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がん発症リスク、2年間で10%痩せると2倍に増加「意図せぬ体重減少に注意して」

 公開日:2024/03/12
2年間で10%超体重が減った人は、その後1年間の新規がん発症リスク増加

アメリカのダナ・ファーバー癌研究所らの研究グループは、「体重減少とがん発症との関連を調べた結果、2年間で10%以上体重が減少した人は体重減少がなかった人と比べて、その後1年間の新規がん発症率が有意に高くなった。意図せぬ体重減少は、意図的な減量と比べて約2倍の新規がん発症率だった」と発表しました。この内容について明星医師に伺いました。

明星 智洋

監修医師
明星 智洋(江戸川病院)

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熊本大学医学部卒業。岡山大学病院にて研修後、呉共済病院や虎の門病院、がん研有明病院などで経験を積む。
現在は江戸川病院腫瘍血液内科部長・東京がん免疫治療センター長・プレシジョンメディスンセンター長を兼任。血液疾患全般、がんの化学療法全般の最前線で先進的治療を行っている。朝日放送「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」などテレビ出演や医学監修多数。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医、日本血液学会血液専門医・指導医、日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医、日本内科学会認定内科医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。

ダナ・ファーバー癌研究所が発表した研究内容とは?

アメリカのダナ・ファーバー癌研究所らによる研究グループが発表した研究内容について教えてください。

明星 智洋 医師明星先生

今回紹介する研究は、アメリカのダナ・ファーバー癌研究所らの研究グループによるもので、成果は学術雑誌「JAMA」に掲載されています。

研究グループは、体重減少とがん発症の関連に注目しました。解析対象は、ベースラインでがん既往歴があった者などを除外した15万7474例で、対象者の2年間の体重減少率を算出しました。解析の結果、報告された体重変化後の12カ月間に、体重が10.0%以上減少したグループの10万人・年あたりのがん発症率は1362例でしたが、体重が減少しなかったグループの10万人・年あたりの発症率が869例でした。さらに、意図的な減少が低いグループの10万人・年あたりの発症率は2687例だったのに対し、意図的な減量の可能性が高いグループは10万人・年あたりのがん発症率は1220例となり、意図的な減少の可能性が低いグループの方が、リスクが約2倍という結果が出ました。

がんの種類別で見ると、体重減少がないグループと比べて体重減少があるグループは、上部消化管がんのリスクが特に高くなりました。そのほか、血液がんや大腸がんの発症率も体重減少があるグループで有意に高くなった一方、乳がん、生殖器がん、泌尿器がん、悪性脳腫瘍、黒色腫では有意な差が見られませんでした。

研究グループは、「過去2年以内に体重減少がみられた医療従事者は、最近、体重減少がみられなかった医療従事者と比較して、その後12カ月間にがんに罹患するリスクが有意に高かった。上部消化管のがんは、最近減量した参加者では減量していない参加者と比べて特に多かった」と結論づけています。

今回の研究内容への受け止めは?

アメリカのダナ・ファーバー癌研究所による研究グループが発表した研究内容への受け止めを教えてください。

明星 智洋 医師明星先生

今回の研究は医療従事者を対象としていますが、基本的には全ての人に当てはまる結果でしょう。意図しない体重減少があった場合には上部消化管がん、つまり、食道がんや胃がんのリスクが特に高くなり、大腸がんも多かったとのことですが、これは消化管に悪性腫瘍があり、吸収障害や通過障害が起こるので当然の結果と思われます。

血液がんの発症率も高かったとのことですが、悪性リンパ腫では腫瘍が全身に広がっていることが多く、体重減少を合併することも多いのです。急性白血病も同様に体重減少を合併することが多いので、その結果だと思われます。一方、乳がんに関しては肥満がリスク因子となっていますので、この逆と思われます。加えて、泌尿器がんや皮膚がんなど、食事と直接関係のない臓器にはこの傾向は認めにくいようですが、これも当然の結果と思われます。

今回の研究結果はどのように活かせる?

今回の研究で、体重減少とがんの発症率との関係が示されました。この研究結果は臨床の現場で、どのように活かせる可能性があるのでしょうか?

明星 智洋 医師明星先生

今回の研究を臨床に活かすことはなかなか難しいところではありますが、体重も含めた日々のセルフチェックを定期的にモニタリングして、意図しない変化があった際には、積極的に悪性腫瘍のチェックをおこなっていくことが重要であると思います。その前提として、悪性腫瘍の発症率は年齢とともに高くなっていくので、症状がなくても定期的にがん検診を受けましょう。

まとめ

アメリカのダナ・ファーバー癌研究所らの研究グループは、過去体重減少とがん発症との関連を調べた結果、2年間で10%以上体重が減少した人は、体重減少がなかった人と比べて、その後1年間の新規がん発症率が有意に高くなった。意図せぬ減少は、意図的な減量と比べて約2倍の新規がん発症率だった」と発表しました。がんは日本人の死因第1位でもあり、こうした研究は注目を集めそうです。

この記事の監修医師