「生理中におしりが痛い」のは「子宮内膜症」が原因?医師が徹底解説!


監修医師:
吉田 悠人(アルテミスウィメンズホスピタル)
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2015年東北大学医学部卒業。東北大学病院、複数の総合病院勤務を経て、アルテミスウィメンズホスピタル勤務。産婦人科専門医。日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会所属。
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「生理中におしりが痛い」症状で考えられる病気と対処法
「生理中にお腹だけでなくなぜおしりの方も痛くなるんだろう?」このような経験をしている方も多いのではないでしょうか?今回は生理中におしりが痛くなる原因と、その対処法について解説していきます。生理中にキューっとおしりが痛む症状で考えられる原因と対処法
生理中におしりが痛くなる原因として最も考えられるのは子宮内膜症です。 子宮内膜症とは、子宮内膜と似た組織が子宮の外に出来る病気です。後半で詳しく解説しています。 子宮内膜症は卵巣や卵管、膀胱子宮窩やダグラス窩(それぞれ膀胱と子宮、子宮と直腸の間のくぼみ)にできることが多く、ダグラス窩にできた場合肛門に近い位置であるため生理中のおしりの痛みが生じると考えられます。 子宮内膜症では生理の度に出血や炎症を起こし、病変が広がったり、癒着が生じて症状が悪化したりします。 ダグラス窩の子宮内膜症の場合、排便時に痛みを伴うことも多いです。対処法
自分ですぐできる対処法としてはロキソプロフェンやイブプロフェンなどの痛み止めを飲むことです。これらの痛み止めは痛みや炎症の原因物質であるプロスタグランジンの産生を抑える作用があります。生理の度に毎回痛みがある場合は、月経が来そうな日の数日前から定期的に痛み止めを飲み始めることで、症状を軽くできる可能性が高まります。 体を温めるという方法も、生理痛改善にも効果がある可能性があるといわれているため、生理中のお尻の痛みにも効果が得られる可能性があります。 受診すべき科は産婦人科です。気になる場合は、我慢せずに早めに相談することが重要です。生理中におしりが突き上げるように痛い症状で考えられる原因と対処法
同様に子宮内膜症が考えられますが、突き上げるように痛く症状が強い場合は子宮内膜症が広がってきている可能性があります。痛み止めが効きにくい場合も含め、早めに産婦人科を受診しましょう。 また、生理周期と関係なく痛みがある場合は痔などの肛門の病気の可能性もあるため、併せて肛門科の受診も勧められます。生理中におしりがかぶれて痛い症状で考えられる原因と対処法
生理中にお尻がかぶれて痛い場合は、月経血による接触性皮膚炎の可能性があります。 皮膚が赤く腫れたり、痒みを伴う場合もあります。 月経血に長時間皮膚が触れていると起きやすくなるため、生理中で出血が多いときは可能な範囲でこまめにナプキンを交換することで、接触性皮膚炎になる可能性を下げることができます。通気性のよい下着や服を着るのもよいでしょう。また、市販の軟膏なども試してもよいと思います。 まずは産婦人科を受診するので良いのですが、なかなか改善しない場合は皮膚科にも相談が必要になることもあります。また、生理周期と関係なく起こる、座るのも辛いくらい痛みが強い場合は肛門の病気の可能性もあるため、その場合は肛門科も受診しましょう。すぐに病院へ行くべき「生理中におしりが痛い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。 応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。 以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。生理のたびに痛みがだんだんひどくなる場合は、産婦人科へ
生理のたびに徐々に痛みが悪化してくる場合は、子宮内膜症が隠れていて徐々に進行して広がってきている可能性があります。痛み止めがだんだん効きにくくなってくる場合なども、これに該当します。 子宮内膜症が広がると生理痛が強くなるだけでなく、排便時痛や性交時痛、生理じゃないのに骨盤が痛む慢性骨盤痛が生じることがあり、著しく生活の質は低下します。 後程詳しく説明しますが、他にも子宮内膜症は不妊症の原因にもなりうる病気です。このような症状がある時は早めに産婦人科で診察を受けましょう。受診・予防の目安となる「生理中におしりが痛い」のセルフチェック法
- ・生理中におしりが痛い以外に生理痛自体も重く、仕事や日常生活に支障をきたす場合
- ・生理中におしりが痛い以外に排便時の痛みがある場合
- ・生理中におしりが痛い以外に性交時の痛みがある場合
- ・生理の回を追うごとに痛みが増してくる場合
「生理中におしりが痛い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「生理中におしりが痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。子宮内膜症
子宮内膜症とは、子宮内膜と似た組織が子宮の内側以外の部分にできてしまう疾患です。子宮内膜症は生理周期に伴う女性ホルモンの変動に合わせて子宮内膜と同様に増殖し、出血や炎症を起こし生理を重ねるごとに徐々に広がっていきます。 子宮内膜症が生じやすい部位は子宮表面や卵巣、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)膀胱周囲など骨盤内です。まれに肺や腸、臍など、子宮と離れた場所にもできることがあります。 卵巣に子宮内膜症ができると卵巣が腫れてくることがありますが、これをチョコレート嚢胞と呼びます。 生理中のお尻が痛くなる原因としては、ダグラス窩に子宮内膜症が生じた場合に、肛門や肛門に近い直腸で炎症や癒着が生じるためと考えられます。 子宮内膜症の主な症状は、痛みと不妊です。 痛みは、強い生理痛が代表的です。生理中以外の下腹部痛、腰痛、骨盤痛、排便時痛、性交時痛などがある場合は、子宮内膜症が広がり骨盤内に癒着を生じている可能性があります。 また、排卵された卵子を子宮内に運ぶ役割を果たしている卵管が癒着に巻き込まれると卵管の動きが制限されるため、うまく卵子を子宮内に輸送できず不妊症の原因となります。 低用量ピルやプロゲスチンの使用により、子宮内膜症の広がりや進行を抑えることができます。また、生理痛の改善も図ることができます。 チョコレート嚢胞ができている場合、手術で摘出することもあります。 生理痛がひどい方、徐々にひどくなって生活に支障をきたしている方は子宮、卵巣に見た目の異常がなくてもこれらの表面などに子宮内膜症が隠れている可能性があります。子宮内膜症で生じたお腹の中の癒着は、一度できてしまうと基本的には元には戻りません。 痛みで苦しむだけでなく、将来的に不妊症になる可能性もあるため、生理痛で困っている方は早めに産婦人科を受診しましょう。子宮腺筋症
子宮腺筋症とは、子宮内膜と似た組織が子宮の壁の中、すなわち筋層内にできてしまう疾患です。子宮内膜症が、子宮の筋層内にできたと考えればよいでしょう。 子宮腺筋症で起こる症状は、強い生理痛と過多月経です。 過多月経とは、月経血が異常に多い状態を指し、貧血の原因にもなります。ナプキンを変える頻度が増えたり、経血の中にかたまりが混じるなどの症状は、過多月経の可能性があります。 その他にも、子宮腺筋症は慢性的な骨盤痛や不妊症の原因になることもあります。 子宮腺筋症が子宮に存在するだけでは生理中のおしりの痛みは生じないことが多いですが、子宮腺筋症では子宮内膜症を合併していることもあり、その場合生理中のお尻の痛みを生じることがあります。 子宮腺筋症も、子宮内膜症と同様に月経周期に伴うホルモンの変動で徐々に大きくなっていきます。 治療については、子宮内膜症と同様な薬物治療を行います。将来妊娠希望がない場合は子宮全摘術を行うことで根治的な治療を行うこともあります。 生理痛が強いと思って過ごしていると子宮腺筋症が隠れている可能性もあります。また、知らず知らずのうちに貧血になり、身体が悲鳴を上げていることもあります。やはり生理痛が気になる方、生理痛で困っている方、経血が増えたと感じている方は早めに産婦人科を受診しましょう。「生理中におしりが痛い」ときの正しい対処法は?
ときどき「なるべく薬に頼らないようにしている」「痛み止めはくせになるので使わないようにしている」という方にお会いするのですが、症状をうまくコントロールするには適切に薬の力を借りることも重要です。もちろん、副作用などの可能性もゼロではないので、医師や薬剤師と相談しながら使うことをおすすめします。 生理中にお尻が痛い場合や生理痛が強い場合、痛みの原因物質であるプロスタグランジンは生理の前から増加してくるため、その産生を抑えるロキソプロフェンやイブプロフェンなどは生理予測日の数日前から痛みを予防するようなイメージで内服し始めるとより痛みを抑えることができます。 また、便秘などで便が固く、排便時の痛みも伴うような方であれば便を柔らかくするタイプの下剤を使用することにより症状を緩和できる可能性があります。酸化マグネシウムなどがこれに該当します。 もちろん、薬だけに頼りすぎず少しでも心配や異変があれば病院を受診することは忘れないでいただきたいです。「生理中におしりが痛い」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「生理中におしりが痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
生理中におしりが痛いのは何科の病院で相談できますか?
吉田 悠人(医師)
生理周期に伴って生理中に周期的に痛みが生じる場合は、産婦人科に相談しましょう。
生理中のおしりの痛みが強いのは子宮内膜症なのでしょうか?
吉田 悠人(医師)
生理痛に伴って周期的に痛みがある、生理の回数を追うごとに痛みが強くなる場合は子宮内膜症の可能性は十分に考えられます。早めに産婦人科に相談することをおすすめします。
生理中のおしりの筋肉が痛い・トイレで痛くなるのは病気ですか?
吉田 悠人(医師)
痛みの原因物質のプロスタグランジンによる症状の可能性もあるため必ずしも病気とは限りませんが、気になる場合は病院を受診し相談しましょう。
まとめ
生理中にお尻が痛くなる・・・一見子宮や卵巣と関係なさそうですが、これまで解説してきたように子宮内膜症が隠れているサインの可能性があります。子宮内膜症は最悪の場合不妊症の原因にもなるなど深刻な影響を身体に及ぼす可能性があります。少しでも気になる場合は、早めに産婦人科を受診し相談しましょう。「生理中におしりが痛い」症状で考えられる病気
「生理中におしりが痛い」から医師が考えられる病気は2個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。 毎回痛みでお悩みの方は、早めに産婦人科で相談することをお勧めします。「生理中におしりが痛い」に似ている症状・関連する症状
「生理中におしりが痛い」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。関連する症状
- 排便時のおしりの痛み
- 性交時の痛み
- おしりから突き上げるような痛み
- おしりがキューっと痛い
- 生理痛 寝れない
- 右のおしりが痛い
- 尾てい骨の痛み
【参考文献】
・婦人科外来編 2020(産婦人科診療ガイドライン)