新型コロナワクチン“約2.4億回分”破棄へ、厚労省「購入が無駄だったとは思ってない」
厚生労働省は、新型コロナウイルスワクチンの臨時接種が先月末で終了したことに伴い、約2億4415万回分のワクチンを破棄することを明らかにしました。この内容について郷医師に伺いました。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
厚生労働省が発表した内容とは?
厚生労働省が新型コロナウイルスのワクチンについて発表した方針について教えてください。
郷先生
2024年3月まで新型コロナウイルスワクチンは全額公費負担、つまり無料で接種を受けることができましたが、2024年4月からはインフルエンザと同じように原則接種費用の一部自己負担が求められる定期接種に変わりました。
国が直接メーカーと契約して新型コロナウイルスワクチンを確保していましたが、厚生労働省は自治体などに対して使われなかったワクチンは、有効期限内であっても、速やかに廃棄するよう求めています。さらに、国が保管する分も有効期限がきたものから廃棄する方針になっています。今回明らかにされた廃棄の対象は、契約したおよそ9億2840万回分から、接種した分や海外に供与した分などを除いた、約2億4415万回分で、これは、金額に換算すると6653億円に上るものです。
武見厚生労働大臣は記者団に対して、「世界各国でワクチンの獲得競争が継続する中で、その時々の状況を踏まえて必要なワクチンを確実に確保するための対応をおこなってきたので、購入が無駄であったとは考えていない」と述べています。
治療にかかる費用の現状は?
新型コロナウイルスを巡る診療体制について、2024年4月以降大きく変わりました。現在のところ、新型コロナウイルスを予防・治療するためにはどのくらいの費用がかかるのでしょうか?
郷先生
先ほどお伝えしたように、2024年4月からはワクチン接種は自己負担となっています。厚生労働省は、ワクチンの価格が高騰していることから調整をおこない、想定よりも高くなったワクチン費用分も国が補助することを決めています。その結果、定期接種対象者の自己負担額は、最大でおよそ7000円となっています。自治体の独自の補助がある場合は、さらに安くなる可能性があります。定期接種の対象外の人は任意接種となるため、自己負担額は7000円を超える見通しです。
新型コロナウイルスの医療費を巡っては、2021年から治療薬を全額公費で負担をしていましたが、2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に移行したことを受けて、2023年10月に治療薬は所得に応じて3000~9000円の自己負担となりました。そして、2024年4月からは公費負担を全廃しています。そのため、治療薬は窓口負担の割合に応じて1~3割の支払いを求められることになります。具体的に、重症化リスクがある人向けの「ラゲブリオ」は、窓口負担3割の人で約2万8000円となります。また、軽症や中等症向けの飲み薬である「ゾコーバ」は、3割負担の人で約1万6000円となります。入院患者向けに使われる点滴薬「ベクルリー」は、3割負担だと約5万6000円です。
厚生労働省が発表した内容への受け止めは?
今回、厚生労働省が決めた方針について受け止めを教えてください。
郷先生
新型コロナウイルスが5類に移行したことに伴って、様々な予防や治療に自己負担が求められるようになりました。そのこと自体は自然な流れと言えます。ワクチン接種の普及によって、当初の死に至る病から、ある程度様子を見ることができる感染症になったと言えるでしょう。そういった意味で、無料でのワクチン接種は非常に効果的であったと言えます。今後は個人負担となりますが、持病がある場合や高齢者など、重症化の可能性がある人は引き続きワクチン接種が求められます。行政には費用補助を継続してほしいと考えます。
まとめ
厚生労働省は、新型コロナウイルスワクチンの臨時接種が先月末で終了したことに伴い、約2億4415万回分のワクチンを破棄することを明らかにしました。こうした数字1つとっても、新型コロナウイルスが世の中に与えた影響の強さを感じる発表となりました。