複数の呼吸器疾患を予防するワクチンをスタンフォード大が開発、黄色ブドウ球菌やコロナも防御

スタンフォード大学の研究チームが開発した新ワクチン「鼻腔内リポソーム製剤」は、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)や黄色ブドウ球菌など複数の病原体に対して3カ月以上の防御効果を示しました。この研究により、一度の接種で複数の呼吸器疾患を予防するワクチンの実現可能性が実証されました。発表内容や同ワクチンの展望について中路先生に伺いました。
※2026年4月取材。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
研究グループが発表した内容とは?
編集部
スタンフォード大学の研究員らが発表した内容を教えてください。
中路先生
この新しいワクチン製剤をマウスに投与したところ、SARS-CoV-2および黄色ブドウ球菌感染に対して少なくとも3カ月間にわたり、広範囲かつ持続的な防御効果を示すことが確認されました。さらに注目すべきなのは、SARS、SHC014コロナウイルスといった他のウイルス感染、アシネトバクター・バウマニなどの細菌感染、さらにはアレルゲンからもマウスを保護することができた点です。
また、ワクチンを接種したマウスでは、感染後に病原体特異的なT細胞および抗体応答が迅速に誘導され、肺の中に異所性リンパ組織(本来はない場所にできる免疫細胞の集まり)の形成も観察されました。これらの研究結果は、多様な呼吸器疾患に対応可能なワクチンの実現可能性を示すものです。
研究テーマになった「黄色ブドウ球菌」とは?
編集部
今回の研究テーマに関連する黄色ブドウ球菌感染について教えてください。
中路先生
黄色ブドウ球菌感染症は、主に皮膚感染症として表れることが多く、とびひや蜂窩織炎(ほうかしきえん)、おでき(せつ、よう)などの症状を引き起こします。重篤な場合には肺炎、心内膜炎、骨髄炎、菌血症といった全身性の感染症に進行することもあります。特に新生児、糖尿病、免疫抑制状態、血管内カテーテルを使用している患者さんなどは感染リスクが高くなります。
また、一部の菌株は毒素を産生し、食中毒などを引き起こすことがあります。近年では抗菌薬への耐性を示すMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による感染も問題となっています。感染予防のため、日頃から手洗いを徹底し、傷口の適切な処置を心がけましょう。
研究内容への受け止めは?
編集部
スタンフォード大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
中路先生
しかしながら、変異しやすいウイルスや薬剤耐性菌の問題を考えると、病原体ごとにワクチンや薬を作り続ける現在のやり方だけでは限界が見えつつあることも事実です。「万能なワクチン」と呼べるかどうかを判断するには、さらに時間をかけた臨床研究と安全性評価が必要ですが、新しいワクチン開発の方向性を示す一歩として注目すべき研究だと考えます。
編集部まとめ
スタンフォード大学の研究チームが開発した新たなワクチンは、従来の病原体特異的なワクチンとは異なり、複数の呼吸器疾患に対して広範囲な防御効果を示しました。実用化されれば、一度の接種でさまざまな感染症から身を守ることができるかもしれません。将来的には感染症予防の常識が変わる可能性がありますが、現在はまだ研究段階です。今は基本的な感染予防策である手洗い、うがい、適切なマスク着用を継続しましょう。


