FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. NEWS
  3. 国内の脳死による臓器提供が26年で1000件、日本が抱えるドナー問題の解決策とは

国内の脳死による臓器提供が26年で1000件、日本が抱えるドナー問題の解決策とは

 公開日:2023/11/07
臓器移植法施行から26年 脳死臓器提供1000人に

日本臓器移植ネットワークは、臓器移植法に基づいておこなわれた脳死判定が1000件になったと発表しました。この内容について白水医師に伺いました。

白水 寛理

監修医師
白水 寛理(医師)

プロフィールをもっと見る
長崎大学医学部卒業。現在は九州大学大学院医学研究院脳神経外科所属。専門は脳神経外科。日本脳神経外科学会専門医・指導医。

発表された内容とは?

日本臓器移植ネットワークが発表した内容について教えてください。

白水 寛理 医師白水先生

2023年10月28日、日本臓器移植ネットワークは「臓器移植法に基づいておこなわれた脳死判定が1000件になった」と発表しました。日本臓器移植ネットワークによると、2023年10月26日に中国四国地方の病院に入院していた60代の男性が1000件目になったとのことです。男性は家族の承諾のもと脳死判定がおこなわれ、脳死と判定されました。脳死判定から2日後、臓器が摘出され、心臓は60歳代男性、肺は40歳代男性、肝臓は30歳代男性、腎臓は50歳代女性と40歳代の別の男性に、それぞれ移植される予定とも明らかにされました。

日本臓器移植ネットワークによると、これまでに脳死からの臓器提供により移植を受けた患者数はおよそ4300人とのことです。その一方、臓器移植を待つ人はおよそ1万6000人に上るのに対し、実際に提供を受けられた患者は年間約400人にとどまるという現状があります。

臓器移植法の施行後の動きとは?

臓器移植法の施行後におこなわれた臓器提供についての動きについて教えてください。

白水 寛理 医師白水先生

臓器移植法は1997年10月16日に施行され、脳死となった人からの心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸、眼球の提供が認められました。脳死とは、脳全体の働きがなくなり、治療で回復する可能性がなく、いずれ心停止に至る状態です。臓器移植法が施行されて以来、日本臓器移植ネットワークは脳死の判定がおこなわれたケースを臓器提供件数として集計しています。

臓器移植法が施行されてから最初の臓器提供は1999年2月、高知赤十字病院で実施されています。当時、臓器を提供するためには意思表示カードなど書面による本人の意思表示と、家族による承諾が必要だったため、年間の提供数は10件に満たないことが続いていました。その後、2010年に法改正がおこなわれ、家族の承諾だけで臓器が提供できるようになったほか、15歳未満の子どもからの提供も認められました。こうした条件緩和の動きもあって提供件数は増加し、2019年には98件にまで増えました。その後、コロナ禍の影響もあり、2020年、2021年は減少しましたが、2023年はすでに100件を超える臓器提供がおこなわれています。

今回の発表で累計提供件数が1000件になったと明らかになりましたが、このうち9件は臓器の状態などに問題があり、移植に至っていません。少しずつ臓器提供の数が増えているとはいえ、日本のドナーの少なさは世界的にも際立っており、人口100万人あたりのドナー数はアメリカやスペインが40人を超すのに対し、日本は1人に満たないというのが現実です。内閣府が2021年におこなった移植医療に関する世論調査では、65.5%が「臓器提供に関心がある」と回答しつつも、すでに意思表示している人は10.2%にとどまっています。

今回の発表内容への受け止めは?

今回、日本臓器移植ネットワークが発表した内容についての受け止めを教えてください。また、臓器移植のドナーが海外と比べて少ないことを解決するために必要なことはなんでしょうか?

白水 寛理 医師白水先生

日本の臓器移植は、海外と比べると大きく出遅れています。日本の提供者が少ない原因に、脳死が臓器を提供する場合に限って人の死とされていることが挙げられます。臓器移植には多くの人の協力体制の構築が必要となります。しかし、臓器移植に関しての体制を整えていない病院が多数みられるのが現状です。実際、患者側もしくは家族から臓器提供の意思があった際、どこに連絡するのか知らない医師は多いのではないでしょうか。そのため、まずは医療側からもっと周知していくことが必要であると考えられます。医療側に広く周知されることで、患者・家族側への説明も詳しくなり、より身近に感じていただくことができるでしょう。

まとめ

日本臓器移植ネットワークは「臓器移植法に基づいておこなわれた脳死判定が1000件になった」と発表しました。海外と比べて大きく出遅れている臓器提供のドナー問題をどのように解決していくのか、今後の大きな課題となりそうです。

この記事の監修医師