「生理前じゃないのに胸が張る」原因はご存知ですか?妊娠の可能性も医師が解説!
生理前じゃないのに胸が張るとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
喜多村 麻梨子(医師)
形成外科を経て美容医療の可能性を見出し、産後も美容診療に携わりながら幅広く活躍している。現在は美容医療の枠にとどまらず予防医学の啓蒙・執筆活動に従事し活躍の幅を広げている。
「生理前じゃないのに胸が張る」症状で考えられる病気と対処法
生理前や生理中に胸の張りを実感されている女性は多いのではないでしょうか?
月経周期による胸の張りはホルモンバランスの変化により起こる生理現象であるため、病気ではないことが多いです。対して、生理前じゃないのに胸が張る原因は月経周期以外の問題が隠れている可能性があります。どんな場合に病院受診を行う必要があるのか解説していきます
生理前じゃないのに胸が張る症状で考えられる原因と治し方
胸の張りには生理現象やタイミングにより起こる場合と病気が原因で生じる場合があります。生理現象が原因で起きるのは、「成長期」「生理前」「妊娠時」「ホルモンバランスの乱れ」「更年期障害」があります。
また、疾患によって起こる場合は「高プロラクチン血症」「乳腺症」「乳腺線維腺腫」「乳腺炎」「乳がん」があります。ご自身で判断しにくい場合は乳腺外科を受診しましょう。
生理前じゃないのに胸が張って痛い症状で考えられる原因と対処法
「乳腺症」「乳腺線維腺腫」「乳腺炎」「乳がん」「乳管内乳頭腫」などが考えられます。痛み以外に乳房が赤く腫れたり、熱を持った場合には「炎症性乳がん」や「乳腺炎」の可能性があります。また、痛みに加えて乳房内や脇の下にしこりを触れた場合も乳がんの可能性があります。そして、経口避妊薬や更年期症状に対するホルモン補充療法でも乳房の痛みを生じることがあります。
痛みが強い場合は消炎鎮痛剤(ロキソプロフェン、アセトアミノフェン)内服が効果的です。また、経口避妊薬やホルモン補充療法が原因の場合は、薬物の中止・変更が必要な可能性があります。心配な症状がある場合は、乳腺外科を受診しましょう。
更年期に生理前じゃないのに胸が張る症状で考えられる原因と治し方
女性は、閉経を境にエストロゲンというホルモンの分泌が急激に低下します。この影響によって自律神経のバランスが乱れ、倦怠感、動悸、のぼせやほてり、腰痛、肩こり、頭痛、耳鳴り、手足の冷えが起こりますが、乳房や乳首(乳頭)の痛みも代表的な症状で「胸の張り」として現れることもあります。「乳房がいつもより痛みが強い」「なんとなく変だな」と感じたら 乳癌などの腫瘍性病変、神経痛や筋肉痛の可能性もあります。
その他の乳腺疾患の可能性もあるため迷わずに乳腺外科を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「生理前じゃないのに胸が張る」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
乳房に違和感がある場合は、乳腺外科へ
胸の張りを自覚した時に、以下のような症状がある場合は注意が必要です。
- 乳房を触ると「しこり」がある
- 乳房に「えくぼのような凹凸」が見られる
- 乳房の皮膚の「ただれ」が起きる
- 左右の乳房の形が非対称になる
- 「乳頭から分泌物」が見られるなど出現がある
このような症状がある場合、乳がんや乳腺疾患の可能性も高く、乳腺外科を受診する必要があります。
受診・予防の目安となる「生理前じゃないのに胸が張る」ときのセルフチェック法
- 生理前じゃないのに胸が張る以外に頭痛やほてり、イライラ、微熱、痺れなどの症状がある場合
- 生理前じゃないのに胸が張る以外にしこり、痛みなどの症状がある場合
- 生理前じゃないのに胸が張る以外に発熱、腫れなどの症状がある場合
「生理前じゃないのに胸が張る」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「生理前じゃないのに胸が張る」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
乳腺症
乳腺症とは、30~50代の女性でよくみられる良性の疾患の総称で、女性ホルモンのバランスが崩れることによって起きます。
代表的な症状は圧痛や乳房の張り・しこりの自覚です。生理前に症状が悪化し、生理後には緩和される傾向があります。乳腺症は女性ホルモンの作用を受けやすく、閉経後には症状が軽減されることが多いとされます。乳腺症は基本的に症状が悪くなっていかないようなら経過観察で問題ありません。強い痛みや手で触れてわかるほどのしこりがある場合は、乳がんの可能性もあるため、迷わず乳腺外科を受診しましょう。
乳腺炎
乳腺炎は母乳の「うっ滞(うったい)」と「細菌感染」により、乳房の乳腺に炎症が生じる病気で、授乳期の女性に多く発症します。
母乳の通り道が十分に開いていなかったり、赤ちゃんの吸う力が弱かったりすると、母乳がうまく排出できす、乳腺の中に留まり続け、うっ滞性乳腺炎を引き起こします。また、乳頭の傷より細菌が感染し、乳房に留まり続けた母乳中で細菌が繁殖すると化膿性乳腺炎を発症します。
乳腺炎は、適切な授乳方法と健康的な生活習慣の維持により予防できるため、正しい対処法を知っておくのが重要です。
どちらも強い痛みや発熱が起こった場合は受診する目安となります。
うっ滞性乳腺炎の治療は授乳後の入念な搾乳や適切なマッサージによりうっ滞を解除することです。化膿性乳腺炎の治療については、抗生物質の投与が必要になりますので、乳腺外科を受診しましょう。
乳腺線維腺腫
乳腺線維腺腫は15~30歳位の若い人に多い乳腺の良性の腫瘍です。硬くて丸い、くるくるよく動くビー玉のようなしこりであることが特徴です。通常、しこりが小さい場合は自然経過で良くなるため治療の必要はありませんが、超音波検査やマンモグラフィにより診断します。乳がんとの鑑別が重要であるため、胸にしこりを感じられる場合は、まず乳腺外科を受診しましょう。
乳がん
乳がんは乳腺の組織にできるがんのことです。
乳房は乳腺と脂肪組織が、乳腺には乳腺葉が、乳腺葉には乳管と乳腺小葉が、乳腺小葉は腺房という小さい組織があつまって形づくられています。
乳がんは多くは乳管から発生しますが、乳腺小葉からも発生します。
乳がんは非浸潤がんと浸潤がんに分けられ、がん細胞が乳管や乳腺小葉にとどまっているものが、非浸潤がん、その周囲に広がっているものを浸潤がんと呼びます。
乳がんは乳房の周りのリンパ節からがん細胞が血流に乗ると、乳房から離れた骨や肺などの臓器に転移することがあります。
初期症状には乳房を触ると「しこり」を触れることが一番多く、他には乳房に「えくぼのような凹凸」が見られる、乳房の皮膚の「ただれ」が起きる、「左右の乳房の形が非対称」になる、「乳頭から分泌物」が見られるなどが出現します。
40歳以上は必ず定期検診をうけ、このような症状があった場合にはすぐに乳腺外科を受診しましょう。
「生理前じゃないのに胸が張る」ときの正しい対処法は?
ホルモンバランスの乱れが原因のとき、不規則な生活や長引く睡眠不足は、ホルモンバランスに悪影響を与えます。以下、生活習慣を見直し、体の調子を整えましょう。
- 決まった時間に眠る
- 十分な睡眠時間をとる(1日7時間以上)
- バランスのよい食生活を心掛ける
- 適度な運動を行う
■妊娠の可能性があるとき
生理予定日から1週間以上経過した頃に市販の妊娠検査薬で検査をしましょう。陽性の反応が出た方は、正常に妊娠しているか確認する必要があるので、婦人科・産婦人科を受診し超音波検査を受けましょう。
■乳腺炎が疑われるとき
しこりや乳房の凹凸など、乳がんと似た症状が出るため、念のため検査を受けるようにしましょう。授乳中の場合は赤ちゃんによく母乳を飲ませ、こまめに乳房マッサージと搾乳を行いましょう。母乳による詰まりを取り除くと痛みが改善します。
「生理前じゃないのに胸が張る」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「生理前じゃないのに胸が張る」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
月経が終わったあとに胸が張って痛いのは婦人科を受診すべきですか?
喜多村 麻梨子(医師)
一時的な女性ホルモンの増加で乳房の痛みを感じることは正常な反応です。痛みが自然に改善せずに、2週間以上続く痛みやしこり等はその他の疾患の可能性もありますので、乳腺外科へ受診し検査を受けましょう。
生理前じゃないのに胸が張るのは妊娠のサインですか?
喜多村 麻梨子(医師)
妊娠すると、分娩の直前まで黄体ホルモンの分泌が活発になり、その影響によって、特に妊娠前半は胸の張りや痛みが生じやすくなります。妊娠初期症状の可能性もありますので、もし妊娠の疑いがあるようなら、生理予定日から1週間以上経ってから、妊娠検査薬を使用してみましょう。陽性反応が出たら、病院を受診してくださいね。
生理後なのに胸の張りが気になります。乳がんの可能性はありますか?
喜多村 麻梨子(医師)
生理後になっても胸が張る場合、ホルモンバランスの乱れが原因の可能性があります。ストレスや睡眠不足などでホルモンバランスが崩れると、生理後も黄体ホルモンの影響を受けて、胸が張ってしまうのです。しかし「生理後なのになぜか胸が張る」という場合は乳腺症、乳腺線維腺腫、乳がんなどの他の原因も考えられるので、早めに婦人科へ行くことをおすすめします。
生理前じゃないのに胸が張るのはホルモンバランスの乱れが原因ですか?
喜多村 麻梨子(医師)
ストレスや体調不良の影響でホルモンバランスが崩れていると、生理後もプロゲステロンが過剰に分泌され、乳腺が発達し、胸の張りを感じることがあります。ホルモンバランスは生活習慣と密接な関係があるので規則正しい生活を心がけましょう。
まとめ 生理前じゃないのに胸が張るのは乳腺疾患の可能性あり
乳腺は女性ホルモンの作用によって発達するため、女性ホルモンの分泌量が増える生理前や妊娠期、授乳期などには乳房の張りや痛みが生じることがあります。乳房の張りや痛みは生理的現象のこともありますが、何らかの病気が原因となっていることもあります。
「乳房の痛み以外に、しこりや乳頭からの血性分泌液がある」、「体を動かすと乳房に痛みが生じる」などの症状がみられた場合、乳房の痛みを引き起こす病気の可能性があります。病気などが原因であれば早めに治療を行うことが大切ですし、ホルモンバランスの乱れでも、その度合いによってはきちんと治療をする必要があります。胸の張りや痛みは人に相談しにくいと思いますが、多くの女性が感じている悩みです。一人で悩まず、早めに専門家へ相談しましょう。
「生理前じゃないのに胸が張る」症状で考えられる病気
「生理前じゃないのに胸が張る」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
胸が張る症状は月経周期に伴う自然なものであることが多いですが、乳がんなどの病気が隠れている可能性があります。
「生理前じゃないのに胸が張る」に似ている症状・関連する症状
「生理前じゃないのに胸が張る」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胸が張る
- 胸が痛い
- 肋骨が痛い
- 胸にしこりがある
- 左胸が痛くチクチクする
- 左胸下の痛み
「生理前じゃないのに胸が張る」症状の他にこれらの症状がある場合でも「高プロラクチン血症」「乳腺症」「乳腺線維腺腫」「乳腺炎」「乳がん」「葉状腫瘍」「乳管内乳頭腫」などの疾患の可能性が考えられます。胸に熱感や腫れがある場合や頭痛、ほてりなどの全身症状がある場合には、早めの医療機関への受診を検討しましょう。