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「ICL」は長期的に見たらコンタクトレンズよりもお得? 費用や保証期間を医師が解説!

 公開日:2025/05/02

ICLの治療を考えている人にとって、特に気になるのが費用面だと思います。レンズの種類によって治療が大きく異なるため、何を選んだらいいか迷っている人も多いのではないでしょうか。また、高額なレンズを購入するため保証期間も気になるところです。そこで今回は「きくな湯田眼科」の湯田先生に、ICL治療の費用と保証期間などについて、解説していただきました。

湯田 健太郎

監修医師
湯田 健太郎(きくな湯田眼科)

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浜松医科大学医学部医学科卒業、東京大学大学院医学系研究科修了。その後、横浜南共済病院、横浜市立大学附属病院、ハーバード大学医学部などで経験を積む。2021年、神奈川県横浜市に位置する「きくな湯田眼科」の副院長に就任。医学博士。日本眼科学会専門医。日本神経眼科学会、日本眼科手術学会の各会員。横浜市立大学附属病院眼科客員講師、日本大学医学部附属板橋病院眼科兼任講師。

ICLとは? レーシックとの違いは?

ICLとは? レーシックとの違いは?

編集部編集部

まず、ICLについて簡単に教えてください。

湯田 健太郎先生湯田先生

ICLは、近視・遠視および乱視の矯正を目的とした治療法で、目の中にレンズを入れて見え方を矯正します。日本では2003年から臨床治験が開始され、2010年に厚生労働省の認可を得た比較的新しい治療法です。

編集部編集部

レーシックとの違いはなんでしょうか?

湯田 健太郎先生湯田先生

レーシックは角膜をレーザーで削り、角膜の形状を変えることによって視力を矯正します。その一方で、ICLは角膜を削る必要がないため、レンズが合わなくなったなど、万一の場合にはレンズを除去することで元に戻すことができるという違いがあります。加えて、レーシック手術の場合、角膜が薄い人は手術を受けられないことが多かったのですが、ICLの場合には角膜の厚みに関係なく治療を受けることができます。そのほかにも、レーシックと違ってICLは、強度近視や強度乱視でも受けることができるメリットもあります。

編集部編集部

レーシックと比べて適応範囲が広いのですね。

湯田 健太郎先生湯田先生

そうですね。さらに、レーシックと比較して、光が滲んだりギラギラして見えたりする「ハローグレア」や「ドライアイ」などの症状の出現が少ない点もメリットと言えるでしょう。特に、夜間に運転する機会が多い人などは、レーシックよりICLの方が適しているかもしれません。

編集部編集部

様々な違いがあるのですね。

湯田 健太郎先生湯田先生

視力の立ち上がりの良さにも違いがあります。レーシックは、術後1週間はあまり見えないことが多いのですが、ICLは見えるようになるまでが早いという特徴があります。また、レーシックよりもICLの方が、近視の戻りが少ないというのもメリットです。

ICLの治療費

ICLの治療費

編集部編集部

ICLは保険適用になりますか?

湯田 健太郎先生湯田先生

いいえ、保険適用外なので全額自己負担になります。手術は、両目で50〜80万円が目安になります。ただし、確定申告の際に医療費控除を受けることができます。

編集部編集部

費用に幅があるのはなぜでしょうか?

湯田 健太郎先生湯田先生

費用は選択するレンズによって異なります。ICLのレンズには、作りや材質の違いによって様々な種類があります。大きく分けると「ICL(Implantable Collamer Lens)」「IPCL(Implantable Phakic Contact Lens)」「アイクリル」の3種類があります。IPCLとアイクリルレンズは、ハイブリッド親水性アクリルで作られたレンズで、もともと老眼対策の眼内コンタクトレンズとして登場しました。ただし、3種類のレンズは素材や構造が違うだけで、基本的に性能の違いはありません。

編集部編集部

どれを選択すればいいのですか?

湯田 健太郎先生湯田先生

ICLもIPCLも手術の方法は同じですが、IPCLの方がサイズの選択肢が多いという特徴があります。また、納期にも違いがあり、ICLは発注してからレンズが納品されるまで約2週間であるのに対し、IPCLは2カ月程度かかります。

編集部編集部

なぜ、IPCLは納期が遅いのですか?

湯田 健太郎先生湯田先生

ICLは、あらかじめ製造されたレンズのストックの中から、患者さんに適したレンズが選択されます。一方、IPCLは患者さんごとにサイズや度数が調整されたカスタムレンズであり発注後に製造されるため、納品までに時間がかかるのです。

編集部編集部

レンズの国内承認について教えてください。

湯田 健太郎先生湯田先生

ICLは国内で唯一承認が得られているレンズである一方、IPCLやアイクレルは国内未承認のレンズであるため、海外から個人輸入する必要があるからです。もちろん、海外での使用実績は豊富で安全性も確立されていますが、日本におけるIPCLは医師の責任のもと個人で使用します。補償制度の手厚さはICLが勝るものの、実際のところIPCLによる有害事象は起きていないので、そのあたりは心配しなくても大丈夫でしょう。

ICLの注意点

ICLの注意点

編集部編集部

レンズを選ぶ際の注意点があれば教えてください。

湯田 健太郎先生湯田先生

1つの目安として、「早く手術を受けたいならICL」「費用を抑えたければIPCL」を選択するといいでしょう。例えば、大切な試合やイベントがあって、すぐに手術を受けたいならICLを選んだ方がいいかもしれませんね。ただし、医療機関によって考え方は異なると思うので、詳しくは医師にご相談ください。

編集部編集部

ほかにも、レンズ選びの注意点はありますか?

湯田 健太郎先生湯田先生

IPCLには、単焦点と多焦点のレンズがあります。単焦点とは遠方、近方、中間距離のいずれか1カ所にピントを合わせるレンズのことで、多焦点とは複数にピントを合わせられるレンズのことです。多焦点の方が近くも遠くも見えるようになるので一見良さそうに思えますが、実際には見え方がぼんやりしていたり、ハローグレアの危険性があったりします。そのため、当院では単焦点を選ぶ患者さんの方が圧倒的に多くなっています。どのような見え方を希望するかを考え、医師と相談しながらレンズを選びましょう。

編集部編集部

保証期間はどれくらいですか?

湯田 健太郎先生湯田先生

「視力が合わない」「サイズが合わない」といった理由でレンズを交換する場合、日本のメーカーであるスターサージカルは術後半年以内なら無料でレンズを交換してくれます。ただし、手術やそれに伴う費用は保証外であり、医療機関の確認が必要です。その一方、IPCLの場合は、そのようなレンズ保証がありません。ただし、例えば当院のような「ICLと同じく、半年以内ならレンズ費用はクリニックが負担してレンズ交換をおこなう」などの保証制度を設けている医療機関もあります。保証制度は医療機関によって異なるため、術前に必ず確認するようにしましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

湯田 健太郎先生湯田先生

現在、ICLの治療を受ける患者さんが増えています。その一方、まだ「怖い」「危険なのではないか」といった不安を抱えている人も多いかもしれません。しかし、コンタクトレンズにもリスクは伴います。例えば「コンタクトレンズを装着した状態で眠る」「コンタクトレンズをつけたまま温泉やプール、サウナへ行く」「期限以上にコンタクトレンズを使う」といった不適切な使用を続ければ、目に害が及ぶこともあります。また、費用面でも「ワンデーのコンタクトレンズなら10年間、ツーウィークのコンタクトレンズなら20年間継続使用するとICLと同等の金額になる」とされています。もしICLの治療を受けるかどうか悩んでいる場合には、ぜひ信頼できる眼科医に相談いただければと思います。

編集部まとめ

ICL治療は決して費用的に安くはないものの、コンタクトレンズを長年使用し続けることを考えれば、それほど高いものでもありません。後悔のない治療を受けるには、保証内容や費用についてしっかり医師に確認することを忘れないようにしましょう。

医院情報

きくな湯田眼科

きくな湯田眼科
所在地 〒222-0011 神奈川県横浜市港北区菊名4-3-11
アクセス 東急東横線・JR横浜線「菊名駅」 徒歩1分
診療科目 眼科

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