「下腹部の鈍痛が続く」原因はご存知ですか?男女別に医師が徹底解説!


監修医師:
伊藤 陽子(医師)
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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
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「下腹部の鈍痛が続く」原因と対処法
下腹部に鈍痛が続く場合、どのような原因が考えられるでしょうか?下腹部には、膀胱や大腸、女性であれば子宮や卵巣、男性であれば前立腺や精巣などの臓器があります。今回の記事では、下腹部に鈍痛が続く場合の原因について解説していきます。【男性】下腹部の鈍痛が続く原因と対処法
男性で下腹部痛がある場合、尿道痛や排尿痛などを伴う場合尿道炎の可能性があります。また、精液に血が混ざるなどの症状がある場合は、前立腺炎も考えられます。 また、男性特有ではないですが、虫垂炎や大腸憩室炎で下腹部の痛みが続くこともあります。男性では少ないですが、膀胱炎で痛みが続くこともあり注意が必要です。【女性】下腹部の鈍痛が続く原因と対処法
女性で下腹部痛が起こる場合、最もよく見られるのは膀胱炎です。頻尿や残尿感、排尿時痛がよく見られ、時に血尿が出ることもあります。膀胱炎は、急性の症状だけで改善することもありますが、再発を繰り返したり、慢性化し症状が長く続く場合もあります。 また、女性の場合、子宮内膜症や卵巣嚢腫、子宮筋腫、骨盤内炎症性疾患、異所性妊娠などで下腹部痛がみられることも少なくありません。そのほかに、男性と同様に大腸の病気が起こることもあります。右下腹部の鈍痛が続く原因と対処法
右下腹部に鈍痛が続く場合には、虫垂炎の可能性があります。盲腸は大腸の一部であり、右下腹部に位置します。この部位で炎症が起こったものが虫垂炎です。強い痛みがあったり、発熱を伴う場合には早めに消化器内科を受診しましょう。病状によっては手術が必要となる事もあります。 その他の原因として、右の尿管結石の可能性もあります。通常激痛で、結石が排出されると痛みが消失しますが、尿管に結石がとどまると同じ部位が継続して痛むこともあります。また、大腸の炎症や憩室炎、大腸がんも腹痛の原因と一つです。大腸のどの部分でも起こり得ますが、右側で炎症が起こると右下腹部の痛みが出ることもあります。 また、女性の場合では右側の卵巣にのう胞や炎症が起こると右下腹部痛が起こることもあるため注意が必要です。左下腹部の鈍痛が続く原因と対処法
左下腹部に鈍痛が続く場合には、右側と同様に尿管結石や大腸の炎症や憩室炎、大腸がんの可能性があります。また、女性では左の卵巣ののう胞や炎症の可能性も考えられます。下腹部の鈍痛が続き、吐き気を催す原因と対処法
下腹部の鈍痛と吐き気がみられた場合、消化管に病気がある可能性があります。大腸がんで腸管が細くなってしまい、通りが悪くなると吐き気などの症状がみられることもあります。吐き気などの消化器症状がみられる場合には、消化器内科を受診しましょう。すぐに病院へ行くべき「下腹部の鈍痛が続く」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。 応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。 以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。女性の発熱を伴う場合は、婦人科へ
下腹部の痛みと下腹部を押すと痛みが生じ、発熱を伴う場合には骨盤内炎症性疾患の可能性があります。性感染症を引き起こす菌や大腸菌などの一般細菌が性器に感染して上行性に感染が広がって起こったものです。放置すると不妊などの原因となります。早めの治療が大切です。受診・予防の目安となる「右脇腹に筋肉痛のような痛み」のセルフチェック法
・排尿痛の症状がある場合 ・血尿の症状がある場合 ・下腹部の激痛の症状がある場合 ・粘血便、下痢の症状がある場合「下腹部の鈍痛が続く」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「下腹部の鈍痛が続く」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。膀胱炎
膀胱炎の症状は排尿時痛、頻尿、残尿感、下腹部痛などです。尿が混濁し、時に血尿がみられることもあります。細菌による感染症が原因である事が最も多いです。感染による膀胱炎は「単純性膀胱炎」と「複雑性膀胱炎」に分類されます。「単純性膀胱炎」は若い女性に発症することが多く、抗生剤の内服で改善することが多いです。しかし、中には頻回に繰り返す方もおり、注意が必要です。「複雑性膀胱炎」は前立腺肥大症や神経因性膀胱など下部尿路の基礎疾患に伴い発症します。治療に難渋することも多いです。また、このほかに、「間質性膀胱炎」という原因不明で発症する非細菌性の慢性炎症性膀胱疾患もあります。感染性の膀胱炎と同様に頻尿、残尿感、下腹部の痛みがみられ、通常の膀胱炎と診断されてしまうこともあります。いずれの疾患も、泌尿器科で治療を行います。排尿時痛や頻尿、残尿感などを伴う下腹部痛がみられる場合には早めに受診をしましょう。受診までの間に、水分を多めにとることも大切です。炎症性腸疾患
炎症性腸疾患とは、消化管に炎症や潰瘍を生じ、出血や下痢、腹痛、体重減少、発熱などの症状が認められる病気です。潰瘍性大腸炎とクローン病が代表的な病気です。 潰瘍性大腸炎は、直腸から連続して潰瘍やびらんが口側に広がる病気を言います。遺伝的要因、食事などの環境因子、免疫異常が発症に関係しているとされていますが、はっきりとわかっていません。症状は粘血便や下痢、腹痛、発熱、体重減少などです。粘血便や下痢、腹痛など症状がある時には、消化器内科を受診しましょう。 クローン病は深い潰瘍が小腸から大腸の粘膜に飛び飛びにみられるのが特徴です。症状は、下痢や腹痛、痔瘻や肛門痛などの肛門症状、倦怠感や貧血、発熱などの全身症状がみられます。原因は潰瘍性大腸炎と同様に未だ特定されていません。 いずれの病気も、原因はいまだ解明されていない難病ですが、近年治療法が進歩し、治療の成績も改善しています。気になる症状がある場合には、早めに消化器内科を受診し、治療をすることが勧められます。前立腺炎
前立腺は、膀胱の真下にあり真ん中を尿道が通っています。また、精子の通り道である精管も前立腺の内部で尿道と合流しています。前立腺の役割は、前立腺液の分泌と排尿のコントロールです。この前立腺に尿道から侵入した細菌などが感染することで炎症が起こります。炎症には非細菌性のものもあり、冷えやアレルギーなどが原因として考えられています。症状としては、残尿感や頻尿、排尿時痛、下腹部の痛みなどです。治療は抗生剤の投与が中心です。このような症状がみられた場合には、泌尿器科を受診しましょう。子宮内膜症
子宮内膜症とは、子宮内膜もしくはその類似組織が本来あるべき子宮の内膜以外の場所に発生し発育したものです。月経周期に合わせて増殖し、月経時の血液が排出されずにプールされて周囲の組織と癒着を起こし、痛みが出ます。この周囲への癒着が不妊症の原因にもなります。内膜症の起こりやすい場所は、卵巣やダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)などです。症状は、下腹部などの痛みと不妊です。治療は、ホルモン剤などの内服治療と外科的手術が挙げられます。不妊の原因にもなるため、月経時の痛みが強いなどの症状がある場合には婦人科で相談をしましょう。子宮筋腫
子宮筋腫は、子宮を構成する平滑筋という筋肉組織由来の良性腫瘍です。頻度は、30歳以上の女性の2~3割程度です。悪性の病気ではありませんが、卵巣から分泌される女性ホルモンにより、大きくなるため注意が必要です。筋腫が大きくなると、子宮筋腫ができた場所により、出血が多くなり、貧血となります。また、下腹部を中心とした痛みが起こることもあります。そのほかにも、腰痛や頻尿などの症状が起こることも少なくありません。筋腫ができた場所によっては、妊娠しにくくなったり、流産しやすくなることもあります。治療が必要かどうかは、症状やできた場所、大きさなどにより異なります。月経過多や下腹部痛など症状が気になる場合には、婦人科を受診しましょう。骨盤内炎症性疾患(PID)
骨盤内炎症性疾患(PID)とは、子宮や卵管といった子宮頸管より上部の生殖器の感染症です。性感染症を引き起こす菌や大腸菌などの一般細菌が性器に感染して、症状を引き起こします。原因となる菌は、淋菌やクラミジア、大腸菌、ブドウ球菌などです。特に淋菌は、急性の症状が起こりやすいです。症状としては、下腹部痛が起こり、発熱がみられることもあります。治療としては抗生剤の投与が中心となりますが、時に治療が難渋したり再発を繰り返すこともあります。PIDは不妊症や異所性妊娠などの深刻な後遺症を起こしえます。このため、早期の診断と治療が大切です。下腹部痛など気になる症状が持続する場合には、婦人科を受診しましょう。「下腹部の鈍痛が続く」時の正しい対処法は?
下腹部の鈍痛が続く場合、さまざまな病気の可能性が考えられます。それぞれの病気によって対処は異なります。頻度が多い病気として、女性の場合は、膀胱炎が挙げられます。この病気は、頻尿や排尿時痛、残尿感が伴うことが多いです。このような場合には、まず水分を多く摂りましょう。それでも、症状が続く場合には、泌尿器科を受診しましょう。 粘血便や下痢など消化器症状がある場合には、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患や憩室炎などの可能性があります。症状がある場合には早めに消化器内科受診が必要ですが、受診までの間、消化の良いものを摂取しましょう。 子宮筋腫や子宮内膜症など月経周期により痛みが出る場合には、まず市販の鎮痛剤を内服しても良いですが、症状が強い場合には婦人科の受診をすることをお勧めします。 下腹部痛に発熱を伴う場合には、感染症を合併している可能性も考えられます。腸管もしくは女性であれば生殖器での感染も考えられます。何科を受診してよいかわからない場合には、まず内科、消化器内科を受診しても良いでしょう。排尿時痛、血尿などの症状がある場合には泌尿器科を受診しましょう。女性で、月経に伴う症状がある場合には婦人科をまず受診して相談することをお勧めします。「下腹部の鈍痛が続く」ときに飲んでも良い市販薬は?
下腹部の鈍痛がある場合には、まず鎮痛剤を内服しても良いでしょう。しかし、鎮痛剤で症状をごまかしても根本の病気を良くしているわけではありません。症状が持続する場合には、早めに医療機関を受診することをお勧めします。「下腹部の鈍痛が続く」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「下腹部の鈍痛が続く」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
下腹部の鈍痛が続く時、何科を受診すればいいですか?
伊藤 陽子(医師)
下腹部の鈍痛が持続する場合には、さまざまな病気の可能性が考えられます。病気により専門の診療科が異なります。排尿時痛や血尿などが伴う場合には泌尿器科、粘血便や下痢など消化器症状がある場合には消化器内科、月経痛などを伴う場合には婦人科を受診しましょう。このほかで何科を受診したらよいかわからない場合には、内科で相談しても良いでしょう。
下腹部の鈍痛が一週間以上続く原因について教えてください。
伊藤 陽子(医師)
下腹部の鈍痛が長く続く場合には、慢性の膀胱炎や尿路結石がとどまっている場合や、炎症性腸疾患、子宮内膜症、子宮筋腫、骨盤内炎症性疾患などの可能性が考えられます。