「近視」になるリスクの高い人の特徴はご存知ですか?近視になる原因も解説!
小中学生を中心に近年増加傾向にある「近視」とは、眼球の奥行きを示す「眼軸長」が伸びることで遠くのピントが合わせにくくなる状態のことです。
近視の発症には遺伝子的な素因と生活環境が深く関連しているといわれています。
特に、パソコン・タブレット・スマートフォンなどの普及により、幼いうちから視力の低下を生じるケースが多いです。
また後天的な近視の他には、先天性疾患によるものが挙げられます。生まれつき眼球に異常がみられる場合には、眼鏡などで視力を矯正できないケースも考えられるでしょう。
今回は、近視の原因・種類・発症するリスクが高い人の特徴も解説します。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
近視の原因
近視の原因は明らかではないものの、主に2つの因子が深く関連していると考えられています。それは遺伝と生活環境です。
ここでは、それぞれの関連因子について詳しく解説します。
遺伝
親が近視の場合には、高い確率で子どもに遺伝するといわれています。特に、親が強度の近視である場合には子どもにも幼児のうちから強度の視力低下がみられるケースが多いです。また、両親が正視である子どもと比較して、親が近視である場合には明らかに近視を生じる確率が上がります。
片親が近視であれば確率は2倍に、両親が近視であれば確率は約5倍にもなるといわれています。また両親が正視である場合でも、祖父母や曾祖父母の代で強い近視があれば、子どもに遺伝することは考えられるでしょう。
生活環境
生活環境も近視の原因の1つです。特に近くを見ることが多い生活環境であるほど、近視による視力の低下が発生しやすいと考えられています。
例えば以下のようなものです。
- 勉強
- 読書
- テレビ
- パソコン
長時間文字を見続けたりテレビゲームやパソコン作業を続けることにより、発症するのではないかといわれています。しかし、このような生活環境にいても視力が低下しない子も存在します。そのため、生活環境だけが視力不良の原因とはいい切れません。遺伝因子や生活環境が複雑に関連していることが考えられます。
近視の予防には、太陽光が効果的なことも明らかになっています。太陽光に含まれるバイオレットライトを浴びることで近視の抑制効果が期待できるのです。狭い空間で長時間近くを見続けるような生活は避け、屋外はできる限り外で過ごすような心がけが重要だといえるでしょう。
特に、成長期の子どもの場合には、現在の生活習慣によって今後の生活が大きく変わることも考えられます。眼鏡の装着が必要となれば、日常生活で不便に感じることがあるかもしれません。子どもの視力低下を予防できるように家族が協力して生活を見直すことも重要です。
近視の種類
単純近視
多くの場合、近視は眼軸長が伸びることによって発生し、眼鏡などでの矯正が可能です。このような状態を「単純近視」といいます。
近視の程度は屈折度によって以下のように分類されます。
- 弱度近視:-3.00D以下
- 中等度近視:-3.00D超え、-6.00Ⅾ以下
- 強度近視:-6.00D超え
なお、屈折度の単位は、「ジオプトリ-(D)」と表します。単純近視の多くは、遺伝によるものや生活環境によるものです。
例えば、長時間の読書・勉強・パソコン・スマートフォンなどの使用によってピント調節を行うことで徐々に眼軸長が伸びてしまいます。このような状態では眼鏡などでの矯正は可能ですが、一度伸びてしまった眼軸長が元に戻ることはありません。
病的近視
一方、病的近視の場合は眼軸が長いことに加え、眼球自体が変形している状態です。眼の奥に位置する網膜・脈絡膜・視神経などに病変がみられ、眼鏡などを装着しても正常な視力に矯正できません。
病的近視の目安は年齢によって以下のように定められています。
- 5歳以下:-4.00Ⅾ超え
- 6~8歳:-6.00D超え
- 9歳以上:-8.00超え
近年、病的近視の予防や治療方法の研究が進められています。また、非常にまれではありますが、「先天近視」というものがあります。
通常、乳幼児の視力は軽度の遠視です。そして眼球が成長することで正視へと次第に近づいていきます。多くの場合、明らかな視力低下がみられ始めるのは学童期ですが、幼少期から強度の近視を生じることもあるのです。先天近視は、先天性の疾患に伴うことが一般的です。
視力が障害される原因疾患には、以下のようなものが挙げられます。
- スティックラー症候群:関節の軟骨組織や目の中に存在する硝子体に異常がみられる先天疾患です。顎が小さく目が突出するなどの特徴的な顔貌や強度の近視などを伴います。
- マルファン症候群:全身のあらゆる結合組織が脆弱になる遺伝性疾患です。骨格の異常や心臓血管の異常をはじめ、目の水晶体の異常や強度の近視などがみられます。
- 家族性滲出性硝子体網膜症:目の網膜血管の形成不全によって引き起こされる遺伝性の疾患です。目立った症状がみられないこともあれば、強度の視力不良がみられることもあります。
- 早発型緑内障:先天性の発達異常により視神経が障害され、眼瞼けいれんや角膜混濁など様々な目の症状がみられます。生後1歳までに発症することが多い先天性の疾患です。
- 先天停止性夜盲:生まれつき夜盲がみられる疾患です。夜盲とは暗い場所で目が見えにくくなる状態を指します。この病気では、5〜10歳頃に視力低下によって発見されることが多いです。
なお、未熟児として生まれた場合には、発育不全により視力不良を生じることがあります。
近視になるリスクが高い人の特徴
近視の原因として、遺伝因子や生活環境が深く関連していることは先に述べました。それを踏まえ、ここでは視力が低下するリスクが高い人の特徴をご紹介します。
家族が近視
先にも述べましたが、近視には遺伝子が関わっているといわれています。家族が視力不良の場合には、発症するリスクが高まるでしょう。
また、遺伝的な要因だけでなく、家族であれば生活環境が同じ状況であることが多いです。例えば、屋外での活動時間が短く、長時間近くでテレビを見ていたりスマートフォンでゲームをしていたりすることで近視のリスクが高まります。
さらに、遺伝子系の疾患により病的近視が発症することも考えられるでしょう。
寝る時間が遅い
寝る時間が遅くなった場合、その分起きる時間も遅くなり、昼間の屋外での活動時間が短くなることが懸念されます。実際に、屋外での活動時間が長い人ほど近視になりにくいといわれています。
これは、太陽光に含まれるバイオレットライトに近視の抑制があるためです。夜更かしにより屋外での活動時間が短くなり、屋内で過ごす時間が増加すれば、その分視力低下のリスクが上がってしまうでしょう。できるだけ早い時間に寝て、太陽の光をたっぷり浴びることが大切です。
睡眠時間が短い
睡眠時間が短いことも視力不良のリスクを上げる原因となります。まず睡眠不足は、睡眠のリズムを崩す引き金となるでしょう。
先にご紹介した「寝る時間が遅い」と重なる部分もありますが、睡眠不足により生活リズムが崩れてしまえば、屋外で活動的に過ごせなくなる可能性があります。睡眠不足により健康状態が保てなくなった結果、屋内で長時間テレビを見たりスマートフォンでゲームをしたりする時間が増えてしまうかもしれません。
また、目を休めるための休息時間が不足することで毛様体筋の緊張状態が続き、視力低下が進みやすくなることも考えられます。身体の健康のためにも、目の健康のためにも、規則正しい生活を心がけるようにしましょう。
病院に行ったほうが良い症状は?
「近視かもしれない」と思ったら早めに病院受診を検討しましょう。
行くならどの診療科が良い?
主な受診科目は、眼科です。
問診や診察に加えて細隙灯顕微鏡検査、精密眼底検査、屈折検査などが行われる可能性があります。
病院を受診する際の注意点は?
基本的に眼鏡やコンタクトなどをかけた状態で十分な視力が出るか調べることができます。
治療をする場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。
ただし、視力の維持・向上については有効性・安全性として確立されている治療法は極めて少なく、また自由診療の範疇であることが多いため、費用は医療機関によって異なります。
まとめ
遺伝子的な素因や普段の生活環境によって視力が低下してしまう「近視」について解説しました。
近視による視力低下は近年増加傾向にあり、パソコン・タブレット・スマートフォンなどの使用との関連が懸念されています。
リスクを高める生活としては、長時間の屋内作業・夜更かし・睡眠不足などが挙げられます。
全ての近視が遺伝子や生活習慣に関連して発症するとは限りませんが、生活習慣を見直し、視力低下を予防することが大切です。
近視症状の病気
関連する病気
- スティックラー症候群
- マルファン症候群
- 家族性滲出性硝子体網膜症
- 早発型緑内障
- 先天停止性夜盲
- 網膜有髄神経線維