FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「卵巣出血」とは?原因・症状についても詳しく解説!【医師監修】

「卵巣出血」とは?原因・症状についても詳しく解説!【医師監修】

 更新日:2023/04/04
「卵巣出血」の原因と主な症状はご存知ですか?

子供を作るうえで重要な体の一部である卵巣ですが、この卵巣から出血がみられる場合があります。

それが卵巣出血です。卵巣出血は病院に行かなくても済むような軽度のものから手術を受けなくてはならないような重度のものまでとその症状は様々です。

今回はそんな卵巣出血について解説していきます。原因や妊娠への影響、治療方法や予後などについても触れていくので同じ症状でお悩みの人はぜひ参考にしてみてください。

前田 裕斗

監修医師
前田 裕斗(医師)

プロフィールをもっと見る
東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

卵巣出血の症状と原因

卵巣出血の症状と原因

卵巣出血はどのような状態ですか?

  • 卵巣出血には以下の2つがあります。
  • 卵胞出血
  • 出血性黄体のう胞
  • 卵巣の中には卵胞という卵子を包む体細胞の集合体があります。卵胞は卵子の成長と排卵の役割を持つため妊娠をするうえで欠かせない存在です。その卵胞が破れて出血している状態を卵胞出血といい、出血性黄体のう胞は血液を含んだ黄体が破れることで出血することをいいます。

卵巣出血でみられる症状を教えてください。

  • 主な症状として挙げられるのが出血と下腹部痛です。
  • 持続的な痛みがあり、重症化すると下腹部痛の悪化・吐き気や下痢などの症状が出ることもあります。
  • 子宮外妊娠と似た症状が出るため注意が必要です。

ショック状態になることがあると聞きます···。

  • 出血量が多くなると血圧の低下と共にショック状態になることがあります。
  • このような状態になる前に出血や下腹部痛の症状が出たら速やかに病院へ行きましょう。

卵巣出血の原因を知りたいです。

  • 卵巣出血の原因としては以下の3つに大別されます。
  • 外因性
  • 内因性
  • 特発性
  • 上から順番に説明していくと外因性の原因というのは、不妊治療を目的とした卵子の採取や卵巣の手術・子宮内膜症などの病気による影響といった外的刺激のことです。
  • 内因性は血液凝固異常や抗凝固剤などの薬による影響といった体内からの刺激によるものをいいます。
  • 最後に特発性ですが、特発性の原因には卵巣の機能やメカニズムが関わってきます。卵巣出血は外因性や内因性の原因がなくとも月経周期の中で誰でも起こる可能性のある症状です。中でも黄体期に起こる割合が非常に高く、90%を占めています。黄体期とは排卵期の直後の時期をいい、月経周期の終わりのことです。このときに出血性黄体のう胞という血液を含んだ黄体ができることがあります。この黄体が性行為などの外的刺激によって破裂した結果、卵巣出血となるのです。
  • このように、卵巣出血は女性であれば起こる確率の高い症状であるといえます。

年齢との関係はありますか?

  • 卵子は年齢を重ねていくごとに誰しも必ず減っていくものです。2つある卵巣の中に卵子が1つも入っていない状態を閉経といいます。
  • 前述したように卵巣出血は卵胞や黄体が破けることで起こる症状です。閉経を迎え、卵子の数が0になれば当然卵胞もなくなるため卵巣出血が起こることはありません。そこで、この閉経を迎える年齢とは何歳なのかが気になるところです。閉経を迎える年齢は個人差があり、40代で迎える人もいれば60代に入ってから迎える人もいます。
  • そのため、まだ閉経を迎えていない人は卵巣出血が起こる可能性が十分あると考えておいた方がよいでしょう。年齢との関係というよりは閉経をしているかいないかに関係しているといえます。

卵巣出血の検査と治療

卵巣出血の検査と治療

卵巣出血を疑ったらどのような検査をしますか?

  • 卵巣出血を起こしたときに注意しておきたいことが子宮外妊娠の可能性です。子宮外妊娠とは、子宮内以外の場所に受精卵が着床してしまうことをいいます。
  • この子宮外妊娠の特徴が出血と下腹部痛であることから卵巣出血と類似しているため、症状だけでは正しく診断ができません。そこでまず行われるのが妊娠の検査です。妊娠の有無が分かれば卵巣出血と子宮外妊娠の判別も可能になります。
  • そのときに卵巣出血と診断された場合、エコーで血液が溜まっているかを検査してその血液を吸引すれば検査は完了です。

なぜ妊娠しているか確認するのですか?

  • 前述したように子宮外妊娠と卵巣出血は症状がよく似ています。しかし、妊娠検査以降の検査と治療方法は全く異なるのです。
  • 子宮外妊娠は処置や発見が遅れたことによる死亡例も少なくありません。そのため、早期発見・早期治療が求められます。
  • 卵巣出血も大量出血の場合には命に関わりますが、どちらの症状であったにせよ正しい検査と処置を行うためにも妊娠の確認は必要なのです。

卵巣出血の治療方法を教えてください。

  • 出血量によって治療方法は異なります。出血量が多くなければ自然治癒することが多いため経過観察となりますが、貧血を起こすことがあるためほとんどの場合が入院です。少量であれば1週間程度の入院ですみますが、この入院期間中に検査を定期的に行います。血液検査やエコー検査の中で出血量や貧血の状態を確認しての判断が必要です。出血量が多い場合には手術と止血が行われます。手術の方法として挙げられるのが以下の2つです。
  • 開腹手術
  • 腹腔鏡手術
  • 開腹手術は名前の通り、腹部を開いて行う手術です。腹腔鏡手術の腹腔鏡とは内視鏡のことを指し、腹部の一部を切開して挿入した内視鏡での腹腔内の映像を見ながら手術を行う方法をいいます。止血にも2つの方法があり、それが以下の2つです。
  • 電気メスなどによる焼灼止血
  • 一部卵巣の切除
  • 一部卵巣の切除の場合には今後の妊娠を希望するかどうかについての確認をしてから行います。

卵巣出血の予後と注意点

卵巣出血の予後と注意点

再出血を起こすことはありますか?

  • 卵巣出血は閉経を迎えていない女性に起こる可能性があると前述しましたが、実際に卵巣出血を起こす人の割合はそれほど多くはありません。つまり卵巣出血自体、起こることがまれなのです。
  • そのため、再出血の可能性は全くないとは言い切れませんが、滅多に起こることはありません

卵巣出血を起こすと妊娠に影響しますか?

  • 卵子は妊娠に必要不可欠な存在です。そんな卵子を作っている卵巣からの出血ということから妊娠への不安を抱える患者さんは多くいます。
  • 結論から言うと卵巣出血を起こしても妊娠や出産には影響はありません
  • 排卵によって起こるものであるため逆に正常に排卵が行われているということになります。

再発予防のためにできることを教えてください。

  • 前述したように卵巣出血の再発は極めて少ないケースです。しかし、再発した人が1人もいないというわけではないため、不安になる人も多くいます。卵巣出血は排卵によって起こり、閉経を迎えた人には起こりません。
  • そのため予防としては排卵を止める方法が有効になります。そこで閉経を迎えていない人が排卵を止めるにはどうすればよいのかが気になるところです。排卵を止める方法として薬によるものがあります。主に使用される薬としては低用量ピルや黄体ホルモンの薬です。
  • 特に低用量ピルは避妊の薬として知られていますが、低用量ピルの特徴から卵巣出血予防にも使用できます。低用量ピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンの濃度を高めることで体の状態を妊娠時に近い状態にし、脳に妊娠していると錯覚させて排卵を止めることができるのです。妊娠の予定がなく、卵巣出血の再発予防をしたいという人は低用量ピルを検討してみましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 卵巣出血は妊娠や出産にはあまり影響を及ぼしませんが、出血量が多いとショック状態に陥るなど、重症化することがあります。
  • 月経前にどんなに少量でも出血があり、下腹部痛も伴うようであれば速やかに病院で診察を受けましょう。場合によっては子宮外妊娠の可能性もあります。子宮外妊娠の場合には早期発見と早期治療が重要になってくるため、そういった可能性も踏まえての判断が大切です。
  • 妊娠に影響がないからと油断はできないので卵巣出血に限らず自分の体調に少しでも異変を感じたら病院を頼りましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ
今回は卵巣出血について解説しました。卵巣出血は卵胞や出血性黄体のう胞によるもので、排卵が原因となる症状です。

卵巣出血と同様の症状がみられるものに子宮外妊娠があります。

子宮外妊娠は早期発見・早期治療が求められ、卵巣出血とは検査方法も治療も異なるためまずは妊娠検査を行うことが必要になります。

適切な検査と治療を行うことで命に関わる重症化を防げるため、妊娠検査は重要です。

卵巣出血の再発はあまりみられませんが、予防方法としては低用量ピルなどの排卵を止める作用を持つ薬の使用が有効になります。

低用量ピルは多くの婦人科で処方してもらえるため、こうした方法で予防をしておくことも卵巣出血を避ける1つの手です。適切な自己管理で自分の健康を守りましょう。

この記事の監修医師