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「日本脳炎」を発症すると現れる初期症状はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「日本脳炎」を発症すると現れる初期症状はご存知ですか?医師が監修!

日本脳炎は日本を含む東アジア・東南アジア・南アジア・西太平洋地域にみられる感染症です。日本では患者数が激減していますが、世界的には2年から15年の間隔で流行しています。

ここでは発症すると脳に大きなダメージを受ける可能性がある日本脳炎の特徴・症状・診断方法・予防法などを紹介しましょう。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

日本脳炎の特徴と症状

体温を計る子ども

日本脳炎はどのような病気ですか?

日本脳炎ウイルスに感染して発症すると脳が破壊され、神経系にさまざまな障害が出てきます。ただウイルスに感染しても軽症もしくは発症しない場合が多く、発症するのは100人から1000人に1人くらいです。
日本脳炎は発症するまでの潜伏期間が6日から16日、発症すると発熱などの症状がみられるでしょう。また、世界的には子どもの発症が多くみられており、子どもの死亡率が高くなっています。
日本脳炎ワクチンの接種により患者数は減少していますが、発症した後に完治する割合は3分の1程度と30年前とほとんど変わらず油断できない感染症であることは確かでしょう。

日本脳炎は過去の病気ではないのですか?

日本で日本脳炎を発症する人はワクチン接種が行われているため激減しています。ただ患者数は減少していますが、毎年夏に実施されている日本脳炎ウイルスを保有している豚の数の調査では地域によって保有率が80パーセントを超えています。
日本脳炎に罹患するリスクが低くなっている状況ではないため、日本脳炎は過去の病気ではないのです。

感染経路を教えてください。

日本脳炎ウイルスは人から人に感染することはないので日本脳炎の患者を隔離する必要はありません。
日本脳炎は日本脳炎ウイルスに感染した豚や牛・鳥類などの血液を吸った蚊(おもにコガタアカイエカ)に人が刺されることで感染します。とくに豚は日本脳炎ウイルスの保有量が多く媒介となるコガタアカイエカが好む動物です。日本脳炎ウイルスへの感染を防ぐためにも蚊に刺されないようにすることが大切です。

日本脳炎ではどんな症状が出ますか?

日本脳炎ウイルスを保有した蚊に刺されると必ず発症するわけではありません。ただ発症した場合、数日間38度から40度以上の高い熱が出る・頭痛・嘔吐の前のむかつき(悪心)・吐き気・めまいなどの症状がみられます。
その後急速に病状が進行し、首がこわばる・光に過敏になる・さまざまな意識障害などがみられるようになるでしょう。
脳が大きなダメージを受けてしまうためとくに上半身のマヒなど中枢神経の障害が見られるようになります。子どもの場合は、痙攣(けいれん)を起こすこともあります。

初期症状はありますか?

初期症状としては38度から40度以上の高熱・頭痛・めまい・嘔吐・悪心などがみられるでしょう。子どもでは腹痛や下痢などの胃腸障害をともなうことがあります。

日本脳炎の診断方法と治療方法

注射

日本脳炎が疑われる場合、何科を受診すれば良いのでしょうか?

日本脳炎かもしれないと感じても何科を受診したらいいのか迷ってしまいます。発熱や頭痛などの症状だけであれば一般的には内科を受診します。このとき日本脳炎の可能性があることを医師に伝えることが大切でしょう。
医師の臨床診断で日本脳炎が疑われる場合は神経内科もしくは感染症科がある施設を受診します。子どもの場合は、小児科を受診しましょう。

日本脳炎が疑われる場合の検査方法を教えてください。

日本脳炎ウイルスを血液や髄液から検出することはとても難しいため、髄液の中にあるIgM抗体を検出する方法が行われています。また、冷蔵保存された血清から赤血球凝集抑制(HI)抗体の抗体価を調べ、急性期と回復期の抗体価を確認するという検査方法があります。
日本脳炎の診断を行うための検査は国立感染症研究所と一部の地方衛生研究所などや一部の民間企業で実施してもらう必要があるでしょう。

どのように診断確定を行いますか?

髄液から直接的にウイルスを検出することは発症初期でなければ難しいのですが、髄液の中のIgM抗体検出は脳の中枢神経の中でウイルスが増殖していることを示唆しています。そのため髄液からIgM抗体が検出されるかを確認する検査を行います。
また、血清中の赤血球凝集抑制(HI)抗体の急性期と回復期のペア血清の抗体価の検査結果が4倍以上であれば、日本脳炎に感染している確率がかなり高いでしょう。ただ専門機関へ検体を送って検査するため検査結果がわかるまでには数日かかることもあります。そのため、急激に症状が悪化する場合などは臨床診断に頼っています。

治療方法を教えてください。

日本脳炎を治療するための特効薬は開発されていません。発症した症状に合わせてさまざまな薬を使用することで症状を抑制する対症療法がおもな治療方法といえるでしょう。とくに高い熱と痙攣のコントロールが重要です。
また脳浮腫がみられるときはステロイドなどを使用します。

日本脳炎の予後と予防方法

腕に注射を打つ様子

日本脳炎は後遺症が残る病気ですか?

日本脳炎は脳に大きなダメージを受ける感染症です。脳はとても繊細な臓器であるため一度壊れてしまった脳を元に戻すことは大変難しいでしょう。そのため今後日本脳炎に効果のある薬が開発されたとしても日本脳炎を発症した場合は、何らかの後遺症が残る可能性がとても高いといえます。
対症療法が進歩し日本脳炎の死亡者数は減少していますが、日本脳炎を発症した人の30%から50%は脳に何らかの後遺症が残るでしょう。

日本脳炎の死亡率を教えてください。

日本脳炎を発症した場合の致死率は、約30%です。日本脳炎はウイルスに感染しても必ず発症するわけではありません。
ただ、発症した場合はとても死亡率が高く、重い後遺症が残る感染症といえるでしょう。とくに幼い子どもや高齢者の死亡率が高くなる傾向にあります。

予防方法が知りたいです。

日本脳炎は、効果の高い予防接種が開発されています。日本では乳幼児期から定期的に不活性化ワクチンを接種することが義務づけられています。
ワクチンを接種した場合の日本脳炎の予防率は75%から95%ととても高い効果を期待することができるでしょう。
ワクチン接種の第1期は3歳で2回の接種を行います。満3歳で1回目を接種し、1回目の接種から6日から28日後に2回目の接種を受けます。2回目の接種から1年後に3回目のワクチン接種を受けましょう。2期は9歳で1回接種します。日本脳炎ワクチンの接種に関してお住いの自治体からお知らせが届くため指示に従ってください。
また、日本脳炎は蚊が媒介する感染症です。蚊は日本脳炎だけではなくテング熱などさまざまな感染症を媒介するため、蚊に刺されないように肌が露出しているときは虫よけスプレーなどを活用するといいでしょう。とくに夏は、蚊の活動が活発な季節です。
夏の休暇中にキャンプや釣りなどの野外での活動をするときや蚊が活発に活動する夜間には、できるだけ長袖・長ズボンを着用し蚊に刺されないような対策をすることが大切です。

日本脳炎はワクチン接種による予防が大切です。

日本脳炎は発症すると治療することが難しい感染症ですが、日本脳炎のワクチンを接種することで高い確率で予防することができる感染症でもあります。
日本では日本脳炎ワクチンの接種が義務付けられており、お住いの自治体から出生後に予防接種のスケジュールに関するお知らせが届くようになっています。日本脳炎のワクチンを忘れずに接種することは、日本脳炎にかからないための最大の予防策といえるでしょう。

編集部まとめ

薬と注射
日本脳炎は予防接種の普及により日本国内では患者数が減少している感染症です。ただ日本脳炎ウイルスを保有している豚が多くおり、感染する可能性があることも事実です。

日本脳炎は昔の感染症ではなく、いつだれがかかってもおかしくない身近な感染症であるということを覚えておくことが大切といえるでしょう。

日本脳炎の特効薬は開発されていませんが、ワクチンを接種することで日本脳炎ウイルスに感染することを防ぐことができる感染症でもあります。

忘れずにワクチン接種をし、感染媒体である蚊に刺されないように注意しましょう。

この記事の監修医師