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「歯周病」の放置は全身の健康に影響? 歯周病を早期に治療したほうが良い理由を歯科医が解説

 公開日:2023/06/16
歯周病の放置は全身の健康にも影響が? 歯周病を早期に治療したほうが良い理由を歯科医が解説

出血や赤み・腫れといった歯ぐきの症状が気になりつつも、「とくに支障がない」という理由で歯科の受診を先延ばしにしていませんか? しかし、その小さな油断が自身のお口の健康、ひいては体の健康にも悪影響を及ぼしてしまうことがあります。じつは既に歯周病になっているかも……。そこで歯周病を早期に治療した方が良い理由や放置するリスクなどを、はた歯科クリニックの畑先生に解説してもらいました。

畑 勝

監修歯科医師
畑 勝(はた歯科クリニック)

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福岡県立九州歯科大学卒業。大手メディカルグループの歯科医院に入社。同グループの分院長を務めたのち、大阪市阿倍野区で「はた歯科クリニック」を開院。歯科治療の基礎となる歯周病治療に力を入れている。また、患者さんの立場になって考えた治療を大切にし、丁寧な説明や治療中の痛みに配慮した診療に従事している。

歯周病ってどんな病気? 進行のメカニズムや原因について

歯周病ってどんな病気? 進行のメカニズムや原因について

編集部編集部

歯周病はどのような病気なのでしょうか?

畑 勝先生畑先生

端的にいうと「歯を支える骨を溶かす病気」です。歯周病は歯ぐきの腫れや出血といった症状がよくクローズアップされるので、「歯ぐきの病気」と思われる方も少なくありません。ただ、最終的に大きなダメージを受けるのは歯を支える「歯槽骨」という骨で、進行によってこの骨が溶けてしまった結果、自身の歯を残せなくなります。

編集部編集部

歯ぐきの腫れや出血にとどまらず、最終的に骨が溶けてしまう病気なのですね。そこへ行きつくまでに、どのような過程を経て歯周病は進行していくのでしょうか?

畑 勝先生畑先生

歯周病は進行別に「歯肉炎」と「歯周炎」の大きく2つに分類できます。歯肉炎は歯周病の初期に起こる炎症で、歯ぐきの腫れや赤み、出血などが代表的な症状です。歯肉炎は歯ぐきのみに起こる炎症ですが、その炎症がやがてその内側の歯槽骨にまで広がると、「歯周炎」を発症します。歯周炎になると歯を支える骨が溶けていき、歯がグラグラしたり、抜け落ちたりしていきます。

編集部編集部

歯周病の原因は何でしょうか?

畑 勝先生畑先生

直接的な原因は、「プラーク」という細菌の塊の中に生息する原因菌(歯周病原細菌)です。磨き残しにより歯と歯ぐきの境目にプラークが長く停滞すると、原因菌が歯ぐきに感染して歯周病を発症します。ただ、歯周病の発症・進行にはほかにも、体の免疫力や習癖など様々な要因が関係しています。

編集部編集部

いわゆる「歯周病菌」だけが発症や進行の原因ではない、ということでしょうか?

畑 勝先生畑先生

そうですね。例えば、歯ぎしりや食いしばりのある方の場合、普段から歯ぐきや骨に過剰な力が加わることで歯周病が進行しやすい傾向があります。また、糖尿病で血糖値のコントロールがうまくできていない場合も、体の免疫力や修復力が低下して歯周病が悪化しやすくなります。

歯周病は早期発見・治療が肝心! 歯周病を早期に治療したほうが良い理由と放置するリスク

歯周病は早期発見・治療が肝心! 歯周病を早期に治療したほうが良い理由と放置するリスク

編集部編集部

歯周病は早期発見・早期治療が重要と聞きますが、それはなぜでしょうか?

畑 勝先生畑先生

歯周病は一度進行して骨が溶けてしまうと治療をしても完治が難しく、さらにその後の再発リスクも高いからです。近年は「歯周再生療法」という歯ぐきや骨を再生させる治療もかなりレベルアップしていますが、とはいえ溶けた骨を健康な時と同じ状態に回復させるのは困難です。

編集部編集部

つまり、歯周病はある程度進行してしまうと治療をしても治りにくいということでしょうか?

畑 勝先生畑先生

その通りです。歯周病でも炎症がまだ歯ぐきだけにしか起こっていない「歯肉炎」の段階であれば、適切な処置によって元の健康な状態に回復できます。ただ、そこから歯周炎に発展して骨が溶けてしまうと完治が難しくなるわけです。歯周病はそういう病気なので、骨の溶けている量が少ない時期、または溶け始める前の状態の時に発見、治療することが非常に重要となります。

編集部編集部

だから、歯周病は「早期発見・早期治療が大切」といわれるのですね。

畑 勝先生畑先生

もちろん、早期発見・早期治療は歯周病に限らず、むし歯においても重要です。ただ、むし歯は基本的に1本単位で進行しますが、歯周病の場合は1~2本だけかかるというのはめずらしく、通常は数本単位で進行していきます。なかにはお口全体に歯周病が進行しているケースも少なくないため、発見が遅れると数本一気に歯を失う恐れもあります。その点も、歯周病は早期発見・早期治療が重要といわれる理由の1つです。

編集部編集部

歯周病は「自分の歯を失う」というほかにも、何かリスクはありますか?

畑 勝先生畑先生

歯周病は近年、糖尿病や心臓病、脳梗塞、認知症など全身の病気の発症や進行にも影響を及ぼす可能性があることがわかっています。また、妊婦の歯周病については、早産や低体重児出産のリスクが増加することも指摘されています。つまり、歯周病の早期発見・早期治療は自分の歯を残すことだけでなく、このような全身の疾患の発症リスクを減らすことにも関係してくるわけです。

沈黙の病「歯周病」を見逃さないためにはどんなことに注意すべき?

沈黙の病「歯周病」を見逃さないためにはどんなことに注意すべき?

編集部編集部

歯周病を早期に発見するために、日頃からどのような点に注意したらよいでしょうか?

畑 勝先生畑先生

まずは、歯科の定期検診を継続して受けることが肝心です。「沈黙の病」ともいわれる歯周病は自覚症状に乏しく、発見が遅れてしまうことも少なくありません。したがって、症状の有無にかかわらず、歯医者さんで定期的に歯周病の検査を受けるのが早期発見の一番の近道といえます。さらに、ブラッシング時の出血や歯ぐきの腫れなど、気になる症状がみられたら放置せずに、早めに受診することも歯周病を進行させない重要なポイントだと思います。

編集部編集部

ほかにも「こういう症状がでたら放置しないほうがいい」といった歯周病のセルフチェック法があれば教えてください。

畑 勝先生畑先生

歯ぐきの症状のほかに、「お口がネバつく」「歯にものがつまりやすい」「噛むと痛い」「口臭が気になる」といった症状がでたら要注意です。歯周病の早期発見は、このようなちょっとした症状を見逃さないことがとても大切なので、軽い症状でも放置せず受診するようにしてください。

編集部編集部

最後に、読者へメッセージをお願いします。

畑 勝先生畑先生

歯科医院に行くのが「嫌だな」「面倒だな」と感じる方は少なくありません。ただ、歯周病の発症や進行は歯の問題だけでなく、将来的な全身の健康へのリスクにも大きく関わってきます。ご自身のお口の健康、ならびにお体の健康のためにも歯科の定期的な受診をおすすめします。

編集部まとめ

歯周病は発見が遅れると仮に治療をしても完治が難しく、その後の再発のリスクも高くなることがわかりました。歯周病を見逃さず、早期治療に結び付けるためには定期的な歯科への受診のほか、ブラッシング時の出血や歯ぐきの腫れなど小さな異変を放置しないことも重要です。何か気になる症状があらわれたら、時間を置かずにできるだけ早い段階で歯科を受診するようにしましょう。

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はた歯科クリニック

はた歯科クリニック
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診療科目 歯科

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