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「角膜炎」とは?治療期間・自然治癒するのか・原因も併せて解説!【医師監修】

 更新日:2023/08/21
「角膜炎」とは?治療期間・自然治癒するのか・原因も併せて解説!【医師監修】

角膜炎は眼球のくろ目の部分を覆う透明な膜(角膜)に傷がつき、そこから細菌やカビに感染するなど、さまざまな原因によって炎症が起きる病気です。

もしもある日突然、目が開けていられないほど痛む・大量の涙が流れる・目がかすむなど辛い症状に見舞われたら、それは角膜炎かもしれません。

この記事では角膜炎を引き起こすあらゆる原因や症状・検査・治療方法・放置するリスクなどについてご紹介しています。

大切な目を角膜炎から守るために。また角膜炎による目の不調をいち早く快方に導くために、ぜひご参考になさってください。

荒井 宏幸

監修医師
荒井 宏幸(医療法人社団ライト みなとみらいアイクリニック)

プロフィールをもっと見る
防衛医科大学校卒業。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院などで近視矯正手術・白内障手術を中心に診療経験を積んだ後、2010年に現職の「医療法人社団ライト」理事長に就任。医学博士。日本眼科学会認定眼科専門医。みなとみらいアイクリニック主任執刀医、クイーンズアイクリニック院長、防衛医科大学校非常勤講師。自身もレーシック手術を受けている。講演・出演・著書など多数。

角膜炎の症状と原因

コンタクトレンズを入れる女性

角膜炎はどのような病気なのか特徴を教えてください。

  • 角膜炎は何らかの原因によって角膜に炎症が起こる病気の総称です。角膜炎を起こす原因は感染性・外傷性などをはじめ、その他にも目にまつわる他の病気に起因するもの・免疫力の低下に起因するものまで多岐にわたる特徴があります。それらの症状は数日間ほどで改善する軽症から、状態が悪ければ治療に数年かかる場合や視力低下や失明にいたってしまうケースなどもあります。たとえ最初の症状が軽度でもそのまま放置しておくと悪化する恐れがあるため、まずは原因を究明し適切な治療をすることが大切とされる病気です。

どのような症状が現れますか?

  • 角膜炎になると主に以下のような症状が表れます。
  • 目の痛み
  • 異物感・違和感(ゴロゴロする)
  • 視力低下
  • くろ目がにごる
  • まぶしさ
  • 目のかすみ
  • 涙が出る
  • まぶたが腫れる
  • これらの症状は基本的に角膜についた傷から発症するため、両目ではなく片目のみに表れることがほとんどです。

角膜炎を発症する原因を教えてください。

  • 一般的な角膜炎はゴミや砂などの異物が目に入り、角膜に傷がつくことから始まります。目がゴロゴロする・かすむ・痛むなどの違和感から手で目をこすり、その傷から細菌などに感染して炎症が起きることが原因です。角膜に傷がつく原因は異物が入るほか、外傷・ドライアイ・逆さまつげ・コンタクトレンズの連続装用などや、ときには原因不明の場合もあります。一般的な症例ではありませんが関節リウマチから発症する例や、池や沼などの淡水や水道の中にも存在する微生物(アメーバ)によって引き起こされる例も増加傾向にあることがわかってきました。また、発熱や紫外線被爆・ストレスなどが引き金となり、角膜炎を引き起こす原因となることもあります。

ストレスが角膜炎の原因となることもあるのですね。

  • 人間の体はストレスにさらされると免疫力が低下する傾向があります。すると、もともと体の中に保有していた「ヘルペスウイルス」が免疫力の低下にともなって活動を再開し始めることが原因です。唇や口の周りに水ぶくれができる口唇ヘルペスが一般的に知られていますが、ヘルペスウイルスが角膜に現れることもあり、それを「角膜ヘルペス(ヘルペス性角膜炎)」といいます。ストレスに起因する角膜炎は適切に処置をすれば1〜2週間ほどで快方に向かいますが、再発を繰り返すことが多いという特徴がある症例です。

角膜炎の検査方法と治療方法

目を診察する医者

角膜炎の検査方法を教えてください。

  • 角膜炎の検査で最初に行われるのは問診・視診・細隙灯顕微鏡(スリットランプ)検査です。まず問診で発症のきっかけ(異物混入・外傷など)や症状が続いている期間・既往歴の有無などを聞いたうえで角膜の症状を見た目で診察する「視診」を行います。つぎに行われるのは角膜の状態を詳しく検査する「細隙灯顕微鏡(スリットランプ)検査」です。この検査では眼に光を当て反射を顕微鏡で拡大しながら、角膜の表面や内部の状態など眼球の細かな組織を診察します。また感染性の角膜炎を疑う場合には炎症を起こしている角膜の表面をこすり取り、感染の有無やどの病原体が増えてくるのかを調べる「培養検査」が有効です。さらにヘルペスウイルスに起因する角膜炎を疑う場合はナイロンの糸で角膜を刺激して検査する「角膜知覚検角膜知覚検」という検査を行います。角膜炎の原因はさまざまなため、問診・見た目・症状・角膜の状態・感染の有無などを詳細に検査したうえで総合的に判断します。

どのような治療方法がありますか?

  • さまざまな検査を行って角膜炎の原因が特定できたら、症状に合わせた治療を行います。例えば、コンタクトレンズの連続装用など誤った使い方による角膜炎の場合はコンタクトレンズの使用を控える・感染性の場合は抗菌薬などの目薬を使用する・逆さまつげ・ドライアイなどの病気が原因の場合はその治療を行うなどといった治療方法です。治療には炎症や痛みを抑える「非ステロイド性抗炎症薬(点眼薬)」や眼の炎症を抑える「副腎皮質ホルモン(眼科用外用薬)」・細菌の増殖を阻害する「抗菌薬(点眼薬)」などを使います。また症状によっては内服薬による治療や点滴を行うこともあります。

治療期間はどのくらいかかるのか目安を教えてください。

  • 角膜に傷がついただけの場合はおよそ2~3日もあれば快方に向かうことがほとんどです。
    さらにその傷から細菌に感染した細菌性角膜炎の場合はおよそ1ヵ月が治療期間の目安となります。またヘルペスウイルスによる角膜ヘルペスの治療期間はおよそ1~2週間ほどですが、再発しやすい症例のため快方に向かっても引き続き注意が必要です。さらに、まだ特効薬が存在しないアメーバ感染による「アカントアメーバ角膜炎」という症例の場合は治療が数年に及ぶ可能性があります。このように角膜炎の治療期間は原因によってそれぞれ異なるため、眼科医に診察してもらったうえで、よく確認することをおすすめします。

角膜炎は自然治癒することはあるのでしょうか?

  • 眼球の上皮に小さな傷がついた程度の場合は自然治癒する可能性がありますが、すでに角膜に炎症が起こっている角膜炎には自然治癒は期待できません。それはこれまで申し上げてきた通り、角膜炎の原因はじつに多岐にわたるため「角膜にちょっと傷がついただけだろう」などという自己判断で自然治癒を期待するのは大変危険といわざるを得ないからです。軽症なうちにいち早く眼科医で適切な検査をすれば治療も短期間で済む場合がほとんどですが、放っておくと症状が悪化し治療がさらに長引いてしまうことは否めません。角膜炎は自然治癒を期待せず、すぐに眼科医で診察してもらうことをおすすめします。

角膜炎の注意点

注意を促す看護師

市販の目薬で治すことはできますか?

  • 角膜炎の治療に市販の目薬を使用することは可能ですがおすすめはできません。なぜなら角膜炎を起こしている原因を自分で特定することはほぼ不可能であり、危険をともなう行為であるといわざるを得ないからです。目が痛い・かすむ・涙が出るなどといった症状は、人によって原因や程度も違うため治療方法が異なる場合があります。角膜炎を疑う眼の異常を感じたら自己判断で治療せず、必ず眼科医を受診なさってください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 「結膜炎」は一般的ですが、「角膜炎」はあまりなじみがありません。しかし、角膜(くろめ)は物を見るための大切な「窓」なのです。
    「窓」が汚れていたり、曇っていたりすると景色が良く見えないのと同じように、視力が低下するのです。角膜も結膜(しろめ)と同じように表面に露出していて、細菌やゴミ、ホコリなどにさらされていますので、炎症を起こす可能性があるのです。
    角膜炎が起こり、元通りにキレイに治らないと、視力は低下したまま元に戻ることはありません。
    そうした意味で、角膜炎はとても重要な目の病気なのです。
    コンタクトレンズが普及してから、角膜炎を起こす人がとても多くなりました。コンタクトレンズは、本来は眼科で処方しなければならない医療用具なのですが、最近ではインターネットで購入できてしまうため、眼科医のチェックを受けずに何年も使い続けている患者さんをよくみます。コンタクトレンズを使っている人は「角膜炎」のことを良く認識して、必ず定期的な目のチェックをして下さい。
    私たちの前身をカバーしている「皮膚」はとても強力なバリアーで、細菌やウイルスなどが付着しても簡単に通れません。しかし、目は粘膜がむき出しになっている器官なので、皮膚ほどバリアー機能が強くないのです。
    「目」は快適な一生を送るために最も重要な器官と言えます。100歳まで生きても、目が見えなければ楽しいはずがありません。
    目の奥の網膜や視神経の病気は、なかなか避けられないものもありますが、角膜炎は日常のちょっとしたケアや注意で避けられることが多い病気です。
    是非、この記事を良くお読みになり、日頃から目のケアを十分に行うことをお勧めします。

編集部まとめ

患者に説明する医者

角膜炎は眼球のくろ目にあたる部分の角膜に何らかの原因によって炎症が起こる病気です。

考えられる原因は感染性・外傷性・ドライアイ・関節リウマチなどの病気の影響によるもの・疲れやストレスから引き起こされるものなどたくさんの種類があります。

最初は些細な症状から始まることが多い角膜炎ですが、放置しておくと比較的早いスピードで症状が進行し視力低下や失明などを招いてしまうリスクがともないます。

角膜炎を疑う症状が表れたら、必ず眼科医の早期受診と早期治療を心がけることが大切です。

この記事の監修医師