「変形性頚椎症」になりやすい人はご存知ですか?進行すると現れる症状も解説!
公開日:2025/10/10

首や肩の痛み、腕のしびれといった症状に悩まされている方のなかには、変形性頚椎症と診断されるケースがあります。加齢に伴って起こる頚椎(けいつい)の変化が主な原因で、40代以降の方にみられる疾患です。進行すると日常生活に支障をきたすこともあるため、早期の理解と対処が大切です。
本記事では、変形性頚椎症の原因や症状、診断の方法、治療の選択肢を詳しく解説します。症状が気になる方や、ご家族が診断を受けたという方も、病気の正しい知識を得ることで、ご自身やご家族の今後の備えに役立ちます。

監修医師:
林 良典(医師)
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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
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脳神経内科
眼科(角膜外来)
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目次 -INDEX-
変形性頚椎症の概要と原因

変形性頚椎症はどのような病気ですか?
変形性頚椎症は、加齢や長年の負荷により頚椎が変形し、神経根や脊髄が圧迫されて、首の痛みや肩こり、手足のしびれ、脱力などを引き起こす病気です。頚椎は7つの骨から成り、椎間板や関節、靭帯で連結されていますが、年齢を重ねることで椎間板の弾力が失われて薄くなり、骨にとげ状の変化(骨棘)が生じるようになります。これらの変化により、脊柱管や椎間孔といった神経の通り道が狭くなり、神経を圧迫して多様な症状が現れます。
変形性頚椎症の原因を教えてください
変形性頚椎症の主な原因は、加齢により首の骨や関節、椎間板がすり減り、徐々に変形していくことです。年齢とともに椎間板の水分が失われて弾力がなくなると、骨や関節に直接負担がかかりやすくなります。その結果、骨のとげ(骨棘)ができたり、関節の形が変わったりして、神経の通り道が狭くなってしまいます。さらに、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用など、現代的な生活習慣も、首への負担を増やす原因になります。こうした変化が積み重なることで、変形性頚椎症が発症しやすくなります。
変形性頚椎症はどのような人がなりやすいですか?
加齢は大きなリスク因子であり、特に50歳以降の中高年層に多くみられます。性別を問わず発症し、男性では肉体労働や重量物を扱う業務に従事している方、女性ではデスクワークや介護など首への負荷が続く方が発症しやすい傾向があります。また、姿勢の悪さ、運動不足、過去の首の外傷、慢性的な首の緊張やこりがある方は、頚椎の変性が早く進行しやすくなります。さらに、家族に頚椎や腰椎の変性疾患を持つ方がいる場合は、遺伝的な要素も影響していると考えられています。
変形性頚椎症の症状

変形性頚椎症には前兆はありますか?
変形性頚椎症の初期には、はっきりとした症状が出ないこともありますが、軽い違和感や首のこり、朝起きたときの首の動かしづらさなどが前兆として現れることがあります。日常生活で特に思い当たる原因がなく、なんとなく首の後ろや肩のハリを感じるようになった場合には、頚椎の変性が進行している可能性もあります。また、長時間同じ姿勢をとると首の痛みが強くなる、腕が疲れやすいなどの感覚も、進行前のサインとして注意が必要です。
変形性頚椎症の症状を教えてください
症状は神経の圧迫部位によって異なりますが、代表的なものには首や肩の痛み、肩甲骨まわりのハリ、腕や手のしびれ、指先の細かい動作がしづらいといったものがあります。ときには筋力の低下や、物を落としやすくなる、箸を使いにくいといった手の不器用さが目立つこともあります。足のもつれや歩行のふらつきが出ることもあり、これは脊髄そのものが圧迫されている頚髄症と呼ばれる状態に進行している可能性があります。また、症状は左右どちらか一方に現れることもあれば、両側に出ることもあります。
変形性頚椎症は進行するとどうなりますか?
変形性頚椎症が進行すると、首や肩の痛みだけでなく、手足のしびれや脱力が強くなり、日常生活に支障をきたすようになります。脊髄が圧迫されると、足の動きにも影響が出て歩行困難となったり、階段の昇降やつまずきやすさが目立つようになったりします。また、進行例では膀胱や直腸の機能が障害され、頻尿や尿漏れなどの排尿障害を生じることもあります。このような状態では、保存的治療では改善が難しくなり、手術が必要となることもあります。日常動作のなかで不便を感じることが増えた場合には、早めに医療機関を受診することがすすめられます。
変形性頚椎症の診断と治療

変形性頚椎症が疑われる場合はどのような検査が行われますか?
まず行われるのは問診と診察です。症状の出方や持続時間、日常生活への支障などを詳しく確認し、首の動きや腕・手・足の筋力、しびれの有無、腱反射といった神経学的所見を調べます。そのうえで、画像検査として最初に実施されるのはX線(レントゲン)撮影です。骨の変形や椎間板の狭小化、骨棘の形成の有無がわかります。さらに神経の圧迫状況を詳細に評価するためにはMRIが有効で、脊髄や神経根の圧迫状態を確認できます。神経伝導検査やCTが行われることもあり、総合的な判断で診断されます。
変形性頚椎症の治療法を教えてください
治療は症状の程度や生活への支障の度合いに応じて選ばれます。まずは保存的治療が基本となり、痛みの緩和や神経症状の改善を目指します。薬物療法としては、消炎鎮痛薬(NSAIDs)、筋弛緩薬、神経障害性疼痛に対応した薬(プレガバリンなど)が用いられます。理学療法では、首周囲の筋肉をやわらげる温熱療法やストレッチ、リハビリが行われます。生活指導として、姿勢の見直しや枕の高さの調整なども取り入れられます。
変形性頚椎症で手術が行われるのはどのようなときですか?
保存的治療を行っても症状が改善しない場合や、神経圧迫によって日常生活に大きな支障がある場合、または歩行困難・排尿障害などの脊髄症状が出ている場合には、手術が検討されます。手術の目的は、神経や脊髄への圧迫を取り除き、進行を食い止めることです。代表的な術式には椎弓形成術や前方除圧固定術などがあり、症状や圧迫の部位に応じて方法が選ばれます。手術の適応やリスクについては、脳神経外科や整形外科の専門医と十分に相談することが大切です。
変形性頚椎症は保存的療法や手術療法で完治しますか?
保存的療法で症状が改善・安定する方は多く、痛みやしびれがほとんど気にならなくなることもありますが、構造的な変形そのものをもとに戻すことは困難です。一方、手術療法では神経の圧迫を解除することで、しびれや筋力低下、歩行障害などの改善が期待されますが、すでに進行してしまった神経のダメージは完全には回復しないこともあります。
編集部まとめ

変形性頚椎症は、年齢とともに首の骨や関節がすり減って起こる病気です。首の痛みや肩こりから始まり、手足のしびれや力が入りにくくなることもあります。進行すると歩きにくくなったり、日常生活に支障が出たりすることもあります。
診断には、問診や診察に加えて、レントゲンやMRIなどの検査が使われます。治療は、薬やリハビリ、姿勢の工夫などで症状をやわらげる方法が中心です。重い症状があるときは手術が必要になることもあります。
この病気は、完全に治すことがむずかしい場合もありますが、早めに気付いて対処することで、悪化を防ぎやすくなります。首や肩のこり、手のしびれなどが続くときは、早めに医療機関を受診することをおすすめします。