和感を覚えた場合には、早めに専門の医療機関の受診をおすすめします。
早期治療ができれば、手術を伴わずに改善することも不可能ではありません。

編集部まとめ

医師
肘部管症候群は、腕を通る尺骨神経が刺激を受けることで、痺れや痛みを感じる病気です。

加齢によって骨の変形や靭帯の肥厚が生じるために、神経を圧迫してこのような症状が現れます。しかし、稀ではありますが若い方でも発症するケースはあります。

万が一の発症に備えて、正しい治療方法や原因などを把握しておきましょう。また、少しでも違和感を覚えた際には、早めに専門の医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。

この記事の監修医師