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水が認知症予防のカギに!? 「天然還元水」で認知機能が改善 研究結果が示す期待と課題とは

 公開日:2024/11/26

東北大学らの研究グループは、「天然還元水が高齢者の認知機能に及ぼす影響を調べたところ、天然還元水を半年間、毎日1L飲んだグループは、水道水を飲んだグループと比べて注意機能や短期記憶に有意な改善がみられた」という研究結果を発表しました。この内容について田頭医師に伺いました。

田頭 秀悟

監修医師
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

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鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

研究グループが発表した内容とは?

東北大学らの研究グループが発表した内容を教えてください。

田頭 秀悟医師田頭先生

今回紹介する研究報告は、東北大学らの研究グループによるもので、研究成果は学術誌「Heliyon」に掲載されています。

研究対象となったのは参加基準を満たした79例で、このうち39例を天然還元水群、40例を水道水群に振り分けました。試験は6カ月間にわたっておこなわれ、ベースラインと6カ月後に認知機能検査と心理的機能検査を実施して、変化を追いました。半年間の試験を完了したのは、天然還元水群の38例、水道水群の37例でした。

被験者から得られた結果を検討すると、天然還元水群では注意機能を評価する検査であるTMT-Aやワーキングメモリーの評価尺度であるDS-Fの結果が、有意に改善したことが示されました。ただ、今回の研究では、試験のために配達した水以外の水分の摂取量や種類を把握していないことや、食事や運動などの交絡因子の情報を集めていないこと、血液検査によるバイオマーカーの変化は調べていない状況でおこなわれています。そのため、研究グループは試験に限界があることを指摘しています。

天然還元水とは?

今回紹介した研究テーマとなった天然還元水について教えてください。

田頭 秀悟医師田頭先生

水素を豊富に含み、還元力を持つアルカリ性の水のことを還元水と言います。還元水は、高周波電圧を水にかけるなどの方法で人工的に用いて作ることもできますが、特に自然環境で作られた還元水を天然還元水と呼んでいます。

天然還元水は、還元力の元となる水素ラジカルを含むことで、酸化抑制作用や抗糖尿病作用があると報告されています。また、がんや免疫疾患などの「酸化ストレス」との関連が指摘される疾患は少なくないことからも注目されています。さらに、酸素消費量の多い脳は、酸化ストレスの元となる活性酸素種に対して特に弱いこともあり、還元力を持つ水素と認知機能との関係も検討されています。

天然還元水を採水できる場所は限られており、ドイツのノルデナウ、メキシコのトラコテが世界的に有名です。日本では大分県日田市でとれる水が天然還元水として知られており、本研究でも「日田天領水」という市販の天然還元水が使用されていたようです。

今回の研究内容への受け止めは?

東北大学らの研究グループが発表した内容について、受け止めを教えてください。

田頭 秀悟医師田頭先生

天然還元水は薬と違って極めて安全性が高いですし、有益な結果も報告されていると思いますが、残念ながら額面通りの意味に受け止めることのできる研究結果とは言えません。まず被験者数が79名と少なく、これは統計学的な評価に耐え得る十分な人数ではないです。また、観察期間も6カ月間と短く、認知機能を評価する期間として不十分です。さらに言えば、論文をよく見ると、天然還元水を飲まなかった人も良い成績が出ているテストバッテリーもあり、生理的変動の範疇である可能性さえ否定できません。

そもそも、天然還元水の健康効果を疑問視する化学研究者の声もあります。たしかに今回の研究結果は魅力的ですし、本当に効果的であれば福音とも言えますが、今回の結果は慎重に受け止めて、今後の研究の発展を期待したいところです。

まとめ

東北大学らの研究グループは、「天然還元水が高齢者の認知機能に及ぼす影響を調べたところ、天然還元水を半年間、毎日1L飲んだグループは、水道水を飲んだグループと比べて注意機能や短期記憶に有意な改善がみられた」という研究結果を発表したことがわかりました。超高齢化社会を迎えた日本では、認知症への対策が避けられない課題です。今回のような認知機能に関する研究は大きな注目を集めそうですが、エビデンスが乏しく信憑性も確かではないので、安易に信じすぎないよう今後の研究を注視したいですね。

この記事の監修医師