「百日咳」が全国で急増中… “長引く咳”に要注意、重症化リスクや対策も医師が解説

国立健康危機管理研究機構は、2025年5月13日に公式ウェブサイト上で、感染症発生動向調査に基づく2025年第18週(4月28日~5月4日)における百日咳の全国的な発生状況について発表しました。この内容について中路医師に伺いました。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
国立健康危機管理研究機構が発表した百日咳に関する内容とは?
国立健康危機管理研究機構が発表した百日咳に関する内容を教えてください。
中路先生
国立健康危機管理研究機構のIDWR速報データによると、2025年第18週(4月28日〜5月4日)における百日咳の報告数は全国で1746件、累積では1万4267件となり、依然として高い水準での感染拡大が続いています。
都道府県別に見ると、第18週の報告数が最も多かったのは新潟県114件、次いで千葉県100件、東京都92件、兵庫県91件、福岡県87件となっています。これらの地域では、学校や家庭内での感染事例が多く報告されており、集団生活における予防対策が特に求められています。
累積報告数においても、新潟県1028件、東京都982件、大阪府878件、兵庫県772件、福岡県764件など、都市部を中心に多くの症例が確認されています。人口密度の高い地域では感染拡大が加速しやすいため、引き続き注意が必要です。
百日咳とは?
百日咳の感染経路や症状の特徴を教えてください。
中路先生
百日咳は、百日咳菌(ボルデテラ・パーツシス:Bordetella pertussis)を原因とする急性の呼吸器感染症で、けいれん性の激しい咳発作を特徴とします。感染経路は主に飛沫感染や接触感染で、非常に感染力が強いとされています。潜伏期間はおよそ7〜10日間で、はじめは風邪のような軽い症状から始まり、次第に激しい咳に進行していきます。
乳児、特に新生児や生後数カ月の赤ちゃんでは、咳がみられないこともあり、無呼吸発作やけいれん、さらには肺炎や脳症といった重篤な合併症を引き起こすことがあります。一方、成人では咳が長く続くものの軽症で済む場合も多く、診断されずに見逃されるケースも少なくありません。
百日咳の予防には、百日咳を含むワクチンであるDPT、DPT-IPV、DPT-IPV-Hibの接種が有効で、乳児期からの定期接種が推奨されています。周囲に乳児や妊婦がいる場合や咳が長引く際には、早めに医療機関を受診して感染拡大を防ぐための行動を心がけましょう。
百日咳の感染拡大への受け止めは?
国立健康危機管理研究機構が発表した百日咳に関する内容への受け止めを教えてください。
中路先生
新型コロナウイルス感染対策の緩和以降、国内外において百日咳の感染者が増加しています。今後も学童期以降の小児を中心として感染者が増加する可能性があり、ワクチン接種の徹底、基本的な感染対策、耐性菌のモニターなどが重要です。
2025年は百日咳の感染が過去最多水準で拡大しており、「長引く咳」がある場合は百日咳の可能性を考え、早めに医療機関を受診しましょう。また、免疫力をキープするため、規則正しい生活・バランスの良い食事・十分な睡眠をとるように心がけてください。
編集部まとめ
百日咳は重症化しやすい乳児だけでなく、成人も無自覚に感染を広げる可能性があるため、注意が必要です。咳が長引く場合は早めの受診を心がけ、ワクチン接種や手洗い・咳エチケットなど、日常生活でできる予防を意識しておこないましょう。感染の広がりを防ぐために、一人ひとりの行動が大切です。






