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「中年太り」の原因はご存じですか? 名古屋大が世界初のメカニズム解明!

 更新日:2024/03/15

名古屋大学による研究グループは、加齢によって太りやすくなる「中年太り」の仕組みについて研究し、「原因は代謝を促す脳の神経細胞のアンテナが縮むこと」と発表しました。この内容について、中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

名古屋大学が発表した研究内容とは?

今回、名古屋大学による研究グループが発表した研究内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回紹介する研究内容は、名古屋大学らの研究グループが実施したもので、学術誌「Cell Metabolism」に掲載されています。

研究グループが着目したのは、加齢によって太りやすくなる、いわゆる中年太りについてです。これまで、なぜ歳を取ると太りやすくなるのか、そのメカニズムは明らかになっていませんでした。研究グループは、代謝や摂食を調節する脳の視床下部の神経細胞「ニューロン」に着目し、ラットを用いて、抗肥満機能を持つMC4R(4型メラノコルチン受容体)の細胞内局在が加齢によって、どのように変化するのかを調べました。MC4Rは、脂肪が蓄積するにつれて太ってきているという情報を受け取り、代謝を促したり、食べる量を減らしたりする指令を出すタンパク質です。

研究グループは、MC4Rを可視化できる信頼性の高い抗体を作製して調べた結果、MC4Rが視床下部ニューロンの一次繊毛というアンテナ構造に局在し、その一次繊毛が加齢に伴って退縮することを明らかにしました。MC4が局在している一次繊毛の退縮は、栄養が過剰な状態で促進され、ラットが摂取するエサの量を制限すると抑制されました。研究グループはさらに、若いラットのMC4Rが局在する一次繊毛を遺伝子技術を使って強制的に退縮させたところ、エサを摂取する量が増え、さらに代謝量が低下して肥満になったとのことです。

また、肥満患者で起こるレプチン抵抗性を示したこともわかりました。レプチン抵抗性とは、体内の白色脂肪細胞からレプチンが血中に分泌されているにもかかわらず、レプチンの作用が低下している状態のことです。レプチンは抗肥満作用を持っていますが、その効果が得られないため肥満が進行し、様々な生活習慣病につながるリスクが高まります。研究グループは、逆にMC4Rが局在する一次繊毛の退縮を人為的に抑制したところ、今度は体重増加が抑制されたことを確認しています。

研究グループは、今回の結果について「この研究成果は肥満の根本的な原因に迫るものであり、肥満に起因する糖尿病などの様々な生活習慣病の未病段階での予防法や画期的な治療法の開発につながることが期待されます」とコメントしています。

研究内容への受け止めは?

名古屋大学による研究グループが発表した研究内容への受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回の名古屋大学の研究グループの基礎研究では、使用したラットのほとんどがオスであったことなどの研究の限界があることに加え、性差に関しての検討も必要でしょう。ただ、「加齢によって、床下部ニューロンのMC4Rが局在する一次繊毛が退縮し、それにより加齢性肥満が起こる」ということを世界で初めて発見した大変素晴らしい研究です。今後、「ヒトでの一次繊毛の加齢に伴う短縮と加齢肥満」についての研究の発展を期待します。

今後、どのように活かすことが期待される?

今回の研究結果は、中年太りのメカニズムの一端を明らかにしたものです。今後、実際に臨床などで活用していく場合、期待できるポイントを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今後、分子レベルでの機序の解明により、退縮を防ぐ医薬品の開発が期待されます。また、加齢によって失われたMC4R局在の一次繊毛が摂餌制限によって再生したことを、人でも同様に証明できれば、中高年の肥満症治療での「カロリーを抑えた食生活を送る」具体的なプログラムの開発につながることも期待されるでしょう。

まとめ

名古屋大学による研究グループは、加齢によって太りやすくなる「中年太り」の仕組みについて研究し、原因は代謝を促す脳の神経細胞のアンテナが縮むとみられることを明らかにしました。中年太りを気にする人は少なくないので、今後の研究にも注目が集まりそうです。

この記事の監修医師