「認知症」発症リスクは“赤身肉の摂取”で高まる 食肉と認識機能の関連が新たに判明

2025年2月11日、アメリカのハーバード大学公衆衛生大学院らの研究グループがおこなった調査の結果が、医学誌「Neurology」に掲載されました。この研究は、赤身肉の長期摂取と認知症リスクおよび認知機能の関連について調査したものです。この内容について五藤医師に伺いました。

監修医師:
五藤 良将(医師)
研究グループが発表した内容とは?
アメリカのハーバード大学公衆衛生大学院らの研究グループが発表した内容を教えてください。

アメリカのハーバード大学公衆衛生大学院らの研究は、赤身肉の長期摂取と認知症リスクおよび認知機能の関連性を調査したものです。看護師健康調査(NHS)と医療専門家追跡調査(HPFS)を対象とした大規模な前向きコホート研究で、認知症を発症していない参加者を分析しました。食事内容は半定量的食品摂取頻度質問票を用いて評価し、認知機能の指標として「認知症の発症率」「電話インタビューによる客観的認知機能評価」「自己申告による主観的認知機能低下」を用いました。
結果として、加工赤身肉の摂取量が1日0.25サービング以上の参加者は、0.10サービング未満の参加者と比較して、認知症のリスクは13%、観的認知機能低下のリスクは14%高いことが明らかになりました。また、加工赤身肉を多く摂取することで、全般的な認知能力や言語記憶の加齢が加速する傾向も確認されました。未加工の赤身肉についても、摂取量が多いと観的認知機能低下のリスクが16%高くなると示されました。一方で、赤身肉をナッツや豆類に置き換えると、認知症のリスクが19%低下し、認知老化の進行が1.37年遅れるという結果も得られました。
この研究結果から、赤身肉、特に加工品の摂取を抑えることが認知機能の維持に有益である可能性が示唆されました。ただし、研究対象者の大半が白人であり、ほかの人種・民族に同様の結果が当てはまるかは不明です。また、食事データは自己申告によるものであり、正確性に限界がある点も考慮すべきです。今後、より多様な集団を対象とした研究が求められます。
研究テーマになった認知症とは?
今回の研究テーマになった認知症について教えてください。

認知症とは、脳の神経細胞が変化し、記憶や判断力が低下して社会生活に支障をきたす状態を指します。認知症にはいくつかの種類があり、それぞれ原因や症状が異なります。アルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドβが蓄積し、神経細胞が破壊されることで発症し、記憶障害が顕著です。血管性認知症は、脳梗塞や脳出血による神経細胞のダメージが原因で、段階的に進行します。レビー小体型認知症は、幻視や手足の震えが特徴です。前頭側頭型認知症は、感情の抑制が難しくなり、衝動的な行動がみられます。
認知症の初期症状としては、記憶障害、判断力の低下、時間や場所の認識の混乱、性格の変化などが挙げられます。進行を遅らせるためには、生活習慣の改善が重要です。「認知症かな?」と思ったら、1人で悩まず、かかりつけ医や専門外来に相談しましょう。早期診断・治療が、本人と家族の負担を軽減し、希望を持って暮らすことにつながります。
研究内容への受け止めは?
アメリカのハーバード大学公衆衛生大学院らの研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。

今回の研究は、赤身肉の摂取が認知症リスクを高める可能性を示唆する重要な報告です。特に、加工赤身肉の摂取が認知機能低下と関連している点は注目すべきでしょう。以前から、飽和脂肪酸やヘム鉄の過剰摂取が酸化ストレスや慢性炎症を引き起こし、脳の健康に悪影響を与える可能性が指摘されていましたが、本研究は大規模なコホートデータを用いてその関係を示した点で意義深いと考えます。ただし、食事データが自己申告に基づくこと、研究対象者の多くが白人であることなど、いくつかの限界点もあるため、今後は多様な集団を対象とした追加研究が望まれます。いずれにせよ、バランスの良い食事、特にナッツや豆類への代替摂取が認知機能の維持に寄与する可能性が示された点は、日常の食生活に取り入れやすい知見と言えます。
編集部まとめ
今回の研究から、赤身肉が認知症リスクに影響を与える可能性が明らかになりました。食生活の改善は、無理なく取り組める認知症予防の1つです。また、適度な運動や社会活動への参加も脳の健康を支える要素となります。できることから少しずつ取り入れ、将来に向けて健康的な習慣を築いていきましょう。