「下腹部痛」の原因・考えられる病気はご存知ですか?男女別に解説!
「下腹部に鈍い痛みを感じる」・「片側の下腹部だけが強く痛む」などの症状で悩んでいる方もいるでしょう。
下腹部に痛みを感じる原因としては、消化器疾患・尿路感染症・前立腺疾患・婦人科系疾患など様々です。
また、男性と女性では、下腹部痛の原因として考えられる病気が異なります。
今回は、下腹部痛の原因として考えられる病気・下腹部痛の症状について男女別に詳しく確認しましょう。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
下腹部痛の症状
下腹部に痛みを感じる病気は多く存在します。痛みの症状としても、激しく痛むこともあれば、鈍い痛みや違和感を覚えることもあるでしょう。また、下腹部は男女によって特有の臓器が存在する部位でもあります。
例えば、男性であれば前立腺、女性であれば子宮などです。また、尿路の構造も異なるため、罹患しやすい病気の種類も異なります。いずれにしても、下腹部の痛みだけで病気を判断することは難しいため、他の症状と併せてみていくことが大切です。
男性の下腹部痛の原因として考えられる病気
下腹部痛の原因が男女によって異なることは先に述べました。ここでは、男性の下腹部痛の原因として考えられる病気について解説します。
消化器系の病気
まず下腹部痛の原因として考えられるのは、消化器系の病気です。具体的には、腸炎・虫垂炎・過敏性腸症候群などが挙げられます。腸炎の原因は、細菌やウイルス感染・暴飲暴食・ストレスなど様々です。急性腸炎の場合、以下のような症状が急激に現れます。
- 腹痛
- 嘔吐
- 下痢
- 発熱
慢性腸炎の場合は、長期的に便通異常が生じることが特徴です。主な症状は以下の通りです。
- 下痢
- 血便
- 腹部の不快感
- 腹痛・下腹部痛
- 腹部の張り(ガスが溜まる)
- 食欲不振
- 倦怠感
また、下腹部痛の中でも右下腹部に痛身を感じる場合には、虫垂炎が疑われます。虫垂炎とは俗にいう、「盲腸」のことです。この場合、みぞおち周辺の痛みからはじまり、吐き気や食欲不振などの症状がみられるようになります。その後、右下腹部に局限した痛みと発熱を呈するのが特徴です。
しかし、中には特徴的な症状がみられないケースもあり、診断が難しい病気でもあります。さらに、下腹部痛の原因として挙げられるのは「過敏性腸症候群」です。過敏性腸症候群とは、検査をしても腸に異常が認められないにもかかわらず、下痢や便秘が続く状態を指します。過敏性腸症候群は、ストレスが原因で発症するといわれており、腹部の左側や下部に痛みを感じることが多いです。この他にも以下のような症状を繰り返します。
- 便秘
- 下痢
- 腹部の張り(ガスが溜まる)
- 食欲不振
- 体重減少
過敏性腸症候群の診断には、「年に6回以上の便通異常」・「1回あたりの便通異常が3週間以上継続する」という基準があります。
例えば、重要な会議の前や通勤中に痛んだり便通異常がみられたりする場合には、医療機関へ相談してみると良いでしょう。
尿路系の病気
下腹部痛をきたす尿路系の病気の中でも、脇腹から下腹部のあたりに痛みが生じるのが「尿管結石」です。腎臓で作られた尿を膀胱へ送る管である尿管に結石が詰まってしまいます。
尿管結石では、結石が詰まった側に痛みを感じるのが特徴です。結石が詰まると尿が腎臓へ逆流し「水腎症」が引き起こされるため、突き刺すような激しい痛みを伴います。痛みは2〜3時間続き、痛みが弱まったり強まったりすることが一般的です。また、血尿や吐き気などがみられることもあります。
急性前立腺炎・慢性前立腺炎
下腹部痛がみられる疾患として、急性前立腺炎・慢性前立腺炎が挙げられます。前立腺とは尿道を取り囲むようにして存在する男性特有の臓器です。
この部分に炎症が起きた場合、下腹部痛をはじめとした様々な症状がみられます。急性前立腺炎は細菌感染によって発症することが多いです。
- 高熱
- 排尿痛
- 頻尿
- 排尿困難
急激に症状が悪化すれば、細菌感染によるショック症状や機能障害などが引き起こされる「敗血症」を呈する可能性もあります。一方、慢性前立腺炎は細菌感染によるものだけでなく、前立腺が長時間圧迫されることも原因の1つです。
例えば、長時間に及ぶバイクや車の運転・デスクワークなどによって引き起こされます。その他、ストレスや冷えも前立腺炎の原因の1つです。この場合、下腹部痛の他には、以下のような症状がみられます。
- 頻尿
- 排尿痛
- 残尿感
- 会陰・恥骨・腰などの痛み
- 尿道・鼠径部・陰嚢など違和感
- 射精時の痛みや精液に血が混じる
慢性前立腺炎の場合、症状が自覚しにくいこともあります。下腹部や腰のあたりに違和感がある場合や排尿しても残っているような感じがする場合には、一度受診することをおすすめします。
精巣上体炎
男性の下腹部痛の原因として「精巣上体炎」も考えられるでしょう。精巣上体は精巣の横に位置し、精巣で作られた精子が精管を通過する前に通る器官です。若年層では、主に尿路感染症や性感染症により精巣上体に炎症が起こります。
高齢者の場合は、前立腺肥大や尿道狭窄などが主な原因です。精巣上体炎の特徴的な症状は以下の通りです。
- 発熱
- 陰嚢の痛み
- 陰嚢の腫れ
- 陰嚢の横にしこりが触れる
はじめのうちは精巣上体の部分だけに痛みを感じますが、次第に痛みが周囲へ広がっていくのが特徴です。また、痛みだけでなく陰嚢のしこりや腫れといった症状がみられます。
女性の場合に考えられる病気
続いては、女性の場合に考えられる病気についてです。女性が下腹部に痛みを覚える原因としては、消化器系や尿路系の病気に加え、子宮の病気や月経に関連するものが考えられます。
消化器系の病気
消化器系の病気については、女性も男性同様に腸炎・虫垂炎・過敏性腸症候群などにかかることがあります。特に、過敏性腸症候群は男性よりも女性に発症しやすいのが特徴です。
不調を感じた際には休息を取り、健康的な食事や適度な運動を心がけましょう。下腹部痛に加えて、便秘や下痢といった便通異常がみられる場合には、消化器系の病気が疑われます。お腹の不調が続くようであれば、我慢せずに医師に相談してください。
尿路系の病気
女性の尿路感染症の中でも最も発症しやすいのは、膀胱炎です。女性が男性に比べて尿道が短いため、膀胱に細菌が侵入しやすいというという特徴があります。女性は一生のうちで一度は必ず膀胱炎にかかるといわれるほど、多くの女性にみられる病気です。主な症状は以下の通りです。
- 頻尿
- 排尿痛
- 残尿感
- 下腹部の痛みや不快感
特に、性的活動期である20〜40代の女性に多くみられます。しかし、閉経後の女性であっても女性ホルモンの低下により膣内の常在菌が減少することで発症しやすくなることもあります。膀胱炎の症状がみられる場合に注意すべきは、「腎盂腎炎」です。腎盂腎炎は、膀胱炎が腎臓まで広がった場合に発症します。
腎盂腎炎になると、高熱・悪寒・倦怠感に加え、片方の脇腹や背部痛を伴うのが特徴です。腎盂腎炎では入院治療が必要となることもあるため、膀胱炎の症状が疑われる場合には、早めに受診するようにしましょう。
子宮の病気
女性特有の臓器である子宮は下腹部に位置します。そのため、子宮に何らかの疾患が生じた場合には下腹部に痛みを感じることが多いです。例えば、以下のような疾患が挙げられます。
- 子宮頸管炎
- 子宮内膜症
- 子宮頸がん
子宮経管炎は、子宮下部に位置する子宮経管に大腸菌・淋病・クラミジアなどが感染することで引き起こされます。主な症状としては、おりものの増加・下腹部痛・腰痛・不正出血などです。放置した場合、炎症が周囲へ広がってしまうこともあるため注意が必要です。一方、子宮内膜症では子宮の内側にある内膜に炎症が起きます。月経時の強い痛み・月経時以外での下腹部痛・腰痛・排便時の痛み・性交時の痛みなどが特徴的です。また、近年20代〜30代の若い女性にも多くみられる子宮頸がんも下腹部痛をきたすことがあります。
子宮頸がんの発症原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染です。初期には自覚症状がみられないものの、進行すれば、おりものの異常・不正出血・性交時の出血の出血などがみられます。子宮頸がんは、がんになる前の「異形成」という段階で発見することが可能です。なお、今回ご紹介した以外にも下腹部痛を呈する婦人科系疾患は多数あります。早期に発見するためにも、定期的に婦人科検診を受けるようにしましょう。
月経痛
下腹部の痛みは、月経によって引き起こされることも多いです。また、生理中に限らず、女性ホルモンの関係で痛むこともあります。鈍い痛み・チクチクした痛み・引っ張られるような痛みなどが時々起こることは、一般的によくみられます。
しかし、月経による下腹部痛が強い場合や吐き気や嘔吐などを伴う場合には、「月経困難症」の疑いがあるでしょう。痛みが強くなったり他の症状がみられたりすることがなければ様子をみても良いですが、症状がつらい場合には医師に相談してみてください。
すぐ病院に行った方が良い「下腹部痛」症状は?
- 突然の激しい痛みがある、冷や汗がある、意識が遠のく場合
- 血便がある、黒っぽい嘔吐がある場合
これらの場合にはすぐに病院を受診しましょう。
行くならどの診療科が良い?
主な受診科目は、内科、消化器内科、泌尿器科、婦人科です。
問診、触診、血液検査、画像検査(レントゲン、CT、MRIなど)、腹部超音波検査、大腸カメラ検査、婦人科内診などが実施される可能性があります。
病院を受診する際の注意点は?
持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。
いつから症状があるのか、痛みの性状・変動、他にも症状があるのかを医師に伝えましょう。
治療をする場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。
まとめ
下腹部痛を呈する病気は様々ですが、多くの場合は何らかの症状が伴います。例えば、下腹部痛とともに便通異常がみられるのであれば、消化器系の疾患が疑われるでしょう。
普段から長時間座った姿勢でいることが多い男性の場合には、前立腺炎の可能性も考えられます。
女性の場合には、下腹部痛とともに不正出血やおりものの異常などがみられるようであれば、産婦人科へ相談してみてください。
下腹部痛は病気に気付くための重要なサインでもあります。そのうち治まると考えて放置するのではなく、早めに受診しておくと安心です。