イソフラボンで女性の「肝臓がん」リスク増加、研究で判明 摂り過ぎがダメな理由を医師が解説

国立がん研究センターの研究員らは、日本人におけるイソフラボンおよび大豆製品の摂取と肝臓がんリスクの関連性について調査しました。その結果「女性の肝細胞がんリスクは、イソフラボンの摂取量が多いほど高まる」という結果が示されました。この内容について五藤医師に伺いました。

監修医師:
五藤 良将(医師)
研究グループが発表した内容とは?
国立がん研究センターの研究員らが発表した内容を教えてください。

国立がん研究センターの研究員らは、日本人1万9998人(男性7215人、女性12783人)を対象に、イソフラボンおよび大豆製品の摂取と肝細胞がんの関連を調査しました。約11.8年間の追跡の結果、101人が肝細胞がんを新たに発症しました。
解析の結果、女性ではイソフラボン(ゲニステインおよびダイゼイン)の摂取量が多いほど肝細胞がんリスクが有意に高まることがわかりました。一方、男性においては、イソフラボンと肝細胞がんの関連性は確認されませんでした。この傾向は、C型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスに感染している人に限定した解析でも変わりませんでした。この研究結果から、特に肝炎ウイルスに感染している女性では、イソフラボンの過剰摂取が肝細胞がんのリスクを高める可能性があるため、摂取を慎重に考える必要があると考えられます。ただし、観察研究であることから因果関係の断定はできず、今後さらなる研究が求められます。
研究テーマになったイソフラボンとは?
イソフラボンが多く含まれている食品を教えてください。また、イソフラボンを過剰摂取すると、体にどのような悪影響を及ぼしますか?

イソフラボンは、大豆を原料とする食品の多くに含まれており、豆腐や納豆、おから、きな粉、ゆば、煮豆、味噌や醤油など、日本の伝統的な食生活に根ざした食品に豊富です。
近年では、豆乳などの飲料からも手軽に摂取できるようになっています。ただし、大豆イソフラボンを長期間にわたってサプリメントなどで高用量摂取した場合、子宮内膜増殖症のリスクが増加する可能性が報告されています。例えば、150mg/日の大豆イソフラボンを含有する錠剤を5年間摂取したケースが該当します(厚生労働省・食品安全委員会の評価に基づく)。一方で、通常の食事から摂取する範囲ではそのようなリスクは認められておらず、過剰摂取を避けつつ、日常的な摂取を心がけることが推奨されます。妊婦や乳幼児、小児については、サプリメントなどでの摂取は推奨されておらず、食品安全委員会は科学的な安全基準が定められていないことを理由に挙げています。しかし、通常の食品から摂取する範囲では問題ないとされています。安心して適量を意識しながら、バランスよく取り入れていきましょう。
研究内容への受け止めは?
国立がん研究センターの研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

今回の研究結果は非常に興味深いものであり、従来イソフラボンが持つとされていた抗酸化作用や抗がん作用とは異なる側面を提示しています。特に、慢性肝疾患のベースがある女性において、イソフラボンが肝細胞がんのリスクを高める可能性が示された点は注目に値します。
本研究は観察研究であり因果関係を直接証明するものではありませんが、大豆イソフラボンの代謝やホルモン様作用が性差や基礎疾患によって異なる影響を与える可能性を考慮すると、今後は個別化栄養指導の必要性がより高まるでしょう。引き続きさらなる疫学的・機序的研究が期待されます。
編集部まとめ
イソフラボンは健康に良いイメージがありますが、過剰に摂取すると、特に女性では健康リスクが高まる可能性も示唆されています。今回の研究では、イソフラボンの摂取量が多い女性で、肝細胞がんの発症リスクが上がる傾向がみられました。ただし、通常の食事の範囲であれば問題はありません。日々の食事でバランスよく摂取することを心がけましょう。