女性に多い「くも膜下出血」の”手術”は何をするのか?費用・合併症も医師が解説!

くも膜下出血は、突然の激しい頭痛や意識障害を起こし、命に関わることもある脳卒中の代表疾患の一つです。再出血を防ぐため、原因となる脳動脈瘤を処置する手術が早期に必要です。主な手術方法は、頭を開けて動脈瘤の根元をクリップで挟む開頭クリッピング術と、カテーテルで血管の中からコイルを詰める血管内コイル塞栓術です。本記事は、それぞれの手術の特徴や手術時間、おおよその費用、起こりうる合併症を解説します。

監修医師:
伊藤 規絵(医師)
目次 -INDEX-
くも膜下出血とは

くも膜下出血は、脳の表面を覆う膜(硬膜・くも膜・軟膜)のうち、くも膜と軟膜のすき間のくも膜下腔に出血が起こった状態を指します。多くは脳の動脈にできたこぶ(脳動脈瘤;のうどうみゃくりゅう)の破裂が原因で、突然の激しい頭痛や意識障害をきたす、致命率の高い脳卒中です。40歳以降の中高年、特に女性に多くみられ、適切な治療を受けても後遺症が残ることがあります。早期に診断・治療を受けることが、救命と回復の鍵です。
くも膜下出血に対する手術の種類

開頭して動脈瘤の根元をクリップで挟む開頭クリッピング術と、カテーテルで血管内からコイルを詰めるコイル塞栓術(血管内治療)の2種類があります。
開頭クリッピング術
頭蓋骨の一部を開けて脳を直接確認し、脳動脈瘤の根元(ネック)を金属製クリップで挟んで動脈瘤内への血流を遮断し、破裂・再破裂を防ぐ手術です。全身麻酔下で行われ、手術用顕微鏡を用いて正常な血管を傷つけないように慎重にクリップをかけることが特徴です。
コイル塞栓術
足の付け根などの動脈から細いカテーテルを挿入し、レントゲンで透視しながら脳動脈瘤の中まで進め、プラチナ製などのやわらかいコイルを瘤内に詰めて血液の流れを遮断する治療法です。開頭せずに血管の内側から行うため身体への負担が少なく、高齢の方でも受けやすい一方、瘤の形や大きさによっては再治療が必要になる場合があります。
くも膜下出血手術にかかる時間と費用

脳の状態や動脈瘤の場所・数によって違いますが、一般的には数時間かかることが少なくないです。費用は保険適用・自己負担割合・高額療養費制度の利用などで大きく変わります。
開頭クリッピング術にかかる時間と費用
開頭クリッピング術にかかる手術時間は、動脈瘤の部位や大きさ、数などにより違いますが、おおむね3〜4時間かかるとされています。医療費は施設や症例により差がありますが、開頭術・血管内治療ともに総額で200万円程度となり、健康保険3割負担の場合は自己負担がその3割程度、高額療養費制度の対象です。
コイル塞栓術にかかる時間と費用
コイル塞栓術にかかる時間は、動脈瘤の部位や形、大きさなどによって違いますが、一般的には2〜4時間程度かかるとされています。医療費は施設や症例により違いますが、入院医療費全体は総額で200万円程度となり、数十万程度の自己負担となるケースが少なくないです。高額療養費制度の対象となり、自己負担上限額を超えた分は払い戻しを受けられます。
くも膜下出血手術後に起こりやすい合併症

くも膜下出血の手術後は、脳動脈瘤を処置しても再出血や脳血管攣縮による脳梗塞、水頭症などが起こりやすく、さらに肺炎や心不全など全身の合併症にも注意が必要です。
脳血管攣縮
脳血管攣縮は、くも膜下出血の数日後から2週間前後にかけて起こりやすい合併症(発症後4から15日後、10日目前後に起こることが一般的)で、脳の動脈が強く収縮して細くなり、脳への血流が低下する状態です。その結果、意識障害や手足の麻痺、言語障害などが新たに出現・悪化し、重症の場合は脳梗塞を起こして命に関わることがあります。
再出血
再出血は、いったん止まっているくも膜下出血が再び起こる状態で、破裂した脳動脈瘤をそのままにしておくと高い頻度で生じる、危険な合併症です。発症直後から24時間以内(特にはじめの6時間以内)は再出血のリスクがとても高く、再出血を起こすと半数程度が死亡するとされるため、動脈瘤を早期にクリッピング術やコイル塞栓術で処置して再出血を防ぐことが重要です。
正常圧水頭症
くも膜下出血手術後には、脳脊髄液の流れが悪くなり、正常圧水頭症の合併症を起こすことがあります。正常圧水頭症では脳室が徐々に拡大し、歩行がふらつく、物忘れが進む、尿が間に合わないなどの症状が目立ちます。高齢の方では認知症や加齢のせいと見過ごされやすいですが、早期に見つけてシャント手術で髄液を体内に逃がす治療を行うことで、症状が改善する可能性がある治療可能な認知症です。
肺炎
くも膜下出血の手術後は、長期のベッド上安静や意識障害、嚥下機能の低下などが重なることで、痰がうまく出せない・飲み込みが悪いなどの状態になり、誤嚥性肺炎や気道感染による肺炎を起こしやすいです。また、急性期にはくも膜下出血そのものの影響で神経原性肺水腫や呼吸状態の悪化が起こることがあり、こうした呼吸器合併症がきっかけとなって肺炎への進展もあるため、早期からの体位変換・呼吸リハビリ・嚥下評価が重要です。
心不全
くも膜下出血の手術後は、出血そのものの強いストレスや自律神経の乱れ、血圧変動などの影響で、心臓に一時的な障害が起こり、心不全を合併しやすいです。特に急性期は、心筋の収縮力が弱くなるたこつぼ型心筋障害や不整脈、血圧低下などを伴い、肺うっ血や息切れ、低酸素などの症状が出ることがあります。
感染症
くも膜下出血の手術後は、長期のベッド上安静や意識障害、カテーテル・点滴などの医療器具の使用が続くことで、尿路感染症や肺炎、創部感染、シャント感染などの感染症を起こしやすいです。特に高齢の方や重症例では免疫力が低下しやすく、誤嚥性肺炎や尿路感染が全身状態悪化やリハビリ遅延の原因です。くも膜下出血の手術についてよくある質問
ここまでくも膜下出血の手術を紹介しました。ここでは「くも膜下出血の手術」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
くも膜下出血の手術は保険適用ですか?
伊藤 規絵医師
くも膜下出血の手術後どのくらいで退院できますか?
伊藤 規絵医師
編集部まとめ

くも膜下出血の手術には、開頭クリッピング術と血管内から行うコイル塞栓術があります。動脈瘤の場所や形によって方法や手術時間は違いますが、いずれも数時間かかることが多く、費用は公的医療保険が適用され、高額療養費制度の利用で自己負担は数万円~十数万円程度に抑えられる場合が少なくないです。術後は再出血や脳血管攣縮、水頭症、肺炎・心不全などの合併症に注意し、集中治療と早期リハビリで回復を目指します。
くも膜下出血と関連する病気
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 脳動脈瘤(未破裂・破裂)
- 脳動静脈奇形(AVM)
- もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)
- 頭部外傷(外傷性くも膜下出血の原因)
くも膜下出血と関連する症状
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 突然の激しい頭痛(今まで経験したことのない頭痛)
- 吐き気・嘔吐を伴う頭痛
- めまい・ふらつき
- 視力低下や物が二重に見えるなどの目の症状
- 意識がもうろうとする、気を失うなどの意識障害
参考文献




