FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 海外論文
  3. 早産児は10~18歳の間に複数の病気にかかるリスクが高くなる

早産児は10~18歳の間に複数の病気にかかるリスクが高くなる

 公開日:2023/10/17
早産児 青年期の多疾患併存リスク増

フィンランドの厚生機関の研究グループは「出生時の在胎週数別に青年期の多疾患併存リスクについて検討したところ、早産児は満期産児と比べて10~18歳時点で複数の慢性疾患を有するリスクが高かった」と報告しました。この内容について武井医師に伺いました。


武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

プロフィールをもっと見る
【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

研究グループが発表した内容とは?

フィンランドの厚生機関の研究グループが発表した内容について教えてください。

武井 智昭 医師武井先生

今回紹介するのはフィンランド厚生機関の研究グループが実施した研究で、学術誌「The Lancet Public Health」に掲載されています。研究対象となったのは、一定の対象期間内にフィンランドで生まれた118万7610人と、ノルウェーで生まれた55万5431人です。

早産と高所得国で青年期の健康状態に支障をきたす代表的な疾患として報告されていた、68種類のアウトカムの関連を検討しました。その結果、満期産と比べて早産で出生した小児に、ハザード比が1.20以上の有意なリスク増加が認められたのは20疾患でした。また、早産での出生は、複数の疾患で入院治療を受けるリスクの増加と関連がみられました。

2つの疾患に対する入院治療の累積発生率について、早産で出生した人では、フィンランドが4.6%、ノルウェーは17.1%で、満期産で出生した人についてはそれぞれ1.9%と9.5%でした。4種類の疾患について、早産で出生した人では、フィンランドが0.6%、ノルウェーは2.5%で、満期産で出生した人についてはそれぞれ0.1%と0.7%でした。満期産で出生した人と比較した早産児の調整ハザード比を推定したところ、1つの疾患にかかるリスクは、フィンランドが1.46、ノルウェーが1.38でした。多疾患併存となる2つの疾患では、フィンランドのハザード比は2.29でノルウェーは1.79、3つの疾患ではフィンランドは3.40、ノルウェーは2.46、4つの疾患となると、フィンランドは4.22、ノルウェーは3.21でした。

研究グループは、「早産での出生は、10~18歳の時点の多疾患罹患のリスク増加と関連がみられた」と結論づけています。

多疾患併存とは?

今回の研究テーマに取り上げられた多疾患併存について教えてください。

武井 智昭 医師武井先生

多疾患併存は、マルチモビディティとも言われています。マルチモビディティは2つ以上の慢性疾患が一個人に併存している状態で、中心となる疾患を特定できない状態を指します。他方で、特定の疾患が中心になり合併症が生じている状態は、コモビディティと区別されています。高齢化や疾病構造の変化によりマルチモビディティ状態にある患者は増加傾向と考えられており、特にプライマリ・ケアにおいて最も重要な臨床上の課題の1つとして認識され、近年研究領域としても大いに注目を集めています。

今回の発表内容への受け止めは?

フィンランドの厚生機関の発表に対する受け止めを教えてください。

武井 智昭 医師武井先生

本論文においては、早産での出生は、10~18歳の時点の多疾患罹患のリスク増加と関連がみられたと結論づけています。こうしたリスクのある児は近年増加傾向となり、医療デバイスを必要とする医療的ケア児も増加しています。多疾患が併存する子どもは、成人になっても継続的なフォローが必要ですが、現時点では小児科医が成人後も診療しているケースが多くあります。今後は内科のかかりつけ医などが多疾患罹患に関しての診療を理解して、しっかりと引き継げる診療体制の構築が必要になると考えます。

まとめ

フィンランドの厚生機関の研究グループが「出生時の在胎週数別に青年期の多疾患併存リスクについて検討したところ、早産児は満期産児と比べて10~18歳時点で複数の慢性疾患を有するリスクが高かった」と報告したことが、今回のニュースでわかりました。マルチモビディティは高齢化が進む中でも注目されていますが、青年期におけるリスクを明らかにした今回の研究も注目を集めそうです。

原著論文はこちら
https://www.thelancet.com/journals/lanpub/article/PIIS2468-2667(23)00145-7/fulltext

この記事の監修医師