SNSはタバコ並みの害!? “警告文”表示を求める声「メンタルに深刻な悪影響をもたらす」
アメリカのマーシー医務総監は、ニューヨーク・タイムズへの寄稿で「“SNSには若者の精神衛生を害する恐れがある”との警告文をつけるべき」という指摘をしました。この内容について大迫医師に伺いました。
監修医師:
大迫 鑑顕(医師)
マーシー医務総監が指摘した内容とは?
アメリカのマーシー医務総監がニューヨーク・タイムズへの寄稿で指摘した内容について教えてください。
大迫先生
アメリカ公衆衛生局長官であるヴィヴェック・H.マーシー氏は、「ソーシャルメディアに警告表示を求める理由(Why I’m Calling for a Warning Label on Social Media Platforms)」というタイトルで2024年6月17日付のニューヨーク・タイムズに寄稿しました。
その中で、マーシー氏は「若年者におけるメンタルヘルス危機は緊急事態の状態にあり、ソーシャルメディアはその重要な一因として浮上している」と警鐘を鳴らしています。この論拠として、2019年にアメリカでおこなわれた青少年のメンタルヘルスに対するソーシャルメディアの影響の調査研究の結果などから、「ソーシャルメディアを1日3時間以上使用する青少年は、不安やうつの症状を有するリスクが2倍になる」というデータを引用しています。
こうした問題を改善するためにマーシー氏は、ソーシャルメディアのプラットフォームを運営する企業に対して、「ソーシャルメディアが青少年のメンタルヘルスに重大な害を及ぼす可能性がある」という警告ラベルの表示の義務化や、健康への影響に関するデータを独立した専門家と共有することなどを提言しています。また、学校や家庭における対策としては、「携帯電話に触れない時間を作る必要がある」「子どもがソーシャルメディアにアクセスすることは中学に入るまで待つことが望ましい」という考えを示しています。
一方で、警告ラベルだけでは対策が不十分であり、マーシー氏自身も認識しているように、警告ラベルの義務化が実現するには、議会が法案を可決する必要があります。また、警告だけにとどまらず、使用の制限や禁止に関する法案成立も求められています。IT業界からは規制に反発の声も上がっているようです。
マーシー医務総監の指摘への受け止めは?
アメリカのマーシー医務総監の指摘についての受け止めを教えてください。
大迫先生
商品への警告ラベルと聞くと、一般的によく連想されるのはタバコに掲示されている警告ラベルでしょう。マーシー氏は、アメリカ合衆国保健福祉省のデータを引用して「タバコにおいては警告ラベルが意識を高め、行動を変える可能性があることを示している」としています。タバコと同様に、ソーシャルメディアにおいても注意喚起を促す効果が期待できるでしょう。
その一方、警告ラベルだけではソーシャルメディアが若者にとって安全になるわけではありません。「オンラインでの嫌がらせ」「極端な暴力」「性的コンテンツにさらされる」などへの対策を含めて、専門家を交えた政府内外の多職種で、ソーシャルメディアをより安全なものにするための対策を検討する必要があるでしょう。
若者がSNSを利用する際に注意すべきことは?
若者がSNSを利用する際の注意点を教えてください。
大迫先生
現代の生活はスマートフォンやスマートウォッチなどのデバイスの使用によって、10年前と比較しても格段に便利で効率的な生活を営めるようになったと言えるでしょう。その一方で、スマートフォンから離れる時間が減少し、その結果、睡眠・食事・社会とのつながりに悪影響が出ています。特に子どもは、メンタルヘルスに強い影響を与えてしまうことが想定されます。
マーシー氏が提言するように、家庭や学校でスマートフォンを使用しない時間を設けることが、対策の第一歩になると考えます。また、子どもがソーシャルメディアの使用を制限されると悩むのと同様、親側も制限をすることで悩んだり、罪悪感を覚えたりすることもあるでしょう。社会全体で共通のルールを考えていくことが重要であると言えます。
まとめ
アメリカのマーシー医務総監は、ニューヨーク・タイムズへの寄稿で「“SNSには若者の精神衛生を害する恐れがある”との警告文をつけるべき」と指摘したことが明らかにしました。日本でもSNSを巡るトラブルは起きており、今回のアメリカでの動きは注目を集めそうです。