「ICL(眼内コンタクトレンズ)」と「レーシック」の違いを医師が解説 選ぶポイントとは?

ICL(眼内コンタクトレンズ)は、近視や遠視、乱視を矯正するための方法です。どんなメリット、デメリットがあるのでしょうか? また、レーシックと比較してどのような違いがあるのでしょうか? 中原眼科の中原将光先生に話を聞きました。

監修医師:
中原 将光(中原眼科)
ICL手術とは? レーシックとの違いも解説

編集部
ICL手術とは何ですか?
中原先生
ICL(ImplantableCollamerLens/眼内コンタクトレンズ)は、眼内に小さなレンズを挿入して視力を矯正する手術です。事前の検査などは必要ですが、手術自体は日帰りでおこなうことができ、安全性も高いため近年人気が高まっています。
編集部
どんな人が受けられますか?
中原先生
原則的に、21歳以上45歳以下で中程度以上の近視や乱視、またはその両方がある人が対象です。角膜の厚みが薄くレーシックの適応でない人や、特にコンタクトレンズの度数が-6Dという度数より強い人に向いています。ただし、眼の状態によっては受けられないこともあるため、事前の検査が必要です。
編集部
同じく視力矯正手術である「レーシック手術」についても教えてください。
中原先生
レーシック手術は角膜の表面をレーザーで削って視力を矯正する手術で、比較的短時間で終わり、回復も早いのが特徴です。レーシックは角膜を削って視力を矯正するのに対し、ICLは眼内にレンズを挿入するという違いがあります。ICLでは「低次収差」といわれる単純な近視や乱視しか矯正できないことに対し、レーシックでは「高次収差」という視界のぼやけや歪みを治せて、矯正精度が高いというのもメリットです。
編集部
「ICL手術は、術後になにかあっても元に戻せる」と聞きました。
中原先生
「元に戻せる」という言葉が適切かどうかわかりませんが、なにかあったときレンズを取り外すことが可能というのは事実です。しかし実際は、ICLも簡単に元に戻せるものではありません。巷では「レーシックは一度やると戻せない。ICLは戻せる」と強調しすぎる傾向も見受けられますが、そこは慎重に考えていただきたいと思います。
編集部
レーシックとICL、どちらがよいということではないということなのですね。
中原先生
基本的には対象となる人が違うだけで、どちらもよい手術といえます。ICLは強度近視の矯正に適している一方で、目の中にレンズを入れる手術になるため、眼内炎などのリスクがありますし、レンズを挿入するために3mmの切開創ができてしまいます。レーシックは角膜の表面しか処理せず眼内の操作はおこなわないため、こうしたリスクがなく、安全性は高いといえます。また「高次収差」を矯正できるためコンタクトレンズやICL手術では視力が出ない人でも矯正が可能なことがある点や矯正精度が0.01D刻みととても高いというメリットもあります。
レーシックと比較したICLのメリット・デメリット

編集部
あらためてICL手術のメリットを教えてください。
中原先生
レーシックでは矯正が不可能な強度近視を矯正できること、ドライアイのリスクが少ないことがメリットです。
編集部
では、ICL手術のデメリットとは?
中原先生
前述の3mmの切開創ができてしまうことや、術後に「ハロー・グレア」と呼ばれる光のにじみを感じることがレーシックよりも多いという報告もされています。また、60歳以降になれば必ず白内障を発症していきますが、レーシックでは白内障になったときなにもおこなう必要はありません。一方、ICLの場合には手術時に必ず抜去しなければならないというデメリットも存在します。また、レーシックと同様に健康保険の適用外となるため、手術費用が高額に感じるかもしれません。
編集部
手術の際の注意点も教えてください。
中原先生
まず、適応検査をしっかり受けることが大事です。術後は一定期間、目をこすらない、激しい運動を控えるなどの制限があります。また、手術後の定期検診を欠かさず受けることも重要です。
ICLとレーシック、選ぶポイントは?

編集部
ICL手術はどこで受けても得られる効果は同じですか?
中原先生
医療機関によって設備や医師の技術に差があり、手術の結果や効果も異なる可能性があります。より安全な手術と高い効果を得るためには、経験豊富な医師を選ぶことが大切です。ICL手術で使用する手術機器は白内障手術で使用するものと同じですので、よりよい手術機械を導入している医療施設の方がよいと言えます。またICLを受けられるほとんどの人が、強度の近視です。強度の近視の人は網膜剥離や白内障の発症リスクが数倍から十倍以上と言われていますので、それらの疾患に対応できる施設であればより安心です。
編集部
ICLとレーシックで迷っている人はどうしたらよいでしょうか?
中原先生
日本眼科学会が屈折矯正手術のガイドラインを定めています。以前は「軽度〜中等度の近視(-6D以下)はレーシック手術、強度の近視(-6D以上)はICL手術が好ましい」とされていましたが、2019年2月に「-3D~-6DでもICLの慎重適応」と改訂されました。このように、近視の程度によってどちらの手術適応かは分けられており、-6D以上の方は残念ながらレーシック手術は選べませんのでICL手術になってしまいますが、-3D~-6Dの近視の人は、どちらも選ぶことができます。どちらかだけに対応している医療機関だと、自院でおこなっている方法を勧める傾向にあり、本当にご自身に適した治療法かわかりにくくなる可能性があります。特にレーシック手術は大規模の医療機関でなければおこなっていないことがほとんどですので、理由なくICL手術に傾きがちです。迷っている方は、ICLとレーシックの両方を扱っているクリニックに相談することをお勧めします。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあればお願いします。
中原先生
ICLもレーシックも外科手術であり、メリットだけでなくリスクやデメリットがあります。手術を検討する際は、よい点だけでなくリスクも丁寧に説明してくれる施設を選ぶことが大切です。また、手術そのものについてももちろんですが、たとえば将来的に網膜剥離などになった場合に対応できるかどうかなども、術前に確認しておくとよいでしょう。
編集部まとめ
ICL手術は、角膜を削らずに視力を矯正できる画期的な方法ですが、費用やリスク、デメリットも考慮する必要があります。また、医療機関や施術する医師によって設備や技術が異なるため、経験豊富な医師やICLの認定医がいるクリニックを選ぶことが重要です。興味がある方は、信頼できる医療機関に相談してみるとよいでしょう。
医院情報
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診療科目 | 眼科 |