「胃腸炎の潜伏期間」はどのくらい?症状・予防法も解説!【医師監修】
公開日:2024/12/28
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胃腸炎はウイルスや細菌によって腹痛や嘔吐、下痢などの症状をもたらし、脱水症状を引き起こします。実際に胃腸炎になられた方や現在入院中の方では、身体や心もしんどいという方も見受けられます。
本記事では、胃腸炎の潜伏期間がどのくらいの期間なのかを紹介しています。
その他にも具体的にどのような症状や治療、予防法があるのかを解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
![中路 幸之助](https://media.medicaldoc.jp/wp-content/uploads/2021/09/f8b530ffab24197ec71d674f5a894edb-263x300.jpg)
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
目次 -INDEX-
胃腸炎の潜伏期間
胃腸炎の原因となるウイルス・細菌を教えてください。
そもそも胃腸炎とは、腸管に炎症が生じ腹部症状(嘔吐や下痢、腹痛など)がみられる状態のことをいいます。一般的に胃腸炎は食物を介したウイルスや細菌に感染した感染性胃腸炎を示すことが多いです。胃腸炎の原因となっているウイルスや細菌にはノロウイルス・ロタウイルスやサルモネラ菌・カンピロバクターなどがあります。
その他の原因としては、胃腸炎には薬剤性やストレスによる過敏性腸炎、大腸の血流が悪くなり循環障害などがあります。
その他の原因としては、胃腸炎には薬剤性やストレスによる過敏性腸炎、大腸の血流が悪くなり循環障害などがあります。
胃腸炎の潜伏期間はどのくらいですか?
胃腸炎の潜伏期間はかかったウイルスや細菌によって異なります。ウイルス性腸炎の場合は1〜3日程度、細菌性腸炎の場合は1〜7日程度とされています。以下はそれぞれの病原体の潜伏期間になります。
- ノロウイルス:24~48時間
- ロタウイルス:3~5日間
- サルモネラ菌:6~72時間
それぞれの病原体によって潜伏期間が大きく異なります。また、黄色ブドウ球菌といった一部の菌は潜伏期間が1日より早い場合があります。
胃腸炎の感染経路について教えてください。
胃腸炎の感染経路は主に2つあります。1つ目は接触感染です。接触感染は、感染源に直接接触し、病原体が付着した手で口や鼻、目などに触れることによる感染です。2つ目はウイルスや細菌に汚染された食品を食べることによる経口感染です。これは、汚染された食品を十分に加熱していない、もしくは感染した方が調理中に手や指を介して水や食品を汚染してしまうことによって発生します。そのなかでも、ウイルスを含む糞便が手指に付着し、これが口などに入り感染を起こすことを糞口感染といいます。排泄物の処理時に起こりやすく、触れないための徹底した予防が大切です。
仕事復帰の目安はどのくらいでしょうか?
厚生労働省の記載では、胃腸炎罹患後の出勤停止期間は定められていません。しかし症状が治まるまでは出勤を控え、療養することが大切です。また、直接食品を取り扱う作業に従事させないことという表記があります。食品を取り扱う業務がある場合は、管理責任者に必ず申し出ることが、自分や周囲の方を守ることにつながるため速やかに報告しましょう。
胃腸炎の症状・治療期間
胃腸炎の症状にはどのようなものがありますか?
主に腹痛や下痢、吐き気や嘔吐の症状がみられます。下痢や嘔吐を繰り返す方や、水のような下痢がみられる方もいます。そのため、トイレから出てくることが難しく、こもりっぱなしになるという方が多いです。病原体によっては発熱や微熱がみられることもあります。特にウイルス性では37度台の微熱が、細菌性やノロウイルスでは38度以上の熱がでることもあるため、体温測定で経過をみていくことも大切です。さらに重症になると、下痢や嘔吐によって体内の水分が奪われてしまい、脱水症状が出てくることがあります。身体の中は塩分や水分のバランスを保っていますが、脱水状態ではバランスが保てなくなり、けいれんを起こすことがあります。特に小さな子どもにみられることがあるので、どのような症状があるのかを確認しておきましょう。
胃腸炎の検査・診断はどのようにして行いますか?
胃腸炎の診断は、まず医師が患者の症状・経過・食事内容・服用中の薬・周囲の感染状況などを詳しく尋ねることから始まります。これにより、胃腸炎の原因や重症度を推測します。感染性胃腸炎が疑われる場合に行われるのが便検査です。ウイルスや細菌の有無を確認します。また、脱水症状や炎症の程度を評価するために実施されるのが血液検査です。特に、発熱や全身状態の悪化が見られる場合に行われます。さらに、重症例や他の疾患との鑑別が必要な場合に行われることがあるのが、腹部のレントゲンやCT検査です。この検査によって、腸閉塞やほかの消化器疾患の有無を確認します。これらの検査結果を総合的に判断し、胃腸炎の診断と適切な治療方針が決定されます。
胃腸炎の治療方法を教えてください。
胃腸炎は経過とともに症状が改善してくることがほとんどです。そのため、対症療法といった現時点でのつらい症状を取り除くための治療が主になります。例えば、吐き気や嘔吐を繰り返している場合は吐き気止めを使用したり、発熱があれば解熱剤、腹痛があれば痛み止めを使用したりします。症状に合わせて治療していくため、医療機関を受診する場合は、つらい症状を伝えることが大切です。原因菌がわかれば抗菌薬の投与も開始できます。ただ、危険なのが、上記の症状でも述べた嘔吐や下痢により脱水状態になることです。水分摂取のために経口補水液を飲むことが大切ですが、水を含むことも難しくなる場合もあります。そのときは医療機関で点滴をして、電解質バランスを整えていきます。入院治療になることもありますが、経過は良好です。
胃腸炎の予防法
食中毒の予防方法を教えてください。
食中毒の予防には、十分な加熱調理が必要です。特に牡蠣などの二枚貝にノロウイルスが多く存在し、ノロウイルスが原因で食中毒になっている方が多く見受けられます。さらに、二枚貝の殻に触れた手で調理すると調理済みの食品にも触れてしまうため、触れた後はしっかりと手を洗うことが大切です。肉類でも食中毒の事例があり、牛や豚の腸管内に存在している細菌が付着していることがあります。肉類もしっかりと加熱してから食べるようにしましょう。厚生労働省では、食中毒を防ぐための3原則を設けています。それは、つけない・増やさない・やっつけるです。細菌を食品につけないためには手洗いをすることです。細菌の増殖を防ぐためには、食品の適切な保管方法を守り、調理後はすぐに食べることを意識しましょう。最後に加熱によって原因のウイルスや細菌をやっつけることが大切です。この3原則を心得て、しっかりと食中毒予防をしていきましょう。
胃腸炎はアルコール消毒で予防できますか?
ノロウイルスやロタウイルスが原因の感染性胃腸炎では、アルコール消毒は効果が十分でないとされています。有効とされているのは、次亜塩素酸ナトリウムの使用や85度以上で1分以上の加熱処理です。さらに、エタノールの使用でウイルスの不活化効果を示したという報告もあります。アルコール消毒はたくさんの菌に対して有効ですが、有効でない菌やウイルスが存在していることがわかっています。
嘔吐物・便の処理をするときの注意点を教えてください。
嘔吐物や便の処理をする際には、排泄物に触れないよう使い捨ての手袋やエプロン・マスクを使用します。手袋がない場合はビニール袋などを活用しましょう。排泄物に触れた手や指が、目や口などの粘膜に触れてしまうと感染してしまうこともあるため、注意が必要です。私たちの身を守るためにも対策をしましょう。実際に排泄物の処理をする際はティッシュペーパーやキッチンペーパーで速やかに拭き取り、ビニール袋などの袋に入れて密閉し破棄します。破棄する際には、次亜塩素酸ナトリウムや亜塩素酸水を含ませることが推奨されています。ウイルスは空気中を浮遊することがあるため、処理をしたあとも換気を十分に行うことが大切です。
編集部まとめ
胃腸炎は潜伏期間は3〜5日程度ですが、腹痛や下痢、嘔吐などの症状が顕著に現れることから、かなりしんどい病気であることがわかりました。
症状が治まらない場合は医療機関への受診をおすすめします。脱水症状には特に注意が必要です。
排泄物に対する処理方法や食中毒の予防は、自分や周りの方の身を守るためにも役立ちます。ぜひこれからの生活に活かしてほしいと思います。