「目が充血」する原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
目が充血しているとき身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が充血で考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
和田 伊織(医師)
「目の充血」で考えられる病気と対処法
ある日突然「目が充血」したという経験は、皆さん誰しもあるかと思います。ではその充血がどのような意味を持つのかということまでご存知でしょうか。一般的には数日から1-2週間経てば治るため、あまり気にしていない方も多いでしょう。しかし、なかには見過ごすことができない充血が隠れている場合があります。
目の充血で考えられる原因と治し方
まずは充血がなぜ起こるのかについて解説していきたいと思います。皆さんもご存知の通り、充血になると目が赤くなります。これは、目の白い部分(=結膜)にある血管の色です。この血管が、何らかの原因で膨らみ、赤い色をした血液が血管内に充分に満たされることで「充血」が起こります。
充血にも種類があります。私たち眼科医は、どの血管が膨らんだかにより充血の種類を分けています。例えば、「結膜充血」は最表面の白目の血管が膨らむことで生じます。より深い位置に存在する血管が膨らむことを「毛様充血」、さらに深い位置に存在する血管が膨らむことを「強膜充血」と呼んでいます。余談ですが、「強膜充血」は前2者よりも血管が太く血流が豊富なため、膨らみが盛り上がってみえます。
白目が充血している症状で考えられる原因と治し方
一番馴染み深い白目の充血(=結膜充血)についてです。結膜充血の原因は実に多彩で、感染、アレルギー、ドライアイなどさまざまな病気が関与しています。これは白目自体や白目に近い黒目や瞼など、白目の血管近くに存在する部分に問題がおきると、白目の血管にまで症状が及ぶためです。このようにして白目の部分に炎症が起こった状態を結膜炎と言います。
結膜炎
結膜炎で見られる症状の一番の特徴は「痒み」や「痛み」、そして「目やに」です。目やには見た目によって、細菌か、ウイルスか、それともアレルギーが原因かを予想することができます。通常、細菌が原因の場合、色がついたドロっとした見た目になります。このような目やにを認めたら、まずはお近くの眼科を受診されてください。
また、小さなお子さんでは鼻の詰まりから逆行性に感染を起こすことがあります。これは解剖学的に目と鼻が繋がっているからです。小さなお子さんはその道が短いため、大人と比べて感染しやすくなります。
一方で、ウイルスやアレルギーが原因の場合はどうでしょうか。ウイルスやアレルギーが原因の場合、目やにはさらさらとした見た目になることが多いです。アレルギーに関しては点眼による治療となります。一方、ウイルスには有効な治療法が存在しません。そのため、痛みを和らげたり、二次感染を防ぐような点眼治療が中心となり、自然に症状が治るのを待ちます。ウイルス感染かどうかは、簡易検査キットが存在します。ウイルスは感染力が高く、いわゆる流行り目と呼ばれます。家族間でのタオルの共用を避けたり、お風呂は一番最後に入るなどの工夫が必要となります。
右目だけ・左目だけなど片目の充血で考えられる原因と治し方
症状が片目だけか、両目にもあるかということもやはり重要です。通常、感染はまず片目だけに起こります。ただし、感染力が強い細菌やウイルスになると、時間をおいてもう片方の目にも同じような症状が出てきます。それとは対照的に、アレルギーやドライアイなど、身体反応により生じる病気は、最初から両目発症のことが多いです。その他、結膜充血は飲酒や発熱など、全身状態が血管に影響を与えることで起こることもあります。その場合もやはり両目発症となります。
ストレスで目が充血する症状で考えられる原因と治し方
ストレスにより結膜充血を起こすこともあります。人はストレスを感じると、交感神経という血管に作用する神経の働きが活発になります。また、長期間の交感神経の興奮は涙の分泌を抑え、充血の原因であるドライアイが起こることが分かっています。原因となるストレスを取り除ければ一番良いのですが、中々難しいと思いますので、まずは気持ちを落ち着けて交感神経の働きを抑えます。また、ドライアイなど、交感神経の働きにより起こる病気の治療を優先しましょう。
黒目の周辺が充血している症状で考えられる原因と治し方
黒目の充血(=毛様充血)についてお話します。この充血は黒目の周辺が放射状に充血しているのが特徴で、黒目から遠ざかるほどその色調は薄くなります。原因となる主な病気は、ぶどう膜炎や角膜炎です。ぶどう膜炎は、突然の視力低下や痛みなどが主な症状です。原因はさまざまありそれに対応した治療を行うことになります。角膜炎は、涙の分泌が低下するなどで黒目に傷がつき、そのバリア機能が破られることで起こります。
すぐに病院へ行くべき「目の充血」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
眼が飛び出てきたり、拍動する雑音を自覚する場合は、眼科・脳神経外科へ
通常、血管には「動脈」と「静脈」が存在します。このうち静脈は、目から頭にかけて存在する多くの血管と連絡しているため、何らかの病気で白目の静脈が充血する場合、頭の大事な部分に病気が存在する可能性があります。感染やドライアイ、アレルギーにより起こる充血との違いは、目やにがほとんど出ないことです。
もし、目が飛び出てきたり、拍動する雑音を自覚したり、ものが二重に見えたり、頭痛が起きたりする症状が現れた場合、内頚動脈海綿静脈洞瘻という脳血管の異常が原因かもしれません。放置すると視力が低下し、失明に繋がります。放置していると脳出血をきたすこともありますので、必ず眼科、もしくは脳神経外科を受診されてください。
「目の充血」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「目の充血」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
結膜炎
結膜、つまり、白目とまぶたの裏側を覆っている半透明な膜の部分に炎症が起きた状態です。主な症状は黄みがかった目やにが出現して、白目が充血することです。原因は細菌やウイルスによる感染や花粉などのアレルギーなど多岐にわたります。細菌感染であれば抗菌薬を、アレルギーであれば抗アレルギー薬の点眼などで治療します。多くの場合、1−2週間で治ります。
ぶどう膜炎
ぶどう膜炎とは、白目より深い位置に存在する膜(ぶどうの色をしている)が腫れることで起こります。「突然の視力低下」や「痛み」、「羞明(=まぶしさ)」などが主な症状になります。原因は様々で、細菌により起こることもあれば、自己免疫系の反応として起こることもあります。この病気は目の局所的な問題だけでなく、全身に関連する病気が隠れている可能性がありますので、上記のような症状が突然起こった場合、必ず眼科を受診されてください。必要に応じて血液検査や画像検査(CTやMRI)、他科との連携を行います。
翼状片(よくじょうへん)
翼状片とは、白目の部分(結膜)の細胞が異常に増えて、黒目の部分(角膜)へ入り込んでしまう目の病気です。まるで鳥が翼を広げた形(三角形)をしています。原因は不明ですが、紫外線やコンタクトレンズの長期装用、慢性的な乾燥などが関連すると考えられています。問題がなければ経過観察となりますが、進行して角膜が歪み乱視が進行したり、整容面で気になる場合には手術治療が必要になります。
角膜炎
角膜炎とは黒目の部分(=角膜)に起こる病気を指します。原因は細菌やウイルス、真菌(カビ)と様々です。黒目に傷がつき、そのバリア機能が破られることで起こります。角膜に神経が通っており、そのため小さなゴミや髪の毛が入っただけでも痛みが生じます。また、瞬きをすることで、入った異物を押し出すことができます。このように、通常、黒目部分は傷が入らないようにしっかりと守られています。しかし、ドライアイで涙の分泌が少なくなってしまっていたり、コンタクトの不規則な使用により傷が入ると、そこから感染します。治療は点眼が主ですが、角膜炎は予防が大事ですので、日頃からコンタクトなどの扱いには十分注意しましょう。
ドライアイ
ドライアイに関しては、粘っこい目やにを伴うことが多いです。治療にはドライアイの改善が必要です。まずは市販のドライアイ点眼でも構いませんが、ドライアイにも様々なタイプが存在しますので、改善がなければやはり眼科に相談されてください。
「目の充血」があるときの正しい対処法は?
目の充血があるときには、コンタクトレンズが充血の原因になっている可能性もありますので無理に着用しないようにしてください。普段からメガネも用意しておきましょう。
また、アイメイクについてもアレルギーの原因になる場合がありますので、控えることも考慮しましょう。
瞼を冷やすことでかゆみや痛みが和らぐことがありますが、治るわけではありません。逆に温めることで血管が拡張して、赤みが増すことがあるので注意が必要です。
まずは原因を突き止めることが早く治すためには必要です。気になる症状が出たら眼科を受診するようにしましょう。
「目の充血」におすすめの市販目薬は?
目の充血の原因がアレルギーやドライアイである場合は市販目薬を使用して構いません。
症状を緩和させる市販目薬の例としては、アレルギーなら抗アレルギー点眼、ドライアイならドライアイ点眼など、原因に応じて適切な目薬を使用しましょう。アイボンのような洗浄液は、目の表面に必要な物質まで洗浄してしまう可能性があるので、充血中の使用は控えましょう。
自己判断では悪化することもありますので、原因や病気を診断するためにも眼科を受診することをお勧めします。
「目の充血」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「目の充血」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
目の充血が続いていて治らないのは、眼科で治療できますか?
和田 伊織(医師)
原因によるかと思います。充血とは血管が膨らんだ状態ですので、原因を取り除くことで改善することもあります。しかし、長期間の充血や原因によっては、一度膨らんだ部分が完全には元どおりにならずに赤みが残る場合があります。
目が真っ赤に充血しているけど痛くないのは放置しても大丈夫ですか?
和田 伊織(医師)
たまに充血ではなく、結膜下出血といって出血が起こっている場合があります。その場合、見た目は派手ですが2-3週間で自然に吸収されていきます。ただし、判断が難しい場合もありますので、気になる症状がありましたら先ずは眼科を受診されてください。
朝起きると目が充血していて目やにが多いのは結膜炎でしょうか?
和田 伊織(医師)
目やにの色にもよります。特に色が付いているものは感染が疑われます。色が付いていない場合ですと、例えばドライアイに伴う症状が考えられます。
目の充血は脳の病気のサインでしょうか?
和田 伊織(医師)
特に目やにを余り伴わない慢性的な充血は要注意です。一度、眼科を受診されてください。
まとめ
今回、「充血」をテーマに解説させていただきました。「たかが充血、されど充血」。充血にも様々な種類や原因がありますので、気になる症状があれば必ず近くの眼科を受診されてください。また、目やにの色や、症状がどちらの目に出ているかなど、受診の際にお伝えくだされば私たち医師が診断する手がかりになりますので非常に助かります。ぜひご自身でも観察してみてください。
「目の充血」に関連する病気
「目の充血」から医師が考えられる病気は18個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
眼科の病気
脳神経外科の病気
- 海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻
目の充血は様々な原因により起こります。適切に診断することが重要ですので、まずは病院を受診しましょう。
「目の充血」と関連のある症状
「目の充血」と関連している、似ている症状は12個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「目の充血」の他に、上記のような症状を伴う場合には、「ドライアイ」「アレルギー性結膜炎」「ぶどう膜炎」「角膜炎」「海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻」などの疾患の可能性が考えられます。目の充血の多くは数日から1-2週間経てば治りますが、なかには重篤な病気のサインである場合もあります。たかが充血と思わずに病院を受診しましょう。