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「日本脳炎」国内で今年初めての患者確認。蚊に刺されないよう注意、ワクチン接種も検討して

 公開日:2023/09/29
日本脳炎患者 国内で今年初確認

熊本県は2023年9月22日、「玉名郡に住む70歳代男性が日本脳炎を発症した」と発表しました。これは今年に入って国内初の感染例で、熊本県内では2年連続で確認されています。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

熊本県が発表した内容とは?

熊本県が発表した内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

熊本県は、「玉名郡に住む70代の男性が日本脳炎に感染していることが確認された」と発表しました。熊本県によると、玉名郡に住む70代の男性が2023年9月4日に発熱などを訴えて入院、意識がない状態が続いていました。そこで病院が詳しく調べたところ、同月21日に日本脳炎と診断されたということです。国内で日本脳炎の患者が確認されたのは、今年初となります。また、熊本県内では2022年に3人の日本脳炎患者が確認され、このうち70代の女性は死亡しています。熊本県によると、日本脳炎は感染したブタなどから蚊が媒介して広がり、高熱やけいれんなどの症状が出るほか、子どもやお年寄りが感染した場合には死亡するケースもあるものの、人から人へ感染することはないということです。熊本県は感染を防ぐため、外出時はできるだけ肌の露出を避け、十分な睡眠や栄養をとって体力を保つとともに、ワクチンを接種するよう呼びかけています。

日本脳炎とは?

今回感染が確認された日本脳炎について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

日本脳炎は、世界では年間3~4万人が感染している病気ですが、日本と韓国はワクチンの定期接種によりすでに流行が阻止されています。日本では、1996年の2017人をピークに減少し、1992年以降の感染者数は毎年10人以下、そのほとんどが高齢者になっています。また、厚生労働省では毎年夏に日本脳炎ウイルスの蔓延状況を調べており、毎年日本脳炎ウイルスを持った蚊は発生していて国内でも感染の機会はなくなっていないということです。日本脳炎ウイルスに感染しても日本脳炎を発症するのは 100〜1000人に1人程度で、大多数は無症状に終わります。ただし、発症した場合死亡率は20~30%で、幼少児や老人では死亡の危険は大きくなります。神経学的・精神医学的な後遺症は生存者の30%で認められ、特に小児では重度の障害(パーキンソン病様症状や痙攣、麻痺、精神発達遅滞、精神障害など)を残す可能性があります。

発表内容への受け止めと感染予防の注意点は?

熊本県は今回、70歳代男性が日本脳炎を発症したと発表しましたが、発表への受け止めと日本脳炎の感染予防における注意点を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

国内の日本脳炎患者発生数は著しく減少しましたが、現在でも西日本を中心に広範囲でウイルスを保有する抗体陽性のブタが確認されています。つまり、西日本を中心に日本脳炎ウイルスに感染しているブタが多く存在することにより、今回のような熊本県での発症に至ったと考えられます。予防策としては、基本的な感染対策に加えて日本脳炎のワクチンの接種があげられます。特に西日本(特に四国、中国、九州地方)にお住まいの方はワクチン接種を推奨しますが、副反応もありますので主治医の先生と相談のうえ検討下さい。

まとめ

熊本県は2023年9月22日、玉名郡の70歳代男性が日本脳炎を発症したと発表しました。日本脳炎は症状が現れた時点ですでにウイルスが脳内に達し、脳細胞を破壊しています。感染予防のためには、蚊にさされないよう肌の露出を避け、基本的な感染対策を行うことに加えてワクチンで予防することが重要ですので、未接種の方はぜひワクチン接種を検討してみてください。

この記事の監修医師