伊井先生
動物の魅力を知るきっかけとなったエピソードを教えてください。
坂上さん
子どもの時から学校帰りに猫がいると、勝手に拾ってきて親にお願いしてというのを繰り返していたので、小さい頃から動物が家にいるのが当たり前の生活でした。きっかけというよりは、動物といるのが当たり前という状態でしたね。
伊井先生
いろんな動物と暮らされていると思いますが、どのような生活を送っているのですか?
坂上さん
犬が12匹と猫が8匹の大家族ですから、朝は3時20分くらいに起きて、メールチェックや事務仕事をして、5時から朝の散歩をスタートします。世話が終わるのが8時半くらいなので、いつも3時間半くらいかかりますね。
伊井先生
そんなにいると大変というか、生活の中心になりますね。
坂上さん
はい。プライベートはないです。ゼロですね。
伊井先生
動物と関わる中で、糧となったことは何かありますか?
坂上さん
学んだことというか、突き詰めるとよっぽど動物の方が偉いな、やっぱり人間ってダメだなってことですね。
伊井先生
なんとなく言わんとしていることはわかりますね。
坂上さん
犬だけで10匹以上いるとなると、犬種もバラバラですし、育ちもバラバラです。それでもみんな折り合いをつけるんです。それは猫も同じです。じゃあ、犬と猫が仲悪いのかというと、全然仲も悪くないんですよ。この環境の中で暮らしていくということがわかっているから、それぞれが我慢するところは我慢し、自己主張するところは自己主張することで折り合いがつくんです。おそらく人間だけですね。折り合いがつけられないのは。
伊井先生
子育てでも同じですが、子どものほうが柔軟にその場での対応をします。何かにとらわれて意地にならないっていうことは、人間の大人だけが出来ないんです。
坂上さん
そう思いますよね。そもそもの原因は人間ですからね。やっぱり人間はダメなんですよ。なんで人間ってダメになるんですか?
伊井先生
子どもの頃は、ダメではないと思います。
坂上さん
子どものほうが大人のように汚れていないということですか?
伊井先生
汚れていないというよりも、子どもや動物はその場の感覚に基づいて好きな行動をするじゃないですか。ただ、大人になるとどんどん思考の世界に入っていきます。
坂上さん
計算が入る?
伊井先生
はい。計算が入ります。もともとは感覚で生きていたところが、その場の思考で物事を行動するように分別がつきすぎてしまうということですね。
坂上さん
なるほど。
伊井先生
坂上さんが、動物保護を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
坂上さん
この数十年の間でペットの需要が高まる反面、捨てられてしまうペットも増えているという状況を知ったことが大きいです。それまでは、ただ好きで動物を飼っていましたが、しんどい子たちもいるという状況を知り、自分の家で抱えきれる範囲であれば迎え入れようと、保護活動をしている方々と知り合いになり、保護活動が始まりました。
伊井先生
保護ハウスは自然な流れで、普段関わっている動物をもう少し大事にしたいという思いから活動が広がったということですね。
坂上さん
はい。何かを訴えたいという気持ちがない訳ではないですが、自分ができる範囲のことをすることで、動物たちが少しでも幸せになったらという思いが一番です。僕自身、動物と一緒に暮らしてだいぶ助けられたので。
伊井先生
坂上さんにとって、保護犬や保護猫の魅力とはなんですか?
坂上さん
ペットショップで売られている多くの動物は、人間に飼われるための動物だと思っています。その反面、保護犬や保護猫は捨てられたり、虐待を受けたりするなど、それぞれのトラウマを抱えているケースが多いです。そのため、人馴れするまでに時間はかかりますが、逆にいうとそれが動物本来の姿だと思っています。本来、人間に懐くために生まれてきた動物はいない訳なので、懐かないのが当たり前だし、時間がかかるのも当たり前だと思います。人によっては、「なつきが遅い子は可愛くない」とか、「めんどくさい」、「飼いづらい」という人もいますが、それが動物本来の姿なんです。そこに対して人間が待つという姿勢や、見守るという姿勢を見せることが大事だと思いますし、その距離感が僕にとっては貴重ですね。
伊井先生
人間主体でしつけをするのが普通ではなく、動物本来の姿勢に寄り添うというのは本当にその通りだと思います。