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がんの経済的負担、国内で年2兆8600億円 うち1兆円は損失抑えられた可能性

 公開日:2023/08/15
予防可能ながんによる経済的負担 1兆円超

国立がん研究センターらによる研究グループは、「生活習慣の改善などで予防可能ながんの経済的負担が2015年時点で約1兆円に上った」との推計結果を公表しました。このニュースについて郷医師に伺いました。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

研究グループが発表した内容は?

今回、国立がん研究センターらによる研究グループが発表した内容を教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回発表された内容は、国立がん研究センターらの研究グループが実施したものです。発表内容は国際ジャーナル「Global Health & Medicine」に掲載されています。研究グループによると、2015年に受療したがん患者延べ数は、男性が210万7331人、女性が193万8609人の計404万5940人で、上位3部位は、男性が前立腺がん55万1195人、胃がん31万6112人、結腸がん23万125人、女性が乳がん65万9970人、結腸がん19万7745人、胃がん15万4807人でした。

がんにおける直接医療費と死亡や罹患(りかん)による労働損失を推計したところ、約2兆8597億円の総経済的負担となりました。男女の内訳は、男性が約1兆4946億円、女性が約1兆3651億円と、性別によって大きな差がなかったとのことです。労働損失が最も大きかったがんは、男性が肺がんで約921億円、女性が乳がんで約2326億円でした。

生活習慣や環境要因に起因するがんの経済的負担は、男性で約6738億円、女性で約3502億円、計約1兆240億円でした。そのうち男女ともに胃がんの経済的負担が最も高く、次いで男性は肺がん、女性は子宮頸がんの順に高くなりました。能動喫煙、飲酒、感染、過体重、運動不足の5つの予防可能なリスク要因別では、感染による経済的負担が最も高く約4788億円でした。がん種別にみると、ピロリ菌による胃がんが約2110億円、HPVによる子宮頸がんが約640億円と推計されました。

研究実施の背景は?

国立がん研究センターらによる研究グループが今回の研究を実施した背景を教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回の研究は、がんによる経済的負担と、生活習慣や環境要因などの予防可能なリスク要因によるがんの経済的負担を推計し、がん予防の経済効果を明らかにしています。研究グループは、がんは日本人における死因の第1位であるにも関わらず、社会に与える経済的負担を推計した研究は現在までほとんどおこなわれていないと指摘しています。そして、「がんは直接的な医療費に加えて、治療中の一時的な就業中断による労働力からの離脱によって、社会にも重大な経済的負担を引き起こします」と問題提起しています。

研究グループは「がんの原因を予防することで、がん関連の直接医療費や労働損失を回避することが可能になる」との考えを示しています。

今回の発表内容への受け止めは?

国立がん研究センターらによる研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

がん治療は個人の負担も大きいですが、健康保険をはじめとした公的負担も非常に大きくなります。そのため、予防をすることが重要であることは再三にわたり提唱されてきましたが、今回初めて具体的に損失額が計算されました。国にとっての負担が大きいのはもちろんですが、本人にとっても、早期に治療できることで低侵襲、低予算で治療ができる可能性があります。なるべく検診を受けることで早期に発見し治療できるように心がけたいものです。

まとめ

国立がん研究センターらによる研究グループが、「生活習慣の改善などで予防可能ながんの経済的負担が2015年時点で、約1兆円に上った」との推計結果を公表したことが今回のニュースでわかりました。予防可能なリスク要因に適切に対応することは、命を救うだけでなく、経済的負担の軽減にもつながることが期待されるだけに、今回の発表は注目を集めそうです。

この記事の監修医師