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「大腸がん」死亡率、早期の便潜血検査で14%低下「積極的に大腸がん検診を受けて」

 公開日:2024/04/02

スウェーデンのストックホルム南総合病院の研究グループらが、「便潜血検査による大腸がん検診プログラムと大腸がんによる死亡率の関連を検討した結果、プログラム開始後5年間に初回の検診案内を早期送付した介入群では、対照群と比べて大腸がんによる死亡率が14%低下した」と発表しました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

ストックホルム南総合病院らの研究グループが発表した研究内容とは?

スウェーデンのストックホルム南総合病院らの研究グループが発表した研究内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回紹介する研究はスウェーデンのストックホルム南総合病院らの研究グループが実施したもので、研究成果は「JAMA Network Open」に掲載されています。

研究グループは、便潜血検査による大腸がん検診プログラムと大腸がんによる死亡率の関連を検討しました。その対象となったのは1938~1954年に生まれて、2008~2012年にスウェーデンに在住していた37万9448例です。初回の大腸がん検診の案内を検診プログラム開始後5年間、つまり2008~2012年に送付した介入群20万3670例と、それ以降の2013~2015年に大腸がん検診の案内を送付するか、全く送付しない対照群17万5778例をランダムに振り分けました。検診案内の送付は2年に1回10年間おこなうこととし、両群を他国への移住、死亡、2021年12月31日のいずれか早い時点まで追跡しています。

研究の結果、大腸がんが原因で死亡した数は介入群が219万589人(年の追跡で834例)でしたが、対照群では224万9939人(年の追跡で889例)でした。追跡年数および到達年齢を調整した後の解析では、対照群と比べて介入群は大腸がんによる死亡率が14%有意に低下したことがわかりました。大腸がんによる超過死亡者数は介入群で890.8例、対照群では975.4例と算出され、対照群と比べて介入群は大腸がんによる超過死亡リスクが16%低下していました。

大腸がんとは?

今回の研究テーマになった大腸がんについて教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

大腸がんは、直腸と結腸からなる大腸に発生するがんで、良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものに分類されます。日本人はS状結腸と直腸にがんができやすいと言われています。大腸の粘膜に発生した大腸がんは大腸の壁に深く侵入し、やがて大腸の壁の外まで広がり腹腔(ふくくう)内に散らばります。さらに、リンパ節転移をしたり、血液の流れに乗って肝臓、肺など別の臓器に遠隔転移したりします。

大腸がんの症状について、早期では自覚症状がほとんどありません。代表的な症状として、血便下血がみられます。また、進行してくると腸閉塞となり、便は出なくなり腹痛や嘔吐(おうと)などの症状が起こります。⼤腸がんは男性では11⼈に1⼈、⼥性では13⼈に1⼈が⼀⽣のうちに⼀度はかかると言われています。

研究グループが発表した内容への受け止めは?

研究グループの発表への受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回の研究結果は、便潜血検査という便を採取するだけでできる簡便な方法を用いた「積極的な早期案内による介入」により、大腸がんの死亡率が低下する可能性を示唆した点で重要な意味を持つものと考えられます。ただし、今後この結果を生かすためには、検診の受診率を高めることが重要です。大腸がん検診の場合、症状がないなどの理由で面倒になって検診を受けない人が後を絶ちません。また、検査結果が陽性であれば速やかに大腸内視鏡検査を受けることが必要になるのですが、「痛そうで怖い」「恥ずかしい」などの理由で大腸内視鏡検査を避けている人も多くみかけます。最近では、大腸CT検査や大腸カプセル内視鏡検査などの大腸内視鏡検査に代わる非侵襲的な検査方法も登場しているので、ぜひ積極的に大腸がん検診を受けてみてください。

まとめ

スウェーデンのストックホルム南総合病院の研究グループらが、便潜血検査による大腸がん検診プログラムと大腸がんによる死亡率の関連を検討した結果、プログラム開始後5年間に初回の検診案内を早期送付した介入群では、対照群と比べて大腸がんによる死亡率が14%低下したと発表しました。大腸がんは日本でも多くの罹患者がいるので、こうした研究は注目を集めそうです。

この記事の監修医師