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妊娠中の睡眠の質が低いと生まれる子どものADHDリスク増加 コロンビア大報告

 公開日:2023/11/14
妊娠中の睡眠不良が子どものADHDなどに関連

アメリカのコロンビア大学らの研究グループは、妊娠中の母親の睡眠状態と約4歳時点の子どものADHD(注意欠如・多動症)の症状や睡眠障害の関係を検討したところ、「妊娠第2期の睡眠の質や時間が不良だと、生まれた子どもの神経発達や睡眠障害のリスク増加に関連がみられた」と報告しました。この内容について馬場医師に伺いました。


馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

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筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

研究グループが明らかにした内容とは?

今回、アメリカのコロンビア大学らの研究グループが明らかにした内容について教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

今回紹介するのは、アメリカのコロンビア大学らの研究グループによる調査で、妊娠中の母親の睡眠状態と約4歳時点の子どものADHDの症状や睡眠障害の関係を検討したものです。研究成果は「The Lancet Regional Health Americas」に掲載されています。研究の対象となったのは794組の親子で、登録時点の母親の平均年齢は32.30歳、子どもの46%が女の子でした。

睡眠調査に回答した妊婦は、妊娠第1期が394人、第2期が564人、第3期は117人でした。睡眠の質について、「非常に良好」と回答した妊婦の割合は初期が最も高く、妊娠週数が進むにつれて減少していきました。また、睡眠時間も妊娠週数が進むほど短くなっていました。その一方、睡眠障害を経験していた妊婦の割合は、妊娠週数が進むほど増加する結果となりました。

妊娠第2期の睡眠時間と子どものADHDの症状との関係は有意で、短時間睡眠の子どものADHD症状レベルが高いことと関係していました。また、妊娠第2期の睡眠の質が低いこともADHD症状レベルの上昇と関係していました。さらに、妊娠第1期の睡眠障害の程度は、子どものADHD症状レベルの上昇と関係し、妊娠第2期の睡眠障害は、子どもの睡眠障害と有意な関係を示したこともわかりました。

ADHDとは?

今回の論文で取り上げられたADHDについて教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

ADHDと診断される子どもは学童期の子どもの3~7%とされており、女の子よりも男の子の方が3~5倍多いと言われています。成人で診断に該当する人の割合は2.5%で、男女の割合は同程度です。ADHDは発達水準からみて不相応に注意を持続させることが困難であったり、順序立てて行動することが苦手であったり、落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難であるなどといった特徴が持続的に認められ、日常生活に困難が起こっている状態です。12歳以前からこれらの行動特徴があり、学校、家庭、職場などの複数の場面で困難がみられる場合に診断されます。場合によっては薬物療法が考慮され、効果の強さや持続時間などが異なる複数の薬剤があるので、主治医と一緒に適切な薬剤の選択していきます。ただし現状、ADHDを根治する薬はありません。

今回の発表内容への受け止めは?

アメリカのコロンビア大学の研究グループによる発表内容への受け止めを教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

今回論文で紹介された内容は、妊娠中の母親の睡眠障害は、妊婦自身だけでなくその子どもにも健康上の影響を与えるという研究結果についてでした。妊婦の睡眠障害はつきものであり、妊娠初期にはつわりなどの症状によって睡眠障害を引き起こします。また、お腹が大きくなると、子宮の圧迫、睡眠時の体位がとれない、胎動などによって睡眠障害が起こりやすくなります。そして、睡眠不足によって妊婦ご自身の「1日のリズムが乱れる」「慢性疲労」「記憶力の低下」「ストレス」「メンタルの不安定」「免疫力の低下」など、様々な健康面への影響があります。

妊娠中の睡眠障害を改善できるような環境作りのサポート体制が重要です。また、妊婦への睡眠障害への治療的介入が、その子どもへのADHDリスクを影響を改善できるかどうか興味があります。さらに、妊娠中の睡眠障害の影響が子どものADHDや睡眠障害だけでないかもしれないので、さらなる研究が待たれます。

まとめ

アメリカのコロンビア大学らの研究グループは、妊娠中の母親の睡眠状態と約4歳時点の子どものADHDの症状や睡眠障害の関係を検討したところ、「妊娠第2期の睡眠の質や時間が不良だと、生まれた子どもの神経発達や睡眠障害のリスク増加に関連がみられた」と報告しました。研究グループは論文で、「妊娠中の睡眠状態の不良、特に妊娠第2期の睡眠の質と持続時間の不良は、幼児期の神経発達障害や睡眠障害リスクと関連する可能性がある。メカニズムの解明にはさらなる研究が必要であるが、本研究は妊婦の睡眠が、早期神経発達の最適化を目的とした介入のための修正可能なターゲットである可能性を示唆している」と考察しています。

原著論文はこちら
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2667193X23001837?via%3Dihub

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