「歯茎がかゆい」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
歯茎がかゆいのは、何が原因なのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる原因や病気・日常でできる予防法や対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院に相談してください。
監修歯科医師:
今井 裕子 歯科医師
奈良県立医科大学附属病院歯科口腔外科で研修後、同大学大学院にて法医学の博士課程を修了。
2015年より、医療法人 小向井歯科クリニックにて勤務している。大学院時代には、司法解剖の歯牙鑑定も行っていた。
現在は、クリニックにて一般歯科、口腔外科、小児歯科などを行っており、日々治療に奮闘中。また、訪問診療にも携わっている。
医学博士。日本老年歯科医学会会員。
「歯茎がかゆい」症状の対処法と考えられる原因・病気
急に歯茎が「かゆい!」と違和感を覚えたことはありませんか?そんなときに考えられる原因や予防法、歯科医院での治療について解説します。お口のことで何か気になる症状があるときは、迷わず歯科を受診してください。
歯茎がかゆい症状で考えられる原因と対処法
お口の中の感覚は敏感です。痛いとまではいかなくても、いつもと違う感じがしたことは誰しもあると思います。原因にはさまざまなものが考えられ、病気や体調の変化が隠されていることがあります。ここではかゆい症状で想定できるケースについて説明します。
かゆい症状には、軽い痛みや違和感が含まれます。歯茎がかゆい症状の原因としてもっとも多いものには、炎症が考えられます。炎症とは刺激や感染に対する身体の防御反応で、発熱(熱っぽさ)・腫脹(腫れ)・疼痛(ずきずき痛む)・発赤(赤み)がよく見られます。歯茎に炎症の強い症状が出る前にかゆい感覚(掻痒感)に気づくことがあるでしょう。
お口の中に炎症をもたらすものとして、歯肉炎、歯周病が考えられます。また、歯の治療でおきる一時的な炎症や、治癒の段階としてかゆみを感じることもあるかもしれません。抜歯やインプラントの手術のあと、急激に歯茎が治っているときにも生じることがあります。
歯茎がかゆいときに受診する主な診療科は歯科・口腔外科です。歯肉や口腔粘膜、歯の病気を調べて治療を行います。緊急性はないので丁寧な治療を受けるために予約を取りましょう。
歯茎がかゆく、腫れている・出血している症状で考えられる原因と対処法
歯茎がかゆく、歯磨きをすると出血するときにもっとも考えられる原因は歯肉炎や歯周病です。細菌によって歯茎の炎症が起きて毛細血管が弱くなり、血が出やすくなります。
また、歯茎が腫れるときにかゆみを感じることがあります。原因として歯周病などのほか、歯の内部にある歯髄(歯の神経)の細菌感染が歯の外側の骨などの歯周組織に及ぶ根尖性歯周炎や、親知らずの周りに起きる智歯周囲炎などが挙げられます。
このようなときは、歯科医院でレントゲンや歯周病検査などを受け、原因を調べて適切な治療を受けましょう。
また、食べ物のカスが歯のすき間に挟まっていたり、汚れが取りきれていないと歯茎のかゆみや出血の症状が起きることがあります。ご自身ですぐにできる処置として、デンタルフロスや歯ブラシでやさしく歯磨きをすると症状が落ち着くことがあります。歯茎からの出血を怖がってきちんと歯を磨かない方がいらっしゃいますが、お口を清潔にすることは大切です。歯茎から出血している箇所の血液は、炎症の成分などが含まれた悪い血液なので、しっかり歯磨きで出すようにしましょう。
応急処置で症状がなくなっても、なるべく早めに歯科を受診するようにしましょう。
歯茎がかゆく、荒れている症状で考えられる原因と対処法
お口の粘膜にも皮膚と同じように病気が起き、違和感やかゆみを覚えることがあります。代表的なものとしては、アフタ性口内炎(楕円形の浅い潰瘍)が起きるとき最初に弱い痛みとして感じるようです。
また、扁平苔癬(へんぺいたいせん)という粘膜の病気があります。頬粘膜や舌、唇などで白いレース状に粘膜が角化して周囲が赤くなるのが特徴です。発症には金属アレルギーや遺伝、自己免疫疾患、ストレス、代謝障害などの原因が考えられています。
ヘルペス性口内炎でも初期にかゆみが出ることがあります。ウイルスによる感染で、歯肉の発赤、腫脹(腫れ)やびらん(粘膜が荒れてただれた状態)が特徴です。しだいに症状が強くなり強い痛みが出ることが少なくありません。
お口の粘膜の病気は、歯科のほか、皮膚科や内科などで全身性の原因を調べる必要がある場合があります。歯茎の症状だけであれば緊急性は低いですが、早めに受診しましょう。
歯茎がかゆく、盛り上がっている症状で考えられる原因と対処法
かゆい症状を伴って歯茎がかたく盛り上がるのは、歯が生えるときに見られます。乳歯が生えるときや、永久歯の生え変わりのほか、大人でも親知らずが生えるときにかゆいことがあるでしょう。
乳歯や永久歯の萌出(歯が生えること)の際のかゆさについては、特に心配はいりませんが、気になることがあれば歯科で相談ができます。
親知らずの場合は腫れたり、痛みが出る症状が続くことがあるので、早めに歯科を受診してください。
ストレスで歯茎がかゆい症状で考えられる原因と対処法
また、歯茎のかゆみはストレスが原因と考えられる場合もあります。日本歯周病学会は、ストレスによる精神の緊張状態は免疫応答に影響するため、歯周病の重症化に関連するとしています。
ほかにも、アフタ性口内炎(楕円形の浅い潰瘍)や扁平苔癬の発症にはストレスが関与していると言われています。
近年、歯周病が全身の健康に関係していることが指摘されています。(歯周病と全身の健康)
口腔粘膜は体の状態を反映するため、歯茎がかゆい症状が歯や歯肉に限った原因ではないこともあります。歯茎のかゆさや違和感をお口に覚えたときは、まず歯科を受診してください。
かゆさや違和感をお口に覚えたときは、まず歯科を受診してください。皮膚科や内科などと連携して治療が必要になることもあります。
子供の歯茎がかゆい症状で考えられる原因と対処法
生後6-9ヶ月ごろ、下の歯(乳切歯)が生えるとき、赤ちゃんがむずがることがあります。言葉では伝えられないので泣いたり嫌がったりすることがあるでしょう。約6歳以降に永久歯が生えてくる時もかゆいというお子さんがいます。特に治療は必要ありませんが、歯並びの心配などで治療が必要になることもあります。定期検診で経過を見ていくことが一番です。
また、手足口病やヘルパンギーナなどではお口の中に水疱ができるため、かゆみを訴えることがあります。全身の症状で気づくかもしれませんが、小児科の受診が必要です。
子供は症状を的確に表現できないことがあります。心配であれば気軽に歯科や小児科を受診してください。
すぐに病院へ行くべき「歯茎がかゆい」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
歯茎がかゆく、発熱や息苦しさなど体の症状がある場合は、歯科・内科・小児科へ
親知らずのまわりや、粘膜疾患による歯茎のかゆみは全身に影響を及ぼす症状の始まりのことがあります。このような場合では、なるべく早めに歯科を受診しましょう。歯茎だけでなく、発熱や息苦しさなど、体の症状が出ているときは内科、子供であれば小児科などに早めに相談する必要があるケースもあります。
「歯茎がかゆい」に関する症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「歯茎がかゆい」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
口腔アレルギー
食べ物によっておきる口腔アレルギー症候群で、お口の中にかゆみが出ることがあります。
アレルギーのある患者さんに、果実や野菜に含まれる抗原の交差反応(抗原と似た構造のアレルゲンによっておきる)が生じる症状です。原因となる食べ物を食べた直後から数分後に唇や口腔、咽頭に刺激やかゆみが誘発されます。自然に消えることもありますが、強い全身症状などにつながることもあります。
アレルギーの重篤な症状であるアナフィラキシーショックが起きたときは、緊急性がありエピペンなどの処置や救急車を呼ぶ必要がある可能性も否定できません。
アレルギーのある方はこのような状況も想定し、アレルギーが専門の内科や皮膚科を日頃から受診してください。
歯周病(歯肉炎・歯周炎)
歯茎に限られた炎症である歯肉炎と、さらに広く歯周組織におきる歯周炎を含みます。口腔内の細菌によって発症することが主な原因です。そのほか、薬物や遺伝などの背景があることもあります。近年では糖尿病やHIVなど免疫に関係する病気や妊娠によるホルモンバランスの影響など全身的な因子との関係が研究されています。喫煙や肥満、ストレスが悪化因子です。歯科を受診して検査を受け、歯科衛生士などプロによる歯石取りやその他の歯の治療を受けることで改善が見込めます。正しい歯磨きなどの予防や定期検診をおすすめします。
歯の萌出(子供の歯の生え変わり、親知らず)
歯が生えるときにかゆみや違和感、痛みがある場合があります。乳歯や永久歯が生える時の症状であれば、特に治療の必要がないことがほとんどですが、気になるようであれば歯科を受診しましょう。
大人になって生える親知らずでは、治療が必要になることがあります。腫れや痛み、開口障害、発熱など強い症状が続くことがあります。定期検診であらかじめ相談しておくことが一番ですが、症状が出たら早めに歯科を受診しましょう。
「歯茎がかゆい」症状の正しい対処法・気をつけたい処置方法は?
歯茎がかゆい症状で気をつけられることにはどんなことがあるでしょうか。歯周病が原因で起きることがよくあり、セルフケアとしては正しいブラッシングが挙げられます。虫歯の予防にはフッ化物入りの歯磨きが世界的に推奨されています。歯みがきの仕方については歯並びなどといった人によって異なるお口の中の状況に合った方法があるため、口腔衛生について歯科で指導を受けましょう。
歯科治療の後でかゆみなど違和感を覚える方もいます。治癒の過程での一時的なこともあるでしょう。たとえば、仮歯をいれたあとに歯茎が気になるのは、清掃がしにくいことが原因かもしれません。どうしても気になる場合は歯科医師に相談しましょう。
かゆみや違和感で患部を触ることがこわくて歯みがきができないという声をきくことがありますが、むしろ丁寧にお口の中をきれいにして細菌を取り除くのが原則です。ただ、状況にもよるので、歯科を受診してください。
「歯茎がかゆい」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「歯茎がかゆい」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
歯茎がかゆい場合、歯医者ではどのような治療をするのでしょうか?
今井 裕子 歯科医師
まず、レントゲンや歯周病検査などによって診断を行い、必要な治療を行います。歯周病であれば、歯石や感染の原因を取り除く治療をし、歯みがき指導などでメンテナンスや予防によって安定した状態に導くのが治療の流れです。
粘膜疾患やアレルギーなどでは口腔外科や内科、小児科、皮膚科などの専門科に紹介することもあります。
歯列矯正の治療中に歯茎がかゆくなることはありますか?
今井 裕子 歯科医師
歯科治療中に歯が動くことで、歯根膜という歯の周りにある組織が刺激を感知し、痛みやかゆみを感じることがあります。
歯ぐきのむず痒さとストレスやホルモンバランスは関係がありますか?
今井 裕子 歯科医師
歯茎のむず痒さの原因となる歯周病や粘膜疾患は、ストレスやホルモンバランスと関係があるといわれています。歯茎の状態は体の健康とつながっているのです。
歯肉がかゆくて違和感があるとき強めに歯磨きをしても大丈夫ですか?
今井 裕子 歯科医師
歯茎のかゆみは、お口のなかの汚れが元で炎症の原因になることがあります。しかし、強めに磨いてしまうと逆に歯茎を傷つけてしまう可能性があるので、やさしく丁寧に歯磨きをしてください。お口の状況にもよるので、歯磨きの仕方などについても気軽に歯科で相談してください。
まとめ
歯茎のかゆみには歯周病や粘膜の病気、歯が生える時など、さまざまな原因が考えられます。原因によっては全身に関係する強い症状になることがあるので、まずは歯科を受診して、原因を調べましょう。お口の健康は身体のためにも大切です。日頃から定期的な歯科検診を受けることをおすすめします。
「歯茎がかゆい」で考えられる病気と特徴
「歯茎がかゆい」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
アレルギー科の病気
- 口腔アレルギー
歯周病をはじめとした歯や歯茎に関わる病気であることが多いのですが、全身性の病気が関与する場合もあります。
「歯茎がかゆい」と関連のある症状
「歯茎がかゆい」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「歯がかゆい」他に、これらの症状が見られる際は、「扁平苔癬」「手足口病」「歯周病」「アフタ性口内炎(楕円形の浅い潰瘍)」などの病気の存在が疑われます。
なかなか治らない場合は、早めに医療機関への受診を検討しましょう。