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「嘔吐」の原因はご存知ですか?考えられる病気も医師が徹底解説!

「嘔吐」の原因はご存知ですか?考えられる病気も医師が徹底解説!

嘔吐時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

中川 龍太郎医師

監修医師
中川 龍太郎(医師)

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名古屋大学医学部卒業、名古屋大学医学部附属病院、江南厚生病院などで眼科医として勤務経験を持つ。患者の笑顔を見ることを何よりの喜びと思っている。日本眼科学会所属。現在は医学の発展に貢献できるよう、また目の前の患者にひたむきに向き合うため日々邁進中。

「嘔吐」症状で考えられる病気と対処法

嘔吐症状が出る原因は、食道や胃・腸といった消化管が原因となるケース、脳出血や髄膜炎などの中枢性疾患、耳鼻科疾患によるめまいから嘔吐を起こすケースがあります。
どんな場合に緊急性があり、病院受診を行う必要があるのかを解説していきます。

嘔吐症状で考えられる原因と治し方

嘔吐の症状で最も多いのが、めまい症状が強くて気持ち悪くなり吐いてしまう、と言うパターンです。場合、めまい症状を抑えると同時に、吐き気の症状を抑えることが重要になります。
めまいの原因としては、良性発作性頭位めまい症、そしてメニエール病が多くを占めます。良性発作性頭位めまい症は、寝た状態から上体を起こした時や、寝返りや上を向いた時などに景色がぐるぐる回るめまい(回転性めまい)を起こす病気のことを言います。またメニエール病は、めまいに加えて耳鳴りなどの聴覚症状も見られることが特徴です。
どちらも基本的には横向きに寝るなど楽な姿勢をとって、安静にすることが重要です。受診すべき診療科は、耳鼻咽喉科もしくは内科です。治療はEpley法という耳石を正しい位置に戻す方法や、吐き気止め、めまい止めの内服薬を使うことが多いです。もし嘔吐を何度も繰り返してしまう場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

嘔吐と下痢の症状で考えられる原因と治し方

嘔吐と下痢が続く場合、感染性胃腸炎の可能性が考えられます。嘔吐と下痢の他には腹痛や発熱が見られることもあります。感染の原因は大きくウイルス性、細菌性に分かれ、水っぽい下痢が大量に出る場合や粘り気のある血便が少量出る場合など、様々です。ご自身で出来る対応としては、経口補水液やおかゆ、バナナ、うどんなど消化に良い食べ物を摂取し、脱水や栄養失調を予防することが重要です。
口からの摂取が腹痛や吐き気で難しい場合は、医療機関を受診することを勧めます。
主な診療科は消化器内科です。症状が出る直前の食事(生食のものや加熱が不十分なもの)が関係する場合がありますので、診察の際に答えられるようにすると診断がスムーズになります。緊急性はありませんので日中に受診しましょう。

発熱と嘔吐の症状で考えられる原因と治し方

発熱と嘔吐を伴う症状の場合、髄膜炎の可能性が考えられます。発熱・嘔吐の他に頭痛や意識障害が見られることがあります。病気の経過として数時間で急速に進行、状態が悪化するタイプと、数日かけて進行するタイプがあります。
髄膜炎の原因は、細菌性、無菌性、ウイルス性などがあり、特に細菌性は数時間の治療の遅れが命に関わる重篤な病気です。早急に治療を開始する必要があるため、高熱と嘔吐が続き、頭痛や意識がぼんやりとした状態であれば、すぐに救急要請しましょう。
集中治療が必要になるケースもあるため、救命救急センターを受診することが望ましいです。血液検査や脳の画像検査に加えて、脳脊髄液を採取する髄液検査を行い、抗菌薬治療を行うことが多いです。

熱はないが嘔吐する症状で考えられる原因と治し方

熱はないのに嘔吐を繰り返す症状の場合、脳腫瘍の可能性が考えられます。脳腫瘍に特徴的な症状は、嘔吐の他に、頭痛やてんかん発作、物が二重に見える(複視)などです。吐き気や頭痛に対して、吐き気止めや鎮痛薬が一時的に効くものの、効果は限定的です。脳腫瘍には良性のものと悪性のものがありますが、その判別は症状や身体診察のみでは困難です。また放置していて自然に良くなるケースは少ないため、早急に精密検査を受ける必要があります。
受診すべき病院はCT検査やMRI検査が可能な大規模の病院を、診療科は脳神経外科もしくは脳神経内科を受診するようにしましょう。緊急性はありませんが、嘔吐などの症状の頻度が急速に増加している場合は、早めの日程で医療機関を受診しましょう。

嘔吐しても胃液しかでない症状で考えられる原因と治し方

嘔吐しても胃液しか出ない症状の場合、急性胃炎が疑われます。詳細は後述しますが急性胃炎は、胃の粘膜に炎症が起きた状態で、突然のみぞおちの痛みや吐き気、嘔吐、お腹の張りなどが出現する病気です。状態がひどいものは胃潰瘍に至っていることもあります。
原因としては、ストレスやアルコール、薬剤(痛みどめや抗生物質など)、ピロリ菌感染などがあります。
主な診療科は、消化器内科です。胃潰瘍がないことを確認する意味でも上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を施行する場合が多いです。緊急性はないため日中の受診を行いましょう。しかし、吐血している、便に黒いものが混じっている場合は胃潰瘍や胃粘膜からの出血の可能性があるため、出来るだけ早い日程で医療機関を受診しましょう。

ストレスで嘔吐する症状で考えられる原因と治し方

ストレスで胃もたれやお腹のはり、繰り返す嘔吐、腹痛などが見られた場合、機能性ディスペプシアの可能性があります。機能性ディスペプシアは、症状の原因となるような器質的疾患(胃潰瘍や腸閉塞など、形としての異常)、代謝性疾患(糖尿病や甲状腺機能など、体内のホルモンの異常)、全身疾患(感染症や自己免疫疾患など)が無いにもかかわらず、慢性的に腹部の症状を自覚する疾患です。原因としてストレスが関わっているとされています。
主な診療科は消化器内科、もしくは心療内科です。命にはかかわりませんが、生活の質を大きく下げてしまう病気です。日常生活を満足に過ごせるように症状を抑えることが目標になります。緊急性はありませんので日中に受診するようにしましょう。

こどもが嘔吐する症状で考えられる主な原因と治し方

子供が嘔吐する症状で、下痢を伴う場合であれば、ウイルス性胃腸炎を第一に考えます。そのほか、下痢が見られない場合には尿路感染症や腸重積症の可能性もありますが、ここでは主な原因となるウイルス性胃腸炎を解説します。
原因ウイルスとしてエンテロウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルスなどがあげられます。ウイルス性胃腸炎の基本治療は脱水の予防であり、脱水の程度の判断が大切です。大まかに嘔吐が1日1〜2回であれば軽症、1日5回未満なら中等症、1日5回以上なら重症;かなり脱水に陥っていると考えます。ご自宅で出来る対策は、経口補水液を使い脱水の予防、補正を行うことです。
主な診療科は小児科です。脱水の程度が重症の場合は入院治療の適応となりますので、急いで受診してください。また定期的に痛くなっては消えるような腹痛、いつもより不機嫌な様子がある場合、先に挙げた腸重積症の可能性があり、緊急性も高くなります。早めに小児科を受診しましょう。

すぐに病院へ行くべき「嘔吐」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

嘔吐に意識障害を伴う場合は、救急科へ

ただ嘔吐が見られるだけでなく、意識障害(目を開けない、話さない、受け答えがおかしいなど)が見られた場合、脳出血や糖尿病性ケトアシドーシスなど、重篤な疾患が隠れている場合があります。
嘔吐がある際は、意識状態に注意してみましょう。乳幼児の場合は受け答えを確認することはできませんから、普段と比較して不機嫌な時間が長くないか、ぐったりしているか、といった部分を基準にしてください。

受診・予防の目安となる「嘔吐」のセルフチェック法

  • ・嘔吐以外に意識障害がある場合
  • ・嘔吐以外に発熱がある場合
  • ・嘔吐以外に頭痛症状がある場合

「嘔吐する」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「嘔吐」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

急性胃炎

急性胃炎とは、突然のみぞおち付近の痛みや吐き気、嘔吐、時には吐血下血を起こす病気です。この際に内視鏡検査を行うと、胃粘膜の表面に急性の異常所見(明らかな炎症所見、出血、びらん、潰瘍)が観察されます。原因としては、ストレスや刺激の強い食品(辛いものや熱いものなど)、喫煙、アルコール摂取、薬剤(痛みどめや抗生物質など)、ピロリ菌感染などがあります。
主な診療科は、消化器内科です。後述する胃潰瘍がないことを確認する意味でも上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を施行する場合が多いです。緊急性はないため日中の受診を行いましょう。軽症の場合は、原因を除去しつつ胃酸の分泌を抑える薬や胃粘膜を保護する薬で治療が行われます。しかし、吐血している、便に黒いものが混じっている(黒色便)場合は胃潰瘍や胃粘膜からの出血の可能性があるため、出来るだけ早い日程で医療機関を受診しましょう。

胃潰瘍

胃潰瘍とは、胃酸によって胃の粘膜が傷つけられ、痛みや出血を起こす病気です。先述の急性胃炎よりもさらに損傷が激しい状態になります。原因は、胃酸と胃壁を守る粘液の分泌のバランスが崩れ、胃酸によって胃壁が傷つくためです。このバランスが崩れる原因は複数あり、特に喫煙やヘリコバクター・ピロリという細菌の感染、非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAID)の濫用、ストレスやアルコール過剰摂取などが挙げられます。重症の場合は胃壁全層に傷が到達し、出血や穿孔(穴があくこと)を来す場合もあります。
ご自身で出来る対処法は、まず上記の原因で心当たりのある物(喫煙やアルコールなど)を避けることです。その上で痛みが強い場合は医療機関受診を検討しましょう。
受診すべき診療科は消化器内科です。診断は胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で行います。軽症であれば内服薬で治療可能ですが、重症(出血や穿孔がある場合)では入院の上、内視鏡や手術での治療が必要になります。腹痛があり嘔吐を繰り返してしまう場合は、早めに医療機関を受診しましょう。もし吐血や黒色便、血便が見られた場合は緊急性が高いため、すぐに病院を受診してください。

食中毒

食中毒とは、原因となる細菌やウイルス、有毒な物質がついた食べ物を摂取することによって、嘔吐や下痢、腹痛、発熱などの症状が出る病気のことです。食中毒の原因となる微生物、毒性物質によって、潜伏期間や症状は様々です。
食中毒の原因の多くは、治療として抗菌薬の投与は勧められておらず、軽症〜中等症には症状や脱水への対症療法のみを行うことが基本とされています。下痢止めは菌の排出を長引かせ、腸の運動を低下させる可能性があるため、できる限り使用しない方がいいでしょう。
病院へ行くべき目安は、全く水分が取れない時、そして下痢と同時に血便も生じる時です。こういった場合は点滴での水分補給が必要です。また毒性の強い病原微生物が原因となっていることも多く、便培養という検査で特殊な細菌が潜んでいないかを調べます。
受診すべき診療科は、消化器内科です。発症前に海外に行っていた場合、もしくは郷土料理を食べていた場合は、その旨を伝えるようにしましょう。

くも膜下出血

くも膜下出血とは、脳出血の一種で、脳の表面の血管が破れて出血してしまい、くも膜下腔というスペースに出血が拡がった病気です。発症の原因のほとんどは脳の動脈にできた瘤(こぶ):脳動脈瘤の破裂です。脳動脈瘤が存在するだけでは何も症状はありません。しかし、一度破裂すると、出血によって髄膜が刺激され、経験したことのない頭痛や嘔吐、脳が圧迫されることによる意識障害、麻痺などの神経障害を引き起こします。破裂の原因は高血圧や喫煙、アルコール過剰摂取、家族性などが報告されています。
くも膜下出血は、発症した人の1/3は死亡し、1/3は何らかの後遺症が残り、残る1/3だけが社会復帰できるという、非常に重篤な病気です。経験したことのない激しい頭痛を突然感じた際は、すぐに救急要請することを勧めます。またご自身や身の回りの方がそのような状況になった際は、救急要請をした後、出来るだけ安静にするようにしてください、具体的にはタオルなどで目を覆う、大きな音が入らないようにするなど、余計な光刺激や音による刺激がないようにしましょう。
受診すべき診療科は脳神経外科です。原因となっている血管の位置によって、開頭手術やカテーテル手術などが適応になります。

「嘔吐する」ときの正しい対処法は?

吐血・下血・発熱・頭痛・意識障害が見られる際は、緊急性が高いため、早急に医療機関を受診してください。子供の場合、意識状態を判別するには、普段と比較して機嫌が悪くないか、食事量が減っていないかなどが重要です。
一方、食中毒が疑われる場合は基本的に水分摂取が重要です。無理にない範囲で水分補給をこまめに行うようにしてください。
水分補給の際は経口補水液がおすすめです。また市販の吐き気どめなどを使用しても問題はありません、一方でそれらの処置をしても症状が収まらない場合は、医療機関を受診しましょう。

「嘔吐する」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「嘔吐」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

嘔吐後に気を付けることはありますでしょうか。

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

嘔吐後は水分が失われています。無理のない範囲で水分摂取を心がけましょう。

発熱や下痢がないのに大人が嘔吐してしまう主な原因は何でしょうか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

前述した機能性ディスペプシアや急性胃炎、胃潰瘍、脳腫瘍などの可能性があります。繰り返す場合は医療機関で検査を受けましょう。

子供が嘔吐してしまい原因がわからないときどうしたら良いですか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

食中毒などの原因がわからない場合は、尿路感染症や腸重積症といった病気が隠れている場合があります。小児科を受診しましょう。

つわりで吐いてしまうときの対処法はありますか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

吐き気どめなどの内服薬をしっかりと使うことが重要です。かかりつけの産婦人科で処方してもらいましょう。

嘔吐恐怖症について詳しく教えてください。

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

嘔吐恐怖症とは、苦痛を伴いながら、自分自身や他人が嘔吐することを過度に恐れている状態です。パニック障害や広場恐怖症と合併することもあります。嘔吐することを過度に恐れるあまり、常に喉の感覚が敏感になっており、些細な変化も重大に捉えてしまい、吐き気を感じることがあります。治療法は、心療内科や精神科での認知行動療法が有効です。

まとめ

嘔吐という症状は、それ自体が辛く苦しいものですが、その原因となる疾患は軽度な胃腸炎から重症な脳出血や髄膜炎まで様々です。嘔吐に加えて、意識状態が普段と違う(ぼんやりしている、応答が悪い、目を開けない)場合は、重症である可能性が高くなるため、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。

「嘔吐する」で考えられる病気と特徴

「嘔吐」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

耳鼻科の病気

嘔吐の原因は消化管だけでなく、脳神経系や耳鼻科系の疾患が関与することもあります。繰り返す嘔吐が見られる際は、必ず医療機関で調べましょう。

「嘔吐」と関連のある症状

「嘔吐」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

嘔吐まで至らなくても、吐き気や気持ち悪さを伴うだけで、これまで紹介した疾患の可能性は否定できません。長期間良くならない吐き気や気持ち悪さがある場合は、医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師